【第3話】 ー「冒険者ギルドは、ゲームより面倒だった」
【第3話】
「冒険者ギルドは、ゲームより面倒だった」
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ギルドの建物はキャステレルの広場の右側に立っていた。門番が言った通りだ。
その建物は灰色の石造りで、周囲の家々よりも大きく、屋根は黒っぽい木製だった。入口の上には、剣と盾が交差する紋章が彫られた大きな木の看板が掛かっている——アステラ全土で共通のギルドの象徴であり、ミレアが説明していた通りだった。
朔夜は分厚い木製の扉を押し開けた。
温かい空気が出迎えた。
内部は広く、賑わっていた。大きな木製のテーブルがいくつも床に並べられ、革や鎖帷子を身に着けた男たちや女たちが席を占めていた。その何人かは昼食を取っていた——木の皿に載せられたパン、スープ、そして焼き肉。別の者たちは地図を調べたり、武器を手入れしたりしていた。部屋の隅では、一団の冒険者たちが、朔夜には理解できない冗談に大声で笑っていた。
部屋の最奥には、長い木製のカウンターがあり、その向こうに一人の若い女性が立っていた。彼女は金髪を後ろで簡潔にまとめていた。カウンターの上には、紙の束、ペン、インク壺が積まれていた。
朔夜はカウンターへ歩み寄った。
女性が顔を上げた。
「キャステレル冒険者ギルドへようこそ。ご用件は?」
声はプロフェッショナルだったが、冷たさはなかった。彼女の薄い青色の目が、朔夜を頭の先からつま先まで観察していた。
「冒険者に登録したいのですが」朔夜は言った。
女性は頷いた。
「お名前は?」
「御宮司朔夜です。」
「年齢は?」
「十五歳です。」
女性は眉を上げた。
「十五歳で、一人で来たのか?」
「はい。」
彼女はじっくりと朔夜を観察し、それから小さく息を吐いて、白紙の用紙を一枚手に取った。
「では、登録用紙です。ここを埋めてください——名前、年齢、出身、能力、そして登録理由。文字が書けないなら、その旨をお伝えください。」
「書けます。」
朔夜は差し出されたペンを取り、用紙に記入し始めた。
名前:御宮司朔夜。
年齢:十五歳。
出身:——彼は一瞬ためらってから、「ローナック」と書いた。
能力:基礎剣術、基礎サバイバル。
登録理由:仕事と情報を求めて。
彼は用紙を返却した。
女性はそれを素早く目を通した。
「ローナック? 西の小さな村か?」
「はい。」
「そこに着いたばかりなのか?」
「今日着きました。」
女性は眉をひそめた。
「それで、すぐにキャステレルまで歩いて来たのか?」
「はい。」
彼女は信じられないという表情で朔夜を見つめたが、何も言わなかった。
「よし。基本登録には手数料として100Gが必要だ。これには冒険者証とクエストボードへのアクセスが含まれる。」
朔夜は小さな財布から硬貨を取り出した——ミレアが与えた金銭だ。彼は100Gを数えてカウンターに置いた。
女性は硬貨を受け取り、ひとしきり確認してから、引き出しにしまった。
「私はミラ・ソレンヌ。キャステレル支部の受付係だ。」彼女は小さな紙切れにスタンプを押し、朔夜に手渡した。「これが仮の身分証だ。本証は二日後にできる。」
朔夜はそれを受け取った。
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【冒険者証 — 仮】
氏名:御宮司朔夜
ランク:E
登録:キャステレルギルド
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「ランクEですか?」朔夜は尋ねた。
「その通りだ。新人は全員Eランクから始まる。」ミラは辛抱強く説明した。「ランクはF、E、D、C、B、A、S、EXと続く。Fは登録したばかりで経験のない者向けだ。EはFクエストを三つクリアした後の基本ランクだ。」彼女は一旦止めた。「ただし、お前は一人で来たし、どう見ても……経験はなさそうだから、直接Eにしておいた。」
朔夜は気にしなかった。
「ランクを上げるにはどうすれば?」
「クエストをクリアすることだ。クエストが難しいほど、得られるポイントは多い。一定のポイントに達したら、ランク昇格試験を受けることができる。だが、覚えておけ——ランクは強さだけが全てじゃない。」ミラは最後の言葉を強調した。「ギルドが評価するのは、生存能力、魔物の知識、チームワーク、そして信頼性だ。強いだけの奴は、クエストを失敗し続ければランクは上がらない。」
朔夜は頷いた。
「わかりました。」
「いいだろう。」ミラは別の紙を手に取った。「で、どのクエストを受ける?」
朔夜は壁際のクエストボードを見つめた。
ボードにはびっしりと紙が貼られていた——それぞれ村人、商人、地方自治体からの依頼だった。
「初心者に適したクエストはどれですか?」朔夜は尋ねた。
ミラは彼の視線を追った。
「下の方にいくつか基本的なクエストがある——緑の印がついているものだ。」彼女は指を差した。「薬草採取、森ウサギの狩猟、隣村への荷物の配達だ。」
朔夜はクエストボードに近づいた。
彼の視線は素早く一枚一枚を走査した。
【クエスト:薬草採取 — メドウブルーム(×20)】
場所:キャステレル西方の森
報酬:300G
ランク:F
【クエスト:荷物配達 — オステル村】
場所:オステル、キャステール男爵領
報酬:200G
ランク:F
【クエスト:森ウサギ狩猟 — ホーンドヘア(×5)】
場所:キャステレル東の畑
報酬:400G
ランク:F
朔夜は一枚の紙を手に取った。
「これで。」
ミラはそれを見た。
「薬草採取か。本当にいいのか?」
「はい。」
「よし。」ミラは台帳にそのクエストを記録した。「このクエストに危険はない。西の森は普通は安全だが、奥に入りすぎるな——最深部にはもっと大きな魔物がいるエリアがある。」
「気をつけます。」
「いいだろう。」ミラはクエストの説明が書かれた紙を手渡した。「期限は三日だ。採取の証拠——葉か花——をギルドに持ち帰って確認を受けること。」
朔夜はその紙を受け取り、丁寧に折りたたんだ。
「ありがとうございます。」
彼は背を向けて去ろうとした。
しかし、彼が扉に達する前に、後ろからミラの声が呼び止めた。
「ちょっと。」
朔夜は振り返った。
「お前、今日初めてギルドに来たんだな?」
「はい。」
「……俺はたくさんの新人を見てきた。」ミラは鋭い目で彼を見つめた。「でも、お前は違う。緊張していない。戸惑ってもいない。武器や防具について尋ねもしなかった。」
朔夜は一瞬沈黙した。
「……物覚えが早いだけです」彼はやがて言った。
ミラは答えなかった。
しかし、その表情は完全には納得していないことを示していた。
「外で気をつけろよ」彼女は言った。「森はお前が思うほど安全じゃない。」
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朔夜はギルドを出た。
日はすでに天頂に近づいていた。キャステレルの広場は活気にあふれていた——商人、農民、子供たち、そしてクエストから帰ってきたばかりの冒険者たち。
彼は広場の端に立ち止まり、装備を確認した。
アイテムボックスには非常食があった。それで十分だった。
しかし、普通の冒険者に見えるためには、システムだけに頼るわけにはいかなかった。
彼は広場の脇の小さな店へ歩いていった。
扉の上には、木の看板が掛かっていた。
【冒険者道具 — 良心的価格】
朔夜は中に入った。
店内では、太い口髭を生やした老人がカウンターの後ろに座り、布で短剣を磨いていた。
「いらっしゃい」彼は顔も上げずに言った。「何を探してる?」
「リュックサック、水筒、折りたたみナイフ、それにロープです。」
老人は顔を上げた。
「新人か?」
「はい。」
「リュックのサイズは?」
「中くらいで。三日分の旅に十分なもの。」
老人は頷いて立ち上がり、店の奥の棚へ歩いていき、茶色の革製のリュックサックを一つ手に取ってカウンターに置いた。
「これだ。牛革製、二重縫い、防水加工。1,200Gだ。」
朔夜は頷いた。
「水筒は?」
「200G。折りたたみナイフは? 600G。麻ロープ? 10メートルで150Gだ。」
朔夜は頭の中で計算した。
「合計2,150Gですね。」
「その通りだ。」
朔夜は財布から金貨を取り出した——ミレアが与えた銀貨と銅貨だ。彼は2,150Gを数えてカウンターに置いた。
老人はそれを受け取り、確認してから頷いた。
「大事に使えよ。」彼は商品を手渡した。「そして一つ忠告だ:森で油断するな。魔物はお前が新人かどうかなんて気にしない。」
朔夜は全ての品物をリュックに詰め込んだ。
「ありがとうございます。」
彼は店を出た。
外では、午後の風が吹き始めていた。
朔夜は西門へ向かって歩き出した。
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キャステレルの西方の森は、それほど深くなかった。
松と樫の木々が十分な間隔を置いて生えており、陽光が樹冠を抜けて地面に届いていた。地面は松葉と苔で覆われていて、足取りは柔らかかった。
朔夜は木こりや薬草採取者がよく通る小道を進んだ。
彼は危険を冒さなかった。
アイテムボックスにM4をしまってはいたが、本当に必要な時以外は使いたくなかった。
ミレアが与えた魔法の剣もアイテムボックスに収まったままだったが、まだ使ったことはなく——訓練なしで使う気もなかった。
今はただ、この森を理解することに集中した。
「システム、評価者」彼は静かに言った。
青い画面が視界の隅に現れた。
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【評価者 — 起動中】
【メドウブルーム — 薬草】
場所:森西部、小川付近
状態:発見可能
【魔物 — 低脅威度検出】
種類:ホーンドヘア(レベル1〜2)
場所:北東の開けたエリア
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朔夜は画面を閉じた。
「メドウブルーム……川の近くか。」
彼は方向を変えた。
約十五分ほど歩くと、水の流れる音が聞こえてきた。
小さな小川が澄んだ流れで森を分断していた。その岸辺には、見慣れない黄色い小花をつけた植物が生えていた。
朔夜はしゃがみ込み、その植物を調べた。
葉は楕円形で、花は淡い黄色の五弁花。かすかに甘い香りがした。
「これがメドウブルームか。」
彼は慎重に摘み始めた。
クエストの説明によれば、二十株必要だった。
難しくはなかった。
三十分ほどで、十分な量を集めることができた。
彼は全てをリュックに詰めた。
「終わりだ。」
彼は立ち上がり、ズボンの埃を叩いた。
だが、彼が振り返る前に——
物音。
川の向こうの茂みから、葉が動く音がした。
朔夜は止まった。
彼はゆっくりと振り返った。
目を細めた。
木々の間に、一対の赤く輝く目が、影の中からこちらを見つめていた。
魔物だ。
森ウサギではない。
もっと大きな何かだ。
朔夜は息を止めた。
彼の手はゆっくりと腰元へと動いた——もし剣を携帯していれば、そこにあるはずの場所へ。しかし、剣はまだアイテムボックスの中だった。
魔物の前で、十分な間を置かずにそれを呼び出すことはできなかった。
「……仕方ない。」
彼は手を少しだけ下げ、何かを掴もうとするような仕草をした。
魔物が影から姿を現した。
その体は大型犬ほどの大きさだった。皮膚は暗い灰色で、頭には短い角が生えている。口をわずかに開き、鋭い牙を覗かせていた。
【評価者 — 魔物検出】
名称:フォレストボア
レベル:6
状態:攻撃的
弱点:目と腹部
朔夜は小さく息を吐いた。
「レベル6か……」
選択肢はなかった。
魔物が襲撃の体勢に入った瞬間、朔夜は素早くアイテムボックスを開き、ミレアから与えられた魔法の剣を引き抜いた。
鋼の刃が陽光の下で輝いた。
魔物は鼻を鳴らし、突進してきた。
朔夜は横に躱した。
熟練の技ではない——前世の経験から身についた反射神経だけだった。
彼は剣を振り下ろした。
刃は魔物の首筋を捉えた。
黒い血が噴き出した。
魔物は苦痛の咆哮を上げたが、死んではいなかった。
再び襲いかかってきた。
朔夜は身をかわしたが、今度はかろうじてだった。
彼は腕に力を込め、魔物の腹部に向けて突き刺した。
剣は分厚い皮膚を貫いた。
魔物が倒れた。
血が地面に流れ出た。
朔夜は息を切らせて立っていた。
彼は目の前の死体を見つめた。
「……ゲームよりは面倒だな」彼はつぶやいた。
彼は息を整え、剣を草で拭い、アイテムボックスにしまい込んだ。
それから、死体を見た。
「魔物が素材として使えるなら……」
彼は買ったばかりの折りたたみナイフを取り出し、牙と、まだ使えそうな皮膚を切り取る作業を始めた。
彼が人生で初めて何かを殺した瞬間だった。
楽しみのためにではない。
復讐のためでもない。
ただ生き残るために。
そして、どういうわけか、それは……現実だった。
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三時間後、朔夜はキャステレルに戻っていた。
日は西に傾き始めていた。
彼はギルドに入り、カウンターへ向かった。
ミラは台帳に何かを書き込んでいた。彼女は朔夜が近づくのに気づいて顔を上げた。
「思ったより早いな。」
「クエストを完了しました。」朔夜はメドウブルームの入った袋をカウンターに置いた。「これが証拠です。」
ミラは袋を開け、中身を調べた。
「数は合っている。」彼女は頷いた。「で、これは?」彼女は隣に置かれた別の袋を指した。
「魔物の素材です。森でフォレストボアに出会いました。」
ミラは眉を上げた。
「フォレストボア? レベル6のか?」
「はい。」
「それで生きて帰ってきたのか?」
「倒しました。」
ミラは信じられないという表情で彼を見つめた。
「……お前、今日登録したばかりだぞ。」
「知っています。」
「それでフォレストボアを倒したのか。基本の剣で。」
「はい。」
ミラはしばらく沈黙した。
それから、長い息を吐き、別の台帳を手に取った。
「これは魔物討伐の証拠として記録しておく。ランク昇格のポイントになる。」彼女は何かを書き込んだ。「素材はどれだけ取れた?」
「牙が二本と、皮が一枚です。」
「ふむ。」ミラはそれを記録した。「フォレストボアの牙は鍛冶屋か錬金術師に売れる。道具屋で売ることもできるし、取っておくこともできる。」
朔夜は頷いた。
「取っておきます。」
「よし。」ミラは台帳を閉じた。「薬草採取クエスト完了。報酬は300Gだ。それに魔物討伐のポイントも加算しておく。」彼女は小さな袋の硬貨を手渡した。「はい。」
朔夜はそれを受け取った。
「ありがとうございます。」
「ああ、それと。」ミラは彼を見つめた。「お前には何かおかしなところがある、朔夜。」
朔夜は見つめ返した。
「ただの普通の冒険者ですよ。」
「違う。」ミラは首を振った。「俺は何年もギルドで働いてきた。初心者と経験者の違いは見分けられる。お前はそのどちらでもない。」
朔夜は答えなかった。
ミラは追及しなかった。
「ただ言っておくだけだ:気をつけろよ。」彼女はかすかに微笑んだ。「目立ちすぎるな。こんな場所では、目立つことは危険でもある。」
朔夜は静かに頷いた。
「覚えておきます。」
彼はギルドを出た。
外では、空がオレンジ色に変わり始めていた。
朔夜は広場の真ん中で立ち止まり、東の方を眺めた。
遠く彼方、見える範囲の外側に、何かが常に彼の注意を引いていた。
地図上の空白地帯。
アウレリアン諸島。
「……いつか、な」彼は静かに言った。
今は——
彼は宿に戻り、一晩の部屋を借りて、ベッドに横たわった。
システムの画面が彼の前に現れた。
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【ステータス】
名前:御宮司朔夜
レベル:1 → 2
HP:100
MP:100
EXP:120 / 200
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朔夜は目を閉じた。
「初日だな」彼はつぶやいた。「とりあえず生き延びた。」
窓の外では、見知らぬ星々が輝き始めていた。
【次回 第4話 — 「初めての村、初めての通貨」】
翌朝、朔夜はローナックへ戻り、村の生活についてより深く学ぶことになる。村人たちと出会い、税制を理解し、この世界が彼の想像ほど単純ではないことに気づく。しかしそのすべての背後で、彼は動き始めるための隙間——彼が動き出せる亀裂——を視界に入れ始める。
【次回に続く……】




