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②漂う大陸

対馬監視基地は、海の孤島だった。

巨大な洋上プラットフォーム。

旧式の海上油田施設を改修し、監視基地へ転用したものだ。

海風は強く、鉄骨は錆びていた。

だがここは、日本の“目”だった。


凛は制御室で衛星リンクを接続していた。

「アマテラス7、軌道補正開始」

モニターに東アジア全域が映る。

中国沿岸部。

赤く染まる放射線マップ。

韓国南部。

焼け落ちた都市。

北朝鮮北部。

無数の熱源。

燎が呟く。

「まだ人間がいる」

「……生きてる、って言えるのかな」


その夜。

警報が鳴った。


《不明船接近》

《不明船接近》


基地全体に赤色灯が回る。

外へ飛び出した燎が双眼鏡を覗き込む。

海上に、無数の船影。

漁船。

貨物船。

軍用艇。

寄せ集めの船団だった。


スピーカーから、男の声が響く。

『我々は黄海連盟だ!』

画像

韓国語。

中国語。

そして片言の日本語。

『我々は生存者だ! 入港を要求する!』


凛はモニター越しに、その男を見る。

ハン・ジソン。

痩せた顔。

鋭い目。

疲弊しながらも、異様な執念を宿した男。


通信が繋がる。

「こちら日本再生評議会所属、東雲凛」

『日本は生き残った』

「……」

『我々は見た。灯りを。電力を。都市を』

ハンの声は震えていた。

『子供たちがいる。食料が必要だ』

凛は一瞬、返答に詰まった。


だが燎が前へ出る。

「武装解除して投降しろ」

『無理だ』

「なら上陸は認められない」


沈黙。

そして。

『なら奪う』


直後。

爆音。

黄海連盟の船団からロケット弾が放たれた。

基地の鉄骨が吹き飛ぶ。

警報。

炎。

悲鳴。

燎が凛の腕を掴む。

「逃げるぞ!」

「でも基地が!」

「もう持たない!」


崩れる通路を走る。

背後で銃声。

海へ落ちる兵士。

炎上する通信塔。


脱出艇へ飛び込む瞬間、凛は振り返った。

対馬監視基地が燃えていた。

海の上で。

まるで、文明そのものの墓標みたいに。

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