3.同時に定時上がり
ピピピピ、ピピピピ
午後6時。
なるほど、定時は6時なのですね。
「うぁあああああ!終わりましたっ!」
「あほ、終わってへんやろ。」
ふっ。普段なら、あと7時間は確実に働くであろう、午後6時。
しかし、今日は事情が違うのです。
噂では1秒間に8文字打てるという恐怖のタイピングを繰り広げている悠貴部長が、6時のアラームと同時に動きを止めました。
ペットボトルのコーヒーは既に空です。
「悪い、所用で俺は定時上がりだ。仕事が残ったら俺が後でやっとくから、ほどほどで切り上げて帰れよ。今日は全員家に帰れ。いいな?1時までに会社を出ろよ。」
みんなの書類をめくる手、タイピングをする手、電話を取る手、書き込む手が一気に加速します。
さすが、わが社の隠れたアイドル・・・ていうか愛されキャラです。
すでに5徹を終えている悠貴部長に、仕事をさせるわけにはいきません。
っていうか、私と話した後に会社に戻ってくるつもりでしょうか。
いつ家に帰っているんです?
そういえば、私、妻になれと言われましたね。
( ,,`・ω・´)ンンン?
会社で生活しろと?
「私も、今日はここで失礼します。」
定時上がりが珍しいこの会社。
悠貴部長に関しては、何年振りか・・・という噂も流れているほどです。
それが、二人同時に定時上がり・・・怪しまれるに決まっています。
シャットダウンしたパソコンを閉じつつ、なるべく誰とも視線を合わせないようにしました。
すると、案の定です。
「なになに~?そこのお二人、どういう関係?同時に定時上がりなんて!」
部長は一蹴。
「五月蠅い、仕事に集中しろ。」
「はぁ~い。」
金髪の先輩が、くるんと椅子の向きを変えて書類と向き合いました。
う~ん、さすが寝た人。余裕がすごいです。
私は先ほどお手洗いに行ったとき、自分の顔がお化けかと思って叫びましたもん。
部長も隈がレッドゾーンに達しています。
あぁ・・・みなさん、頑張ってください!部長を休ませて!
「なにぼーっとしている、早希。いくぞ。」
「ひゃいっ!」
あ。
ほかの社員からの視線が、私の身体を裂いています。
痛い・・・・・・
と。
「五月蠅い。」
「しゃべってませんが!?」
「顔と動きが五月蠅い。」
「すみません・・・。」
こんな部長と2人で話し合い・・・逃げ出したい・・・




