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やり過ぎた!  作者: 涙目
第四章 理念対立編

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第十八話 結果と真実とその先

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

 王都の貴族街。


 その一角に建つ伯爵家の屋敷では、数人の貴族たちが顔を揃えていた。


 普段であれば、互いの領地経営や王宮内の噂話に花を咲かせる場である。


 しかし、今日に限っては、誰一人として笑顔を浮かべていなかった。


「……まさか、陛下まで演説なさるとは」


 最初に口を開いたのは、屋敷の主人である伯爵だった。


 テーブルの上には、昨日の公開演説を書き留めた書類が置かれている。


 王位継承者五名。


 そして、国王陛下。


 六名の演説内容を、屋敷の者が記録したものだ。


「それだけではありません。五名の殿下が、揃って我々の主張を否定なさったのです」


「……いや、全員というわけではないだろう」


 別の貴族が、慎重に言葉を選んだ。


「それぞれ、行政、教育、軍事、経済について語られた。貴族派そのものを名指しされたわけではない」


「ですが、権限には責任が伴うと、皆様がおっしゃったではありませんか」


「……それは」


 誰も、すぐには答えられなかった。


 彼らが支持していた理念は、貴族が国政における権限を拡大し、王家が国家運営の最終的な責任を負うというものだった。


 貴族が政治を担い、王が国の象徴として責任を負う。


 そう説明されれば、貴族の地位向上を望む者にとっては魅力的な話に聞こえる。


 しかし、昨日の演説によって、その考え方に疑問を抱く者が現れ始めていた。


「……そもそも、我々は何を求めていたのでしょうな」


 一人の子爵が、ぽつりと呟いた。


「何?」


「いえ。私は、地方の実情を知らぬ王都の役人に、領地のことを勝手に決められるのが不満だったのです」


 子爵は、膝の上で両手を組んだ。


「だからこそ、貴族の発言力を強めるべきだという主張に賛同しました」


「それは、我々も同じだ」


「ですが、権限を持つなら、その判断の責任も負う。それは当然ではありませんか?」


 室内が静まり返った。


「私は、自分の領地に関する判断を、自分で下したいのです。その結果について、陛下に責任を押しつけたいわけではありません」


 伯爵は、難しい顔で腕を組んだ。


「……確かにな」


 別の男が頷いた。


「私も、貴族が政治に関わる機会を増やすべきだとは思っている。だが、責任まで王家に負わせるという話には、以前から疑問があった」


「では、なぜ今まで何も言わなかったのです?」


「……貴族の権限を強めるという目的は、一致していたからだ」


 その言葉に、何人かが視線を落とした。


 彼らは、同じ目的を持って集まったつもりだった。


 しかし、改めて話してみれば、それぞれが求めていたものは微妙に異なっている。


 領地の裁量を広げたい者。


 王宮内での発言力を強めたい者。


 商業上の特権を増やしたい者。


 そして、ただ王家よりも貴族の地位を高めたい者。


 同じ貴族派を名乗っていても、その思惑は一つではなかった。


「……私は、しばらく距離を置こうと思っています」


 子爵の言葉に、伯爵が顔を上げた。


「本気か?」


「はい」


「今さら抜ければ、裏切り者と見なされるかもしれんぞ」


「……承知しております」


 子爵は、静かに頷いた。


「ですが、私は陛下に責任を押しつけるために、貴族になったわけではありません」


 その言葉を、誰も笑うことはできなかった。


「……私も、考え直す必要がありそうですな」


 別の貴族が、静かに口を開いた。


「貴族派の主張をすべて否定するつもりはありません。ですが、昨日の演説を聞いて、少なくとも今のままでよいとは思えなくなりました」


 伯爵は、しばらく黙っていた。


 やがて、深くため息を吐いた。


「……まったく。王女殿下も、随分と厄介なことをしてくださったものだ」


「第五位殿下ですか?」


「ああ」


 伯爵は、演説の記録へ目を落とした。


「王になりたくないなどと、あれほど堂々と言い切るとはな」


 何人かが、苦笑した。


「ですが、あの方のお言葉は、分かりやすかった」


「……そうですな」


「仕事を減らしたい。無駄をなくしたい。そのために、責任の所在を明確にする」


 子爵は、静かに続けた。


「我々が求めていたものも、本来はそういうことだったのかもしれません」


 誰も反論しなかった。


 その日、伯爵家の屋敷で行われた会合は、結論を出さぬまま終わった。


 しかし、これまで当然のように貴族派を支持していた者たちの間に、確かな変化が生まれていた。


     ◇


 王都の別の屋敷。


 こちらでは、先ほどの会合とはまったく異なる空気が漂っていた。


「……離反者が出始めているだと?」


 重厚な机の向こうに座る男が、低い声で尋ねた。


「はい。昨日の演説を受け、これまで協力的だった貴族の中に、今後の活動への参加を見合わせたいと申し出る者が現れております」


「何人だ?」


「現時点で、確認できているのは七名です」


 男は、差し出された報告書を机へ置いた。


「……七名か」


「さらに、態度を明らかにしていない者もおります」


「ふん。日和見主義者どもめ」


 男は、吐き捨てるように言った。


「少し民衆の前で話した程度で、考えを変えるとはな」


 報告に来た貴族は、慎重に口を開いた。


「しかし、今回は国王陛下ご自身が、権限と責任について明言されました」


「それがどうした?」


「……我々の主張と、明確に対立する内容でございます」


 男の目が細められた。


「王が何を語ろうと、政治を動かしているのは貴族だ」


「……はい」


「王都の役人も、地方の統治者も、軍の指揮官も、すべて王一人で務まるものではない」


 男は、机を指先で叩いた。


「その実態を知らぬ民が、演説に感動したところで何が変わる?」


 報告者は、しばらく黙っていた。


 そして、恐る恐る答えた。


「……その民が、我々の領地で暮らしております」


 男の指が止まった。


「何?」


「昨日の演説を聞いた商人や職人たちの間でも、貴族が負うべき責任について話題になっております」


「……それが?」


「領地へ戻れば、同じ話が広がる可能性がございます。実際、領民から説明を求められた場合、どのように答えるべきかと相談してきた者もおります」


 男は、しばらく何も言わなかった。


 やがて、ゆっくりと椅子の背に体を預けた。


「……なるほどな」


 その声からは、先ほどまでの苛立ちが消えていた。


「つまり、王家は我々を直接処罰するのではなく、民の目をこちらへ向けさせたわけか」


「……はい」


「厄介なことをしてくれたものだ」


 男は、報告書をもう一度手に取った。


 五人の王位継承者による演説。


 その内容は、それぞれ異なっている。


 しかし、根底にある考え方は共通していた。


 国を治める者は、民のために働かなければならない。


 そして、権限を持つ者は、その結果に責任を負う。


「……リリアーナ・プレイング」


 男は、その名前を小さく呟いた。


「また、あの王女か」


 報告者が頷いた。


「今回の公開演説も、第五位殿下の提案によるものと聞いております」


「……そうか」


 男は、窓の外へ視線を向けた。


「地方統治だけでなく、王都の政治にまで口を出し始めたか」


 しばらくして、男は静かに命じた。


「離反を申し出た者の名前をまとめろ」


「……はっ」


「ただし、今は手を出すな」


 報告者は、意外そうに顔を上げた。


「よろしいので?」


「ここで騒ぎを起こせば、王家の主張を裏づけるだけだ」


 男は、淡々と続けた。


「我々が責任を負わず、権力だけを求めていると思われている時に、反対者を脅してどうする」


「……なるほど」


「まずは、誰が残り、誰が離れるのかを見極める」


 男は、報告書を閉じた。


「それからだ」


     ◇


 王城の執務室。


 国王は、机の上に置かれた報告書を読んでいた。


 その向かいには、宰相が立っている。


「……七名か」


「はい。現時点で確認できている人数でございます」


「思ったより早かったな」


 国王は、静かに頷いた。


「昨日の演説が、よほど効いたらしい」


「王位継承者五名が、それぞれの立場から考えを語られましたからな」


「それだけではあるまい」


 国王は、報告書を机へ置いた。


「元々、貴族派の中にも疑問を抱いていた者がいたのだろう」


「……はい」


「今回の演説は、その疑問を口にするきっかけになったにすぎん」


 宰相は頷いた。


「貴族派に属している者が、すべて同じ考えを持っているわけではございません。領地の裁量を広げたい者もいれば、王宮での発言力を強めたい者もおります」


「うむ」


「権限の拡大には賛成でも、責任を王家に押しつけることには反対という者も、少なくありません」


 国王は、満足そうに頷いた。


「それでよい」


「……と、申されますと?」


「考え方が異なるのは、当然のことだ。むしろ、全員が同じ考えで動いている方が不自然であろう」


 国王は、椅子の背に体を預けた。


「大切なのは、自分が何を求め、そのために何を負うのかを考えることだ」


 宰相は、静かに頷いた。


「まことに、そのとおりでございます」


「……それにしても」


 国王は、少しだけ笑った。


「王位継承者たちも、まだまだだな」


「……何がでございましょう?」


「貴族派の主導者が誰なのか、最後まで掴めなかったではないか」


 宰相は、静かに国王を見た。


「……手厳しいですな、陛下」


「何を言う。貴族派の主導者である宰相よ」


「……そもそも、貴族派を組織するよう命じられたのは陛下でございます」


 国王は、愉快そうに笑った。


「はははっ! そうであったな!」


 宰相は、深いため息を吐いた。


「……まったく。ご自分で仕掛けておきながら、随分と楽しそうでございますな」


「楽しんでなどおらん」


「……そうでございますか」


「うむ」


 国王は、満足そうに頷いた。


「……少ししかな」


「……陛下」


 宰相の声には、明らかな呆れが混じっていた。


 国王は、再び笑った。


「だが、結果としては上々であろう?」


「……確かに、王位継承者の皆様が、それぞれの考えを示されました」


「うむ」


「そして、貴族派の内部でも、権限と責任について考え直す者が現れております」


 宰相は、静かに続けた。


「ですが、陛下。そもそも、このような大掛かりなことをなさらずとも、皆様の能力を確認する方法はあったのではございませんか?」


 国王は、首を横に振った。


「いや。それでは意味がない」


「……と、申されますと?」


「王とは、正しい答えを知っているだけでは務まらん」


 国王は、静かに続けた。


「自分とは異なる考えを持つ者と向き合い、時には対立し、それでも国を動かさねばならん」


 宰相は、黙って耳を傾けていた。


「だからこそ、実際に対立する勢力を相手に、どう判断するのかを見たかったのだ」


「……なるほど」


「それに、貴族派の者たちも、ただ命じられたとおりに動いていたわけではあるまい?」


「はい」


 宰相は、静かに頷いた。


「私は貴族の権限拡大を唱え、それに賛同する者たちを集めました。しかし、参加した者の多くは、それぞれの考えで行動しております」


「うむ」


「中には、私の考えとは異なる主張をする者もおりました」


「それでよい」


 国王は、静かに頷いた。


「こちらがすべてを指示してしまえば、ただの芝居になってしまう」


 宰相は、苦笑した。


「……それでも、随分と危うい試みであったと思いますが」


「そうだな」


 国王は、あっさりと認めた。


「だが、国を治めるというのは、常に思いどおりになるものではない」


 国王は、報告書へ視線を落とした。


「貴族派の者たちが何を考え、王位継承者たちがどう動くのか。その両方を見ることができたのだから、無駄ではなかっただろう」


「……左様でございますな」


 宰相は、静かに頷いた。


「もっとも、リリアーナ殿下が公開演説を提案なさるとは、予想しておりませんでした」


「はははっ! あれは儂も驚いたぞ!」


 国王は、楽しそうに笑った。


「まさか、五人揃って民の前で考えを語ることになるとはな!」


「おかげで、貴族派の主張そのものが問われることになりました」


「うむ。あやつは、いつも予想の斜め上を行く」


 国王は、満足そうに頷いた。


「それに、他の四人も悪くなかった」


「はい」


「レオナルドは、国を安定させるために何が必要かを考えておる。ヴィクトリアは、経済と財政をよく見ている。ユリウスは、軍を率いる者としての責任を理解し始めた。エレオノーラは、人を育てることの大切さを知っておる」


 国王は、静かに微笑んだ。


「皆、それぞれによいものを持っておる」


「……左様でございますな」


「そして、リリアーナだ」


 宰相は、少しだけ表情を緩めた。


「仕事を減らしたい、でございますか」


「はははっ! そうだ!」


 国王は、大きな声で笑った。


「王になりたくないと、あれほど堂々と言い切るとはな!」


「……あの場で、あのようなことをおっしゃるとは思いませんでした」


「儂もだ!」


 国王は、ひとしきり笑った後、静かに続けた。


「だが、あやつの言葉は、決して間違っておらん」


「はい」


「無駄な仕事を減らし、必要なことに力を注ぐ。権限を持つ者が、その責任を負う」


 国王は、机の上に置かれた演説の記録へ目を落とした。


「言葉にすれば簡単だが、実際に行うのは難しいことだ」


「……まことに」


「それを、あやつは自分が休みたいという理由でやってしまうのだからな」


 国王は、再び笑った。


「実に、面白い娘だ」


 宰相も、思わず笑みを漏らした。


「……ご本人は、褒められても困惑なさるでしょうな」


「だろうな!」


 しばらく、二人の笑い声が執務室に響いた。


 だが、やがて宰相が表情を引き締めた。


「……陛下」


「何だ?」


「一つ、確認しておきたいことがございます」


 国王は、宰相の顔を見た。


「申してみよ」


「リリアーナ殿下の暗殺未遂についてでございます」


 国王の笑みが消えた。


「……あれか」


「はい」


 宰相は、静かに頷いた。


「ダニエルから第三王子派、そして貴族派に属する者へと繋がりが確認されております」


「……うむ」


「ですが、あの件について、私は一切指示しておりません」


 国王は、静かに頷いた。


「分かっておる」


 宰相は、少しだけ頭を下げた。


「ありがとうございます」


「そもそも、王位継承者の能力を試すために、命を奪ってどうする」


 国王の声には、先ほどまでの陽気さがなかった。


「それでは、試練ではなく、ただの殺人ではないか」


「……おっしゃるとおりでございます」


 国王は、しばらく黙っていた。


 そして、静かに尋ねた。


「……それで、誰の仕業か分かっているのか?」


「現在、調査中でございます」


「貴族派の者が関わっていたのであろう?」


「はい。ただし、その者が単独で行ったわけではないことまでは判明しております」


 国王は、眉をひそめた。


「……ほう」


「しかし、他に誰が関与していたのか、誰が指示を出したのかについては、まだ分かっておりません」


「……貴族派の者か?」


「それも含めて、調査中でございます」


 国王は、ゆっくりと椅子の背に体を預けた。


「……なるほどな」


 しばらく、沈黙が続いた。


「貴族派に属する者が関わっていたからといって、貴族派の者だけで計画したとは限らん、ということか」


「左様でございます」


「ましてや、貴族派そのものが暗殺を企てたと決めつけるわけにもいかん」


「はい」


 宰相は、静かに頷いた。


「現時点で分かっているのは、関与した者の一部だけでございます。背後にどのような人物がいるのか、あるいは何を目的としていたのかについても、調査を続けております」


 国王は、目を閉じた。


「……まったく」


 低い声が、執務室に響いた。


「儂が仕掛けた政争の中で、儂の知らぬところで娘の命が狙われたか」


 宰相は、何も答えなかった。


「……皮肉なものだな」


「……陛下」


「分かっておる」


 国王は、ゆっくりと目を開いた。


「貴族派を動かしたのは儂だ。だが、だからといって、そこに属する者たちの行動をすべて把握していたわけではない」


「……はい」


「そして、その隙を突かれた可能性もある」


 宰相は、深く頭を下げた。


「申し訳ございません」


「お前だけの責任ではない」


 国王は、静かに首を横に振った。


「そもそも、儂が命じたことだ」


 宰相は、しばらく黙っていた。


「……引き続き、調査を進めます」


「うむ」


「ただし、現時点では、関与した者たちの関係も明確になっておりません。慎重に調べる必要がございます」


「分かっておる」


 国王は、静かに頷いた。


「憶測で人を裁くわけにはいかん。ましてや、昨日あれだけ責任について語ったばかりだ」


「……左様でございますな」


「だが」


 国王の声が、低くなった。


「何者であろうと、娘の命を狙った者を見過ごすつもりはない」


 宰相は、深く頭を下げた。


「承知いたしました」


     ◇


 しばらくして、国王は再び報告書へ目を落とした。


「……それにしても」


「はい?」


「リリアーナは、今回も随分と目立ってしまったな」


 宰相は、苦笑した。


「ご本人に、そのつもりはなかったのでしょうが」


「だろうな」


 国王は、小さく笑った。


「あやつは、仕事を減らしたいだけだからな」


「はい」


「だが、今回の演説によって、王位継承者としての評価は、さらに高まったであろう」


 宰相は、静かに頷いた。


「他の殿下方も、リリアーナ殿下の能力を認めておられるようでございます」


「うむ」


「もっとも、ご本人は、皆様に王になっていただきたいと考えておられるのでしょうが」


 国王は、愉快そうに笑った。


「はははっ! 目に浮かぶわ!」


 宰相も、思わず笑みを漏らした。


「……ですが、陛下」


「何だ?」


「今回の件で、リリアーナ殿下がさらに注目を集めることは避けられません」


 国王の笑みが、少しだけ薄れた。


「……分かっておる」


「暗殺未遂の件も、まだ解決しておりません」


「うむ」


「警護については、引き続き強化する必要があるかと」


 国王は、静かに頷いた。


「そうだな。だが、本人には必要以上の負担をかけるな」


 宰相は、一瞬だけ目を瞬かせた。


「……と、申されますと?」


「警護を増やすために、あやつの行動をすべて制限してしまえば、今度は別の問題が起きる」


「……別の問題、でございますか?」


「どうせ、休めなくなったと騒ぎ出すに決まっておる」


 宰相は、思わず笑みを漏らした。


「……確かに」


「それに、あやつは何か思いつくと、こちらの予想もつかんことを始めるからな」


 国王は、深くため息を吐いた。


「できるだけ自然に守れ」


「承知いたしました」


 宰相は、深く頭を下げた。


 国王は、窓の外へ視線を向けた。


 王都には、いつもと変わらぬ穏やかな景色が広がっている。


 昨日の演説によって、貴族派の結束は崩れ始めた。


 王位継承者たちも、それぞれが自分の目指す未来を語った。


 国王が仕掛けた試練は、一つの結果を出したと言ってよいだろう。


 だが、その裏で起きた暗殺未遂だけは、国王自身の想定を超えていた。


「……宰相」


「はい」


「今回の件、儂らの勝ちだと思うか?」


 宰相は、少し考え込んだ。


「……少なくとも、当初の目的は果たせたかと存じます」


「そうだな」


 国王は、静かに頷いた。


「だが、まだ終わってはおらん」


「……はい」


「誰が、何のためにリリアーナを狙ったのか。それが分からぬうちは、安心できん」


 宰相は、深く頭を下げた。


「必ず、調べ上げます」


「頼んだぞ」


 国王は、再び窓の外へ視線を向けた。


 穏やかな王都の街並み。


 そのどこかに、娘の命を狙った者がいる。


 それが誰なのか、何を目的としているのか。


 今は、まだ分からない。


 国王は、静かに目を細めた。


「……さて。次は、どう動くかのう」

お読み頂き、ありがとうございます。

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