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やり過ぎた!  作者: 涙目
第四章 理念対立編

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第九話 裏切り者の定義

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

「……」


 ロイドは。


 何も言えなかった。


 目の前には。


 同じ護衛として派遣された騎士。


 そして。


 その周囲には。


 暗殺者らしき者たちが。


 次々と組み伏せられていた。


「……おい」


 声が漏れる。


 地面に組み伏せられている騎士。


 見間違えるはずがない。


 毎日のように顔を合わせている。


 同じ主を守るため。


 レオナルド第一王子から派遣された。


 四人のうちの一人。


「……どういうことだ」


 ロイドが呟いた。


「ロイド!」


「っ!」


 後ろから声。


 振り返る。


 走ってくる人影が見えた。


 アルベルト。


 その後ろにはセシリア。


「今の叫び声は――」


 アルベルトが言葉を止める。


「……」


 視線が。


 地面へ向く。


 セシリアも。


 同じ場所を見る。


「……ダニエル?」


 そこにいた。


 ダニエル・フォード。


 地面へ組み伏せられ。


 両腕を押さえられている。


「……」


 ロイド。


 アルベルト。


 セシリア。


 そして。


 ダニエル。


 四人。


 全員が。


 同じ場所に揃った。


「ダニエル」


 アルベルトが低い声で呼ぶ。


「……」


「これは、どういうことだ」


 返事はない。


「答えろ」


「……」


 ダニエルは顔を伏せている。


「ダニエル!」


「待ってください」


 セシリアがアルベルトを止めた。


「何だ」


「まだ何も分かっておりません」


「だが!」


「私たちは今、ここへ来たばかりです」


「……」


「まず、状況を確認すべきです」


 アルベルトが黙る。


 ロイドは周囲を見た。


 ダニエルだけではない。


 少し離れた場所。


 見知らぬ男たちが地面へ押さえつけられている。


 一人。


 二人。


 三人。


 その近くには。


 取り上げられた剣。


 短剣。


 短弓。


 そして矢。


「……」


 どう見ても。


 ただ通り掛かった人間には見えない。


「こいつらは?」


 ロイドが尋ねる。


「まだ確認中だ」


 その場にいた騎士が答える。


「武器を所持していたため拘束した」


「ダニエルは?」


「同じ場所にいた」


「一緒にいたのか?」


「それは分からない」


「……」


「我々が配置についていた時には、既にこの周辺にいた」


「なら」


 アルベルトが尋ねる。


「ダニエルがこの者たちを連れてきたとは限らないということか」


「確認できていない」


「……」


 ロイドがダニエルを見る。


 ダニエルは。


 まだ何も言わない。


「ダニエル」


 ロイドが呼ぶ。


「……」


「何でここにいる」


「……」


「お前も呼ばれたのか?」


 その言葉に。


 ダニエルが僅かに顔を上げた。


「……お前も?」


 今度は。


 アルベルトがロイドを見る。


「どういう意味だ」


「……」


 ロイドは一瞬迷う。


 だが。


 ここまで来て。


 隠す意味はない。


「俺も呼ばれた」


「誰に」


「リリアーナ殿下だ」


「……」


 アルベルトの表情が変わった。


 セシリアも。


 何も言わない。


「場所を指定された」


 ロイドが続ける。


「そこへ行ったら、フードを被った女性がいた」


「殿下だったのか?」


「違った」


「……」


「顔を確認した。殿下ではなかった」


「どういうことだ?」


「俺が聞きたい」


「……」


 アルベルトが。


 ゆっくりとセシリアを見る。


「セシリア」


「……はい」


「まさか」


「私もです」


「……」


「リリアーナ殿下から、指定された場所へ来るようにと」


 アルベルトの顔が固まる。


「……俺もだ」


 今度は。


 ロイドとセシリアがアルベルトを見る。


「ということは」


 ロイドが。


 ダニエルを見る。


「全員……?」


「……」


 ダニエルは答えない。


 だが。


 三人には。


 もう分かっていた。


 自分だけではなかった。


「あなただけを信用しております」


 そう。


 言われた。


 全員が。


 同じように。


「……やられた」


 ロイドが呟く。


「何がだ」


「俺たち全員」


 思わず。


 乾いた笑いが出た。


「殿下に試されたんだ」


「……」


 誰も否定できない。


 四人。


 それぞれに。


 違う場所。


 違う時間。


 そして。


 自分だけを信用していると思わせる言葉。


 なら。


 ここで何が起きたのか。


「……この場所は」


 セシリアがダニエルを見る。


「貴方が指定された場所なのですか?」


「……」


 沈黙。


「ダニエル」


「……はい」


 小さな返事。


「ここです」


「……」


 空気が変わった。


 ロイドが。


 周囲の男たちを見る。


 武器。


 拘束された男たち。


 そして。


 同じ場所にいたダニエル。


「じゃあ」


「待て」


 アルベルトが止める。


「まだだ」


「でも」


「場所が一致した。それだけだ」


「……」


「殿下なら、そう言う」


 ロイドが黙った。


 その通りだった。


 この数日。


 何度も聞いた。


 分からないものを。


 分かったことにしない。


「……そうだな」


 ロイドが息を吐く。


「まず確認だ」


「はい」


 セシリアも頷く。


 その時。


「その通りです」


「!」


 四人が一斉に振り返った。


 暗がりから。


 人影が現れる。


「殿下」


 リリアーナ。


 その隣にはサリナ。


 ケイン。


 そして。


 レオナルド。


「全員」


 リリアーナが四人を見る。


「揃っていますね」


「……はい」


 アルベルトが答えた。


「では」


 リリアーナは。


 まずロイドを見る。


「ロイド」


「はい」


「指定された場所へ行きましたか?」


「はい」


「そこにいたのは?」


「フードを被った女性でした」


「私でしたか?」


「いいえ」


「アルベルト」


「はい」


「同じですか?」


「はい。指定された場所には女性が一人。ですが、リリアーナ殿下ではございませんでした」


「セシリア」


「私も同様です」


 そして。


 リリアーナの視線が。


 最後の一人へ向く。


「ダニエル」


「……」


「貴方も」


 一度。


 言葉を切る。


「指定された場所へ来たんですね?」


「……はい」


「そして」


 リリアーナが周囲を見る。


 拘束された男たち。


 取り上げられた武器。


 騎士たち。


「ここに」


 視線が。


 ダニエルへ戻る。


「この方々も現れた」


「……はい」


「分かりました」


 それだけ。


 リリアーナは。


 それ以上何も言わない。


「殿下」


 ロイドが尋ねる。


「ダニエルが……情報を漏らしたということですか?」


「分かりません」


 即答だった。


「ですが」


「確認できたのは」


 リリアーナが遮る。


「私がダニエルに伝えた場所に、この方々が現れたこと」


「……」


「それだけです」


 ダニエルを見る。


「ダニエル自身が伝えた」


 周囲を見る。


「紙を誰かに見られた」


「……」


「誰かに話した」


 少し考える。


「あるいは、脅された」


「……」


「他にも、私たちがまだ考えていない可能性があるかもしれません」


 だから。


 まだ。


「裏切り者と決めるには早いです」


「……」


 ダニエルが。


 ゆっくり顔を上げる。


「殿下……」


「ただし」


 リリアーナは。


 真っ直ぐダニエルを見る。


「聞かせてください」


「……」


「貴方がここに来た理由は分かっています」


 私が呼んだから。


「では」


 次。


「この方々が」


 拘束されている男たちを見る。


「ここへ来た理由を」


 もう一度。


 ダニエルを見る。


「貴方は知っていますか?」


「……」


 ダニエルは。


 答えなかった。

お読み頂き、ありがとうございます。

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