【悲報】俺の胸の谷間が四次元ポケットになった件と、致死量の鼻血を誘発するあざといポーズ「にゃう♡」
「おおおっ! 早く開けろ、直樹!」
俺と直樹は目を輝かせ、ごくりと唾を飲み込んで、黄金の輝きを放つ宝箱の中身を見つめた。
伝説の武器か!? それとも使い切れないほどの金貨か!?
期待に胸を膨らませ(物理的にも今は異常に膨らんでいるが)、俺たちは息を飲んだ。
しかし。
光が収まった後、箱の底にポツンと転がっていたのは……。
「……え?」
「……水晶玉?」
ソフトボールほどの大きさの、ただの透明なガラス球のようなものだった。
「なんだよこれ、金貨じゃないのかよ……」
直樹ががっくりと肩を落とす。
「ま、まぁ、売り飛ばせば少しは金になるだろ。とりあえず持って行こうぜ」
俺もため息をつきながら言った。
「そうだな。じゃあシナ、それお前が持っててくれよ。俺、服がピチピチすぎてポケットに手すら入らないんだ」
直樹は、はち切れそうなTシャツの裾を引っ張りながら言った。
「はぁ? 俺だってこんなピッチピチのホットパンツに、そんなデカい玉が入るわけないだろ!」
「いいから頼むよ! 落としたら割れそうだし!」
直樹は水晶玉を俺に押し付けると、さっさと背を向けて神殿の出口の方へ歩き出してしまった。
「あ、おいっ! 押し付けんな!」
俺は両手で水晶玉を持ったまま、立ち尽くした。
(どうすんだよこれ。マジでしまう場所がないぞ……)
周囲を見渡しても、袋のようなものは何もない。
そして俺の視線は、ゆっくりと下へ……自分の『とてつもなく自己主張の激しい二つの山』と、その間にできた深く暗い『谷間』へと向けられた。
(…………いやいやいや! 嘘だろ!? アラサー男の俺にそんなことさせようってのか!?)
俺の心の中のおっさんが激しく抵抗する。
しかし、両手が塞がったまま歩くのはあまりにも不便だ。
(クソッ……背に腹は代えられない……!)
俺は顔を真っ赤にしながら、周囲に誰もいないことを確認し……その冷たい水晶玉を、シャツの襟元から強引に『谷間』へと滑り込ませた。
――ヒヤッ。
「ひゃうっ!?」
ひんやりとしたガラスの感触が、豊満で柔らかな胸の肉に挟まれ、俺の口から情けない悲鳴が漏れた。
だが、恐ろしいことにサイズ感はピッタリで、水晶玉は胸の肉にがっちりとホールドされて落ちる気配がなかった。
「おいシナ、何してんだよ。早く来いよ」
直樹が振り返った。
「ひぃっ!? な、なんでもない!」
「ん? お前、その水晶玉どこにやったんだ?」
「うぐっ! き、聞くな! いいから早くここから出るぞ!」
俺は胸の谷間から水晶玉が落ちないように両腕で胸の下を強く抱え込みながら、顔から火が出るほどの羞恥心と共に、直樹を追い抜いて猛ダッシュした。
***
俺たちが廃神殿の出口を抜け、再び夜の森へと足を踏み出した、その時だった。
「おっと。どこへ行くつもりだ、お前ら?」
――ガサガサッ。
暗がりの中から、不気味な声と共に複数の足音が響いた。
俺と直樹は足を止めた。
月明かりに照らし出されたのは、ボロボロの革鎧を着込み、粗末な剣や斧を手にした『野盗』の群れだった。
その数、ざっと十人。完全に俺たちを包囲している。
「おいおい、見ろよ。また新手のネズミが迷い込んだらしいぜ、ギャハハ!」
顔に傷のある野盗の一人が、手の中で鋭い短剣をクルクルと回しながら下劣に笑った。
「おい……見ろよ、あっちのネズミ。とんでもない『ご馳走』を持ち込んでくれたみたいだぜ……?」
別の野盗が、舌舐めずりをしながら俺の方を指差した。
「本当だ……。こんな夜更けに、あんな上玉のネズミちゃんが迷子とはな。俺たちが少しばかり『相手』をしてやろうか? ええ?」
十人の野盗たちの視線が、一斉に俺へと向けられた。
いや、正確には俺の顔ではなく……水晶玉を仕舞ったことで、さらに信じられないほど前方に突き出している『巨大な胸』へと、ギラギラとした欲望の目を向けていたのだ。
「ち、くしょう……」
俺の隣で、震える声が聞こえた。
直樹だ。
さっきオークをワンパンで粉砕した最強の勇者様は、今や顔面から滝のように冷や汗を流し、生まれたての子鹿のように足をガクガクと震わせていた。
「ま、マジかよ……最悪だ……完全に山賊の巣に迷い込んじまった……」
直樹が泣きそうな声で呟く。
(おいバカ! お前のステータスならこいつら指先一つで倒せるだろ!? なんで人間相手だと急に社畜のメンタルに戻ってんだよ!)
俺は心の中で親友に強烈なツッコミを入れた。
「ひひっ、怯えてやがる。男の方は殺せ! 女の方は傷をつけるなよ!」
リーダー格の男が下劣な笑みを浮かべ、野盗たちがじりじりと距離を詰めてくる。
「うぐっ……」
奴らの粘り気のある視線に、俺の背筋にゾクゾクと悪寒が走った。
(き、気持ち悪い……なんだよあの目……完全に『そういう目的』の目じゃねえか……!)
中身はおっさんであるにもかかわらず、俺は恐怖と生理的な嫌悪感でパニックに陥り、咄嗟に両腕を交差させて自分の胸を隠すように強く抱きしめた。
――しかし、その無防備で怯えたポーズが、野盗たちの理性をさらに吹き飛ばす起爆剤になってしまったことに、この時の俺はまだ気づいていなかった。
神様から押し付けられた『世界中の男を悩殺する絶世の美少女』というふざけた設定。
俺が彼らの視線を浴びた瞬間、その『男を狂わせるフェロモン』という恐ろしい神の呪い(祝福)が、完全に発動してしまったのだ。
野盗たちの鼻がピクピクと動き、奴らの顔つきが急に妙な方向へと変わり始めた。
そして、お互いを牽制するように睨み合いを始める。
「ゴホン。グループの主力として、俺があの女神を最初にもらうべきだろ……」
「待てコラ! 勝手に決めてんじゃねえ! 俺の獲物を横取りすんな!」
「お前ら図体がデカいだけで、股間はちっちぇえだろ! 俺の方が権利がある!」
「夢見てんじゃねえぞ、この小枝野郎! 巨根だろうがガリガリのお前があんな女神に触れていいわけねえだろ!」
「「「あぁん!?」」」
――ボカッ! ドゴォッ!
突然、野盗たちが内輪揉めを始め、血みどろの殴り合い(マウントの取り合い)に発展した。
「……は?」
「……え?」
俺と直樹はポカンと口を開けた。
さっきまで俺たちを殺そうとしていた悪党どもが、なぜかお互いの身体的特徴をディスり合いながらガチの喧嘩を始めているのだ。
その混乱の中、興奮した野盗の一人が直樹の方へと殴りかかってきた。
「ひぃぃっ! く、来るなっ!」
直樹は涙目でパニックになり、目をギュッと瞑ったまま、適当に拳を振り回した。
――ドゴォォォォンッ!!
「ギャベェッ!?」
直樹の拳がかすっただけで、その野盗は木々を何本もへし折りながら遥か彼方へと吹き飛んでいった。神様からもらった『最強のイケメン勇者』としての規格外のパワーだ。
それを見た他の野盗六人が激怒し、一斉に直樹へと襲いかかる。
直樹は「うわあああ!」と泣き叫びながら、無意識の勇者の力で彼らを次々と(目を瞑ったまま)迎撃していった。
俺は唖然として、親友の無双(本人は大パニック)を見つめていた。
(す、すげえ……あいつ、メンタルは社畜のままだけど、体はマジで最強の勇者じゃねえか!)
しかし、俺が直樹の戦いに気を取られていた、その時だった。
「どこ見てるんだい、可愛いネズミちゃん?」
「えっ!?」
ハッとして振り返ると、直樹との乱戦から抜け出した残りの四人の野盗が、いつの間にか俺の背後に回り込み、ニヤニヤと卑劣な笑みを浮かべていた。
「あの馬鹿な男が俺たちの仲間を片付けている間に、お前は俺たちがじっくり可愛がってやるよ、ギャハハ!」
(ヤ、ヤバい!! 直樹の無双に見とれて隙だらけだった!)
俺は血の気が引いた。直樹は少し離れた場所で別の野盗たちに囲まれ(て大泣きし)ており、俺を助ける余裕はない。
俺の腕力も体力も、運動不足のアラサー社畜のままだ。戦う術なんて一つもない。
四人の屈強な男たちが、俺を押し倒そうと腕を伸ばしてくる。
(どうする!? どうすればいい!? 何か武器……いや、俺には何もない!)
極限のパニックに陥ったアラサー男の脳が、ついに思考を放棄した。
俺は咄嗟に、両手を胸の前でギュッと組み合わせた。
そして、恐怖で涙目になった上目遣いのまま、懇願するように少し前かがみになる。
(※この動作により、谷間に挟まっていた水晶玉が押し出され、胸の渓谷がさらに強調されるという致命的な視覚効果を生み出していた)
俺は、無意識のうちに自分の口から信じられない言葉を放っていた。
「ち、近づかないでよぉ……にゃう♡」
…………。
…………。
…………。
時間が、止まった。
本当に、森の風の音さえも消え去るような、絶対的な沈黙の三秒間だった。
俺の目の前にいた野盗のリーダーが、信じられないものを見るように目を見開いた。
「う、うぐっ……か、かわ……可愛すぎ……」
――ブッッッッッッッ!!
次の瞬間、リーダーの鼻から、まるで間欠泉のように真っ赤な血が天高く噴き出した。
「あ、あばば……」
そのまま白目を剥き、地面にドサッと倒れ込む。
「ま、まさに……夢の女神……」
――ブバァァァッ!!
二人目の野盗も、大量の鼻血を吹き出して崩れ落ちる。
「こ、こんなの、理性が耐えられるわけ……」
――ブッ! ブッ!
残りの二人も、全く同じように致死量の鼻血を出して一瞬で気絶した。
「…………え?」
俺は呆然とした。
ドサッ! ドサッ! ドサッ!
振り返ると、なんと直樹と戦っていたはずの残りの野盗たちまでもが、今の俺の『にゃう♡』という声とポーズを見たせいで、全員鼻血を吹いて地面に倒れ伏していた。
たった一言。たった一つのあざといポーズで、十人の屈強な野盗が全滅したのだ。
「ウソだろ……俺、ただ泣きついて変な声出しただけだぞ……?」
俺は自分の両手を見つめ、ガタガタと震えた。
「シ、シナ……」
背後から、ひどく掠れた声が聞こえた。
見ると、親友である直樹が、フラフラとした足取りでこちらに歩いてきている。
「お、直樹! 無事だったか――って、お前も鼻血出てるぞ!?」
直樹は、両鼻からタラタラと赤い血を流しながら、焦点の定まらない目で俺を見つめた。
そして、親指をグッと立てて、言った。
「お前……マジで、危険すぎる……」
――バタッ!!
「な、直樹ィィィィッ!?」
俺を野盗から守るはずだった最強のイケメン勇者(親友)までもが、俺のフェロモンにあてられて、大量の鼻血と共に気絶してしまった。
静寂に包まれた夜の森。
大量の鼻血を出して倒れる屈強な男たちの中心で、極大の胸に水晶玉を挟んだ絶世の美少女(中身はおっさん)が一人、絶望の叫び声を上げていた。
「な、なんだよこれえええええええっ!? 一体どうなってんだよおおおっ!!」




