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やり過ぎた!  作者: 涙目
第六章 家族の絆編

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第二話 何事もやってみれば、それ特有の面白さがある

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 交流会の当日、私は鏡の前で深いため息をついていた。


 今日のためにサリナが用意してくれたドレスは、王女としての品位を保ちながらも華美になりすぎない、落ち着いた色合いのものだった。髪も丁寧に整えられ、鏡に映る姿だけを見れば、これからの交流会を楽しみにしている王女に見えるかもしれない。


 もっとも、本人の気持ちはまったく別なのだけれど。


「……サリナ、やっぱり体調が悪いことにできないかしら?」


「お顔色はよろしいようですが、どこか具合でも悪いのですか?」


「気分が悪いのよ。これから仕事が増えそうだと思うと、どうにも落ち着かなくて」


「それでしたら、いつものことでございますね」


「……少しくらい心配してくれてもいいのではなくて?」


 鏡越しに抗議してみたものの、サリナは楽しそうに微笑むばかりだった。


 今日から始まる交流会は、王位継承権者と次世代を担う若手貴族たちの親睦を目的としている。月に四回、原則として週に一度開催される予定だが、招待された貴族たちに毎回の出席義務はない。それぞれ領地の仕事や家業を抱えているのだから、月に一度程度、都合のよい日に顔を出してもらえれば十分という方針だった。


 その仕組み自体は合理的だと思うし、私も賛成している。


 ただし、王位継承権者である私たちは、原則として毎回参加することになっていた。


 若手貴族たちは自由参加なのに、なぜ私には自由がないのだろう。そう考えると少々納得がいかないけれど、主催する側の人間が顔を出さないわけにもいかないというお父様の言い分も理解できてしまう。


「ところで、今日の参加者は何名くらいなのかしら?」


「現時点では三十名ほどと伺っております。直前に都合がつかなくなる方もいらっしゃるでしょうから、多少前後するかと」


「三十名……。全員とお話しする必要はないわよね?」


「自由な交流の場でございますので、必ずしも全員とお話しする必要はないかと存じます」


「それならよかったわ」


 ほっと胸を撫で下ろすと、サリナが何かを思い出したように口を開いた。


「もっとも、陛下はリリアーナ様が多くの方と親しくなられることを期待していらっしゃるでしょうけれど」


「……それは聞かなかったことにするわ」


 お父様の狙いについては、先日の話し合いで十分に理解している。


 次世代貴族との交流という目的に嘘はないのだろうけれど、その裏には私の婚約者を見つけたいという思惑があるのだ。


 しかし、私にはまだ結婚するつもりなどない。


 結婚すれば相手の家との付き合いが生まれるし、親戚も増える。社交の機会が増えるだけならまだしも、相手の家が抱える問題について相談を持ちかけられることだってあるだろう。


 せっかく自分の仕事を減らすために努力してきたというのに、結婚によって新たな仕事を抱え込むことになっては本末転倒である。


「結婚なんて、もう少し先でもよろしいと思うのだけれど」


「リリアーナ様も二十二歳になられましたから、陛下が気にかけられるのも無理はないかと」


「十年後くらいでも遅くはないでしょう?」


「その頃には三十二歳でございますね」


「……そうね」


 前世であれば珍しくもなかったけれど、この世界の貴族社会では少々事情が異なるのだろう。


 だからといって、急いで婚約者を探す理由にはならないと思う。


「リリアーナ様、準備が整いました」


「ありがとう、サリナ。それじゃあ、行ってくるわ」


「はい。どうか楽しんでいらしてくださいませ」


 楽しめるかどうかは、参加者次第かしら。


 そんなことを考えながら、私は交流会の会場へ向かった。


     ◇


 王宮の広間には、すでに多くの若手貴族たちが集まっていた。


 壁際には軽食や飲み物が用意され、中央には自由に会話を楽しめるよう十分な空間が確保されている。立食形式ではあるものの、長時間立ち続けることが負担になる人のために、いくつかのテーブルと椅子も配置されていた。


 公式の晩餐会とは異なり、参加者が好きな相手と話せるように配慮されているらしい。


 これなら、思っていたよりも気楽に過ごせそうだ。


「リリアーナ」


 広間を見渡していると、レオナルドお兄様が声をかけてくださった。


「お兄様、ごきげんよう」


「うん、ごきげんよう。今日は楽しめそうかな?」


「まだ始まったばかりですので何とも申し上げられませんが、思っていたほど堅苦しい雰囲気ではありませんね」


「そうだね。今日は普段の公式行事とは違う顔ぶれが多いから、僕も楽しみにしていたんだ」


 お兄様のお話によれば、通常の公式行事では当主や家の代表者が中心となるため、その子供たちとゆっくり話す機会は意外と少ないらしい。


 確かに、私が仕事で接する貴族たちも、領主やその代理人が中心だった。次世代を担う若者たちが、どのような考えを持ち、何に興味を抱いているのかを直接聞く機会は、それほど多くなかったように思う。


「そう考えると、貴重な機会かもしれませんね」


「そうだね。リリアーナも、いろいろな人と話してみるといいよ。仕事の話だけじゃなくて、趣味や好きなものについて聞いてみるのも面白いと思うよ」


「……善処いたします」


「ふふ、そんなに構えなくても大丈夫だよ」


 お兄様は穏やかに微笑むと、挨拶に訪れた若い貴族たちを迎えた。


 その様子を見ていると、さすが王位継承権第一位だと感心する。初めて会う相手にも自然に話題を振り、緊張している者には気軽に声をかけている。


 私も見習うべきなのだろうけれど、あれほど多くの人を相手にするのは、正直なところ少々疲れそうだ。


 さて、私はどなたとお話ししようかしら。


 そう考えたところで、今度はエレオノーラお姉様に呼び止められた。


「リリアーナ、ちょうどよかったですわ。ご紹介したい方々がいらっしゃいますの」


「お姉様、ごきげんよう。どなたでしょうか?」


「私と以前から交流のあるご令嬢方ですわ。あなたとはまだお話しされたことがなかったでしょう?」


 お姉様に紹介された二人の令嬢は、どちらも落ち着いた物腰で、丁寧に挨拶をしてくださった。


 私も礼を返し、最初は最近の王都の様子や社交界で流行しているものについて話を聞くことにした。


 普段は仕事の関係者と話すことが多いため、こうした何気ない話題は少し新鮮に感じられる。


「そういえば、最近、王都の東側に新しい菓子店ができたのをご存じですか?」


 令嬢の一人がそう尋ねた。


「いいえ、存じませんわ。どのようなお店なのですか?」


「焼き菓子が評判のお店でして、特に果実を使ったものが美味しいのです」


「まあ、それは素敵ですわね」


 思わず身を乗り出しそうになった。


 最近は各地方の道路整備が進み、以前よりも多くの品物が王都へ運ばれるようになっている。果実を使った菓子が増えているのも、そうした変化の一つなのかもしれない。


「ちなみに、どちらの地方の果実を使っていらっしゃるのでしょう?」


「そこまでは存じませんけれど、季節によって使う果実を変えているそうですわ」


「そうなのですね。でしたら、時期を変えて訪れるのも楽しそうです」


 果実の産地がわかれば、輸送にかかる日数や保存方法についても考えられるのだけれど、さすがに初対面の令嬢にそこまで尋ねるのは場違いだろう。


 私は頭に浮かんだ疑問をいったん脇に置き、店で評判になっている菓子や、最近の王都で人気の店について話を続けた。


 こうして気軽に会話を楽しむのも、悪くないものだ。


 しばらくすると、エレオノーラお姉様は別の令嬢に呼ばれ、私も二人に礼を告げてその場を離れた。


     ◇


 広間の反対側では、ユリウスお兄様が数人の若い貴族たちと話していた。


 どうやら軍務や領地の警備について意見を交わしているらしく、近づくにつれて聞こえてくる内容も、先ほどの令嬢たちとの会話とは随分異なっていた。


「だからこそ、平時からの訓練が重要なのだ。問題が起きてから指揮系統を決めていては、対応が遅れる」


「おっしゃる通りです、殿下。我が領でも警備隊の配置を見直しているところでして……」


 皆様、真面目にお仕事の話をされているようだ。


 私は邪魔にならないよう軽く会釈をして通り過ぎようとしたのだけれど、残念ながらユリウスお兄様に見つかってしまった。


「リリアーナ、ちょうどよい。お前にも聞きたいことがある」


「……何でしょうか、お兄様?」


「以前、ピーク島で嵐に遭った際、避難所の運営を行ったと聞いている。住民への情報伝達はどのように行った?」


 なるほど、非常時の対応についてのお話らしい。


 私は当時の状況を思い出しながら、避難所ごとに責任者を決め、情報を集約していたことを説明した。


 大勢の人々に個別に指示を出していては、同じ説明を何度も繰り返すことになるうえ、伝え漏れも起きやすい。そのため、責任者を通して情報を共有し、確認できていない噂については不用意に広めないようにしていたのだ。


「なるほど。情報の伝達経路を統一したわけか」


「はい。もちろん、すべてが上手くいったわけではございませんが、少なくとも誰に確認すればよいのかわからない、という状況は減らせたと思います」


 私の説明を聞いていた若い貴族の一人が、興味深そうに頷いた。


「確かに、それなら混乱を抑えられそうですね。我が領でも、大雨の際に住民への連絡が遅れたことがありまして……」


 その方は、以前の災害でどのような問題が起きたのかを話してくださった。


 私は現地の事情を知らないため、具体的な解決策を提示することはできなかったけれど、情報を集める役割と伝える役割を分けて考えてみてはどうかと伝えた。


 すると、ユリウスお兄様が満足そうに頷いた。


「実際に経験した者の話は参考になる。お前たちも、自領の状況に合わせて考えてみるといい」


 ……あれ?


 私は交流会に参加していたはずなのに、いつの間にか仕事の相談を受けている。


 もっとも、これくらいの意見交換であれば、それほど負担にはならない。


 相手が自分で考えて行動してくださるのなら、私が何かを引き受ける必要もないのだから。


 しばらくして話が一区切りついたところで、私は礼を告げてその場を離れた。


 その途中、今度はヴィクトリアお姉様が若手貴族たちと話している姿が目に入った。


「慣例として続いてきたからといって、その方法が現在も適切とは限りません。何のために定められたものなのかを確認する必要があります」


 ……こちらもお仕事のお話のようだ。


 お姉様は相変わらず法律や制度について真剣に考えていらっしゃる。


 せっかくの交流会なのだから、もう少し気楽なお話をされてもよいのではないかと思ったけれど、考えてみれば、先ほどまでの私も似たようなことをしていた。


 ……人のことは言えないわね。


 そう思いながら、私は軽食が並べられている一角へ向かった。


     ◇


 壁際のテーブルには、小さな焼き菓子や果実、軽くつまめる料理が用意されていた。


 私はその中から焼き菓子を一つ取り、口に運んだ。


 ほどよい甘さと香ばしい風味が広がり、思わず頬が緩む。


 こういう時間があるのなら、交流会も悪くない。


「お気に召しましたか?」


 不意に声をかけられ、私は振り向いた。


 そこには、身なりの整った若い男性が立っていた。私が視線を向けると、男性は丁寧に一礼する。


「初めまして、リリアーナ殿下。エドガー・ラングレーと申します」


「初めまして、ラングレー様。リリアーナ・プレイングです」


「以前からお名前は存じ上げておりましたが、こうしてお話しするのは初めてですね」


「そうですわね。本日はお越しいただき、ありがとうございます」


 ラングレーという家名には聞き覚えがあったものの、どこで耳にしたのかまでは思い出せなかった。


 仕事で関わった貴族家の名前はある程度覚えているつもりだけれど、王国には多くの貴族がいるのだから、すべてを把握しているわけではない。


「殿下は、各地方の発展に大きく貢献されていると伺っております」


「いえ、私一人で成し遂げたことではございません。多くの方々のお力添えがあってこそですわ」


「ご謙遜を。父からも、殿下のお取り組みについて話を聞くことがございます」


「まあ、そうなのですね」


 どのような話をされているのか少々気になるけれど、あまり詳しく尋ねるのも自分の評判を気にしているようで落ち着かない。


 それよりも、せっかくの機会なのだから、相手について知る方がよいだろう。


「ラングレー様は、普段どのようなことをなさっているのですか?」


「現在は父の仕事を手伝いながら、領地の経営について学んでおります。まだまだ未熟ではございますが、いずれは家を支えられるようになりたいと考えております」


「それは立派なお考えですわ。最初から何でもできる方などいらっしゃいませんもの。少しずつ経験を積んでいくことが大切なのだと思います」


「ありがとうございます。殿下にそう仰っていただけると、少し自信が持てます」


 エドガー様は穏やかな笑みを浮かべ、領地で最近取り組んでいることについて話してくださった。


 農作物の収穫量や王都との取引について、父親から少しずつ仕事を任されるようになったらしい。


 私は話を聞きながら、どの地方でも似たような悩みを抱えているものなのだと感じていた。


 農作物が豊作でも、運び出す手段がなければ十分な利益にはならない。反対に、取引先が増えたとしても、安定して供給できなければ信用を失ってしまう。


 もっとも、詳しい事情を知らない以上、軽々しく助言するわけにもいかない。


 そのため、私は相手の話を聞くことを中心に、ときおり自分が経験したことを伝える程度に留めた。


「殿下は、ずいぶんと人に任せることを大切にしていらっしゃるのですね」


 話の途中で、エドガー様がそう仰った。


「そうですわね。何でも自分でやろうとすれば、いずれ手が回らなくなってしまいますもの。それぞれ得意なことが違うのですから、適任の方にお任せした方がよい結果になることも多いと思います」


「なるほど。私も、つい自分で抱え込んでしまうことがございますので、参考にさせていただきます」


「お役に立てたのでしたら幸いですわ」


 そう答えながら、私は内心で少し反省していた。


 また仕事の話ばかりしてしまった。


 レオナルドお兄様からは、趣味や好きなものについて話してみるとよいと助言されていたのに、気がつけば領地経営について意見を交わしている。


 まあ、相手も楽しそうに話してくださっているのだから、悪いことではないのだろう。


「本日はお話しできて光栄でした。また機会がございましたら、ぜひお話を伺わせてください」


「こちらこそ、ありがとうございました」


 エドガー様は丁寧に一礼すると、別の貴族たちのもとへ向かっていった。


 私はその背中を見送りながら、今日の会話を振り返った。


 真面目に仕事へ取り組んでいらっしゃる方のようだし、話し方も穏やかで、こちらの意見にも耳を傾けてくださった。


 ただ、それ以上のことはまだわからない。


 初めてお会いしたばかりなのだから、当然だろう。


 少なくとも、またお話しする機会があれば、今度は仕事以外のことも聞いてみようと思った。


     ◇


 交流会が終わる頃には、私はすっかり疲れていた。


 身体を動かしたわけではないけれど、初対面の人々と次々に話すというのは、それなりに気を遣うものだ。特に今回は王女として参加しているため、気軽な交流の場とはいっても、言葉遣いや態度に注意する必要があった。


 それでも、思っていたよりは楽しい時間を過ごせたように思う。


「リリアーナ、お疲れ様。今日はどうだったかな?」


 広間を出ようとしたところで、レオナルドお兄様が声をかけてくださった。


「お兄様も、お疲れ様でございました。思っていたよりも多くの方とお話しできましたし、なかなか有意義な時間だったと思います」


「それはよかった。僕もいろいろな人と話せて楽しかったよ」


 お兄様は満足そうに微笑んだ後、少しだけ声を落とした。


「ところで、親しくなれそうな人はいたかな?」


「そうですね。何名か、またお話ししてみたい方はいらっしゃいました」


「そうか。それはよかったね。どんな人たちだったのかな?」


「領地経営に興味を持っていらっしゃる方や、商業に携わっている方などです。皆様、それぞれのお立場で真剣に取り組んでいらっしゃるようでした」


 私がそう答えると、お兄様は少し考え込むような表情になった。


「なるほど。仕事の話をしたんだね」


「はい。とても参考になりました」


「……ほかには?」


「ほか、ですか?」


「趣味の話とか、好きなものの話とか。そういう話はしなかったのかな?」


「そういえば、美味しい菓子店のお話を伺いましたわ。今度、サリナと一緒に行ってみようかと思っております」


「……そうか」


 お兄様は小さく笑った。


 何だろう。何かおかしなことを言ってしまったのかしら。


 そのとき、エレオノーラお姉様がこちらへいらっしゃった。


「リリアーナ、今日は随分と楽しそうでしたわね。最初はあれほど嫌がっておりましたのに」


「実際に参加してみると、思っていたよりもよい機会でした。普段はお会いできない方々ともお話しできましたし」


「それは何よりですわ。ところで、気になる殿方はいらっしゃいました?」


「……はい?」


 突然の質問に、私は思わず聞き返してしまった。


「せっかくの交流会ですもの。そういう出会いもあったのではなくて?」


「い、いえ! 私は純粋に交流を楽しんでいただけです!」


「まあ、そうでしたの?」


 お姉様は口元に手を添え、楽しそうに微笑んでいる。


 その隣では、レオナルドお兄様まで苦笑していた。


「エレオノーラ、あまりからかうものじゃないよ。リリアーナは仕事の話で忙しかったみたいだからね」


「……お兄様?」


「ふふ、そうでしたの。でしたら、次回はもう少し違ったお話もしてみるとよろしいですわね」


「お姉様まで……」


 どうして皆様、私に婚約者を見つけさせようとなさるのだろう。


 私はまだ二十二歳だし、今すぐ結婚しなければならない理由もないはずだ。


 それに、今日お会いした方々とは、まだ一度お話ししただけである。


 相手のことをよく知らないまま婚約など考えられるはずもないし、そもそも私は仕事を増やしたくないのだ。


「まあ、まだ第一回ですものね。これからも様々な方が参加されるでしょうし、焦る必要はありませんわ」


「……私は焦っておりませんけれど」


「ええ、存じておりますわ」


 お姉様は楽しそうに微笑んでいる。


 ……絶対に面白がっていらっしゃるわね。


 私は小さくため息をついた。


 もっとも、交流会そのものに不満があるわけではない。


 普段は接する機会の少ない若手貴族たちと話すことができたし、各家の事情についても少し知ることができた。今後、何かの仕事で関わることがあれば、今日の交流が役に立つこともあるだろう。


 それに、美味しい焼き菓子もあった。


 そう考えれば、参加した甲斐は十分にあったと思う。


「それでは、お兄様、お姉様。私はこれで失礼いたします」


「うん。ゆっくり休むといいよ」


「お疲れ様、リリアーナ。また次回も楽しみにしておりますわ」


「ありがとうございます」


 二人に礼を告げ、私は広間を後にした。


 次の交流会は一週間後。


 今日とは違う顔ぶれも参加するだろうし、同じ方と再びお話しする機会もあるかもしれない。


 最初は面倒だとばかり思っていたけれど、こうして多くの人と話すのも、たまには悪くないものだ。


 もちろん、婚約者探しについては別の話だけれど。


 私は廊下を歩きながら、今日聞いた菓子店のことを思い出していた。


 せっかくだから、次の休みにでもサリナを誘ってみようかしら。


 そんなことを考えているうちに、少しだけ足取りが軽くなった。


 少なくとも、今日の交流会は、私が心配していたような面倒事にはならなかったのだから。

お読み頂き、ありがとうございます。

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