【第5話】 ー「冒険者ギルドは、ゲームより面倒だった」
【第5話】
「冒険者ギルドは、ゲームより面倒だった」
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ギルドの建物はレスウィンの広場の東側に立っていた。二階建ての木造建築で、扉の上には大きな看板が掛かっている——剣と盾が交差する紋章。ミレアが説明したのと同じ象徴だった。
朔夜は扉を押し開けた。
温かい空気が出迎えた。内部には木製のテーブルがいくつか床に散らばっている。灰色の髭を生やした老人が隅に座り、新聞を読んでいた。二人の若い冒険者が窓際のテーブルで朝食を取っている——スープとパン、使い込まれた木の皿に盛られて。
正面のカウンターでは、金髪を後ろで結んだ若い女性が台帳に何かを書き込んでいた。
彼女は朔夜が近づくのに気づいて顔を上げた。
「おはようございます。ご用件は?」
「冒険者に登録したいのですが。」
女性は頷いた。
「お名前は?」
「御宮司朔夜です。」
「年齢は?」
「十五歳です。」
彼女は眉を上げたが、コメントはしなかった。
「出身は?」
「……ローナックです。」
「ローナック?」女性は眉をひそめた。「西の小さな村か?」
「はい。」
「遠くから来たんだな。」彼女は白紙の用紙を一枚手に取った。「文字は書けるか?」
「書けます。」
「この用紙に記入してくれ。」
朔夜はペンを取り、素早く用紙を埋めた。
名前:御宮司朔夜。
年齢:十五歳。
出身:ローナック。
能力:基礎剣術、基礎サバイバル。
登録理由:仕事と情報を求めて。
彼は用紙を返却した。
女性はそれを注意深く読んだ。
「戦闘経験は?」
「フォレストボアと戦ったことがあります。」
女性が手を止めた。
「フォレストボア? レベル6のか?」
「はい。」
「それで生きて帰ってきたのか?」
「倒しました。」
女性はしばらく彼を見つめた。それからため息をつき、用紙にスタンプを押した。
「私はミラ・ソレンヌ。レスウィン支部の受付係だ。」彼女は小さなカードを朔夜に手渡した。「これが仮の身分証だ。本証は三日後にできる。」
朔夜はそれを受け取った。
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【冒険者証 — 仮】
氏名:御宮司朔夜
ランク:E
登録:レスウィンギルド
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「ランクEですか?」朔夜は尋ねた。
「その通りだ。新人は全員Eランクから始まる。」ミラは辛抱強く説明した。「ランクはF、E、D、C、B、A、S、EXと続く。Fは全く経験のない者向けだ。だが、お前は既にフォレストボアと戦ったことがあるから、Eにしておいた。」
「ランクを上げるにはどうすれば?」
「クエストをクリアすることだ。」ミラは壁際の木製のボードを指した。「各クエストにはポイントが設定されている。難しければ難しいほど、得られるポイントは多い。一定のポイントに達したら、ランク昇格試験を受けることができる。」
「試験ですか?」
「そうだ。ランクは強さだけが全てじゃない。ギルドが評価するのは、生存能力、魔物の知識、チームワーク、そして信頼性だ。」ミラは彼を見つめた。「強いだけの奴は、失敗を繰り返せばランクは上がらない。」
朔夜は頷いた。
「わかりました。」
「いいだろう。」ミラはクエストボードを指した。「どのクエストを受ける?」
朔夜はボードに近づいた。
数十枚の紙が貼られていた——それぞれクエストの説明、場所、報酬が記されている。色分けされており、難易度を示していた。緑はFおよびEランク用。黄色はDランク。赤はCランク以上だ。
彼は数枚を読み通した。
【クエスト:薬草採取 — メドウブルーム(×20)】
場所:レスウィン西方の森
報酬:300G
ランク:F
【クエスト:森ウサギ狩猟 — ホーンドヘア(×5)】
場所:レスウィン東の畑
報酬:400G
ランク:F
【クエスト:荷物配達 — オステル村】
場所:オステル
報酬:200G
ランク:F
朔夜は最初の一枚を手に取った。
「これで。」
ミラはそれを見た。
「メドウブルーム。採取クエストだ。森の奥まで入りすぎなければ危険はない。」
「気をつけます。」
「よし。」ミラは台帳に記録した。「採取の証拠——葉か花——をここに持ち帰って確認を受けること。」
「期限は?」
「三日だ。」
朔夜はクエストの紙を折りたたみ、ポケットにしまった。
「ありがとうございます。」
彼は背を向けて去ろうとした。
「ちょっと。」
朔夜は振り返った。
ミラが鋭い目で彼を見つめていた。
「お前、本当に初めてギルドに来たのか?」
「はい。」
「……俺は何年もここで働いてきた。」ミラは両手をカウンターに付いた。「初心者と経験者の違いは見分けられる。」
朔夜は答えなかった。
「お前は緊張していない」ミラは続けた。「武器や防具、ポーションの値段についても尋ねなかった。森の魔物についても聞かなかった。」
「……物覚えが早いだけです。」
ミラは何も言わなかった。
その表情は完全には納得していないことを示していたが、追及はしなかった。
「外で気をつけろよ」彼女はやがて言った。「森はお前が思うほど安全じゃない。」
「覚えておきます。」
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朔夜はギルドを出た。
日は既にかなり高くなっていた。レスウィンの広場は賑わい始めている——商人が露店を開き、農民が収穫物を運び、子供たちが大人の足元を駆け回っている。
彼は広場の脇の道具屋へ歩いていった。
太い口髭を生やした老人が店の前でパイプを吸っていた。
「おはようございます」朔夜は言った。「リュックサック、水筒、折りたたみナイフ、そしてロープが欲しいのですが。」
老人は顔を上げた。
「新人か?」
「はい。」
彼は立ち上がって店の中へ入った。
数分後、朔夜は基本的な装備を詰めた革製のリュックを背負って店を出た。合計2,150Gだった。
残金は約47,000G。
まだ十分だった。
彼は西門へ向かって歩き出した。
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レスウィンの西方の森は、それほど深くなかった。
松と樫の木々が十分な間隔を置いて生えている。地面は松葉と苔で覆われていた。陽光が樹冠を抜け、明るい斑模様を作っていた。
朔夜は小さな道を進んだ。
彼はシステムを開いた。
「評価者。」
青い画面が現れた。
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【評価者 — 起動中】
【メドウブルーム — 薬草】
場所:森西部、小川付近
状態:発見可能
【魔物 — 低脅威度検出】
種類:ホーンドヘア(レベル1〜2)
場所:北東の開けたエリア
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「メドウブルーム……川の近くか。」
彼は方向を変えた。
約十五分ほど歩くと、水の流れる音が聞こえてきた。
小さな小川が澄んだ流れで森を分断していた。岸辺には、黄色い小花をつけた植物が群生していた。
朔夜はしゃがみ込み、その植物を調べた。
葉は楕円形で、花は淡い黄色の五弁花。かすかに甘い香りがした。
「これがメドウブルームだ。」
彼は慎重に摘み始めた。
難しくはなかった。三十分ほどで、十分以上の量を集めることができた。
彼は全てをリュックに詰めた。
「終わりだ。」
彼は立ち上がり、ズボンの埃をはたいた。
だが、彼が振り返る前に——
物音。
川の向こうの茂みから、葉が動く音がした。
朔夜は止まった。
ゆっくりと振り返った。
目を細めた。
木々の間に、一対の赤く輝く目が、影の中からこちらを見つめていた。
魔物だ。
森ウサギではない。
もっと大きな何かだ。
朔夜は息を止めた。
彼の手が腰元へ動いた。ミレアから与えられた魔法の剣はまだアイテムボックスの中だ。魔物の前で、十分な間を置かずにそれを呼び出すことはできなかった。
「……仕方ない。」
彼は手を少しだけ下げ、何かを掴もうとするような仕草をした。
魔物が影から姿を現した。
体は大型犬ほどの大きさだった。皮膚は暗い灰色で、頭には短い角が生えている。口をわずかに開き、鋭い牙を覗かせていた。
「評価者。」
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【評価者 — 魔物検出】
名称:フォレストボア
レベル:6
状態:攻撃的
弱点:目と腹部
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「レベル6か。」
朔夜に選択肢はなかった。
彼は素早くアイテムボックスを開き、魔法の剣を引き抜いた。
鋼の刃が陽光の下で輝いた。
魔物は鼻を鳴らし、突進してきた。
朔夜は横に躱した。
熟練の技ではない。前世の経験から身についた反射神経だけだった。
彼は剣を振り下ろした。
刃は魔物の首筋を捉えた。
黒い血が噴き出した。
魔物は苦痛の咆哮を上げたが、死んではいなかった。
再び襲いかかってきた。
朔夜は身をかわしたが、今度はかろうじてだった。魔物の牙が彼の腕をかすめた。
彼は力を込め、魔物の腹部に向けて突き刺した。
剣は分厚い皮膚を貫いた。
魔物が倒れた。
血が地面に流れ出た。
朔夜は息を切らせて立っていた。
彼は目の前の死体を見つめた。
「……ゲームよりは面倒だな。」
彼は剣を草で拭い、アイテムボックスにしまい込んだ。
それから死体を見た。
「魔物が素材として使えるなら……」
彼は買ったばかりの折りたたみナイフを取り出し、牙と、まだ使えそうな皮膚を切り取る作業を始めた。
彼が人生で初めて何かを殺した瞬間だった。
楽しみのためにではない。
復讐のためでもない。
ただ生き残るために。
そして、どういうわけか、それは……現実だった。
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三時間後、朔夜はレスウィンに戻っていた。
日は西に傾き始めていた。
彼はギルドに入り、カウンターへ向かった。
ミラは台帳に何かを書き込んでいた。彼女は朔夜が近づくのを見て顔を上げた。
「思ったより早いな。」
「クエストを完了しました。」朔夜はメドウブルームの入った袋をカウンターに置いた。「これが証拠です。」
ミラは袋を開け、中身を調べた。
「数は合っている。」彼女は頷いた。「で、これは?」彼女は脇に置かれた別の袋を指した。
「魔物の素材です。森でフォレストボアに出会いました。」
ミラは眉を上げた。
「フォレストボア? レベル6のか?」
「はい。」
「それで生きて帰ってきたのか?」
「倒しました。」
ミラは信じられないという表情で彼を見つめた。
「……お前、今日登録したばかりだぞ。」
「知っています。」
「それでフォレストボアを倒したのか。基本の剣で。」
「はい。」
ミラはしばらく沈黙した。
それから、長い息を吐き、別の台帳を手に取った。
「これは魔物討伐の証拠として記録しておく。ランク昇格のポイントになる。」彼女は何かを書き込んだ。「素材はどれだけ取れた?」
「牙が二本と、皮が一枚です。」
「ふむ。」ミラはそれを記録した。「フォレストボアの牙は鍛冶屋か錬金術師に売れる。道具屋で売ることもできるし、取っておくこともできる。」
「取っておきます。」
「よし。」ミラは台帳を閉じた。「薬草採取クエスト完了。報酬は300Gだ。それに魔物討伐のポイントも加算しておく。」彼女は小さな袋の硬貨を手渡した。「はい。」
朔夜はそれを受け取った。
「ありがとうございます。」
「ああ、それと。」ミラは彼を見つめた。「お前は本当に変わった奴だな、朔夜。」
「普通の冒険者ですよ。」
「違う。」ミラは首を振った。「俺は何年もここにいる。違いはわかる。お前は初心者と経験者の間のどこかにいる。」
朔夜は答えなかった。
「ただ言っておくだけだ:気をつけろ。目立ちすぎるな。こんな場所では、目立つことは危険でもある。」
「覚えておきます。」
彼はギルドを出た。
外では、空がオレンジ色に変わり始めていた。
朔夜は広場の真ん中で立ち止まった。
彼は東の方を見た。
遠く彼方、見える範囲の外側に——
彼は首を振った。
「まだ時期じゃない。」
彼は宿へと歩き戻った。
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その夜、朔夜は宿の部屋に座っていた。
彼はシステムを開いた。
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【ステータス】
名前:御宮司朔夜
レベル:1 → 2
HP:100
MP:100
EXP:120 / 200
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「レベル2か。」
彼は画面を閉じた。
窓の外では、夜風がざわめいていた。
朔夜はベッドに横たわり、目を閉じた。
「今日は……なかなか疲れた。」
彼は眠りに落ちた。
【次回 第6話 — 「初めての魔物、初めての違和感」】
翌朝、朔夜は新たなクエストのため再び森へ向かう。しかし今回は、普通ではない何かを発見する——普通の魔物には当てはまらない足跡だ。評価者が森の奥深くで何か異常なものを感知する。
【次回に続く……】




