泣き叫ぶ親友が目隠し(物理)で無双して、金ピカの宝箱を見つけるまで
不気味な廃神殿の奥へと進むと、地下へと続く下り階段と、頑丈そうな石の扉が行き手を阻んでいた。
「なぁ、シナ。階段の脇に、なぜか使い古された『汚れた皿』がいくつも転がってるんだけど……誰かここに住んでるのか?」
「さあな。だが、警戒はしておいた方が良さそうだ」
俺たちは不審に思いながらも扉に近づく。直樹が何気なくその扉に手を触れた、その瞬間――扉が青白い光を放ち、ゴゴゴ……と音を立てて自動で開いたのだ。
(おいおい、ゲームでよくある『勇者しか開けられない扉』ってやつか? クソ神め、設定だけは無駄に凝ってやがるな)
しかし、感心している余裕はなかった。
扉の向こうに広がるミニダンジョンの闇から、グルルル……と低い唸り声と共に、数十匹のゴブリンとオークの群れが姿を現したのだ。
「う、うわあああああッ!? 出たあぁぁぁっ!!」
その瞬間、直樹は情けない悲鳴を上げながら、なんと俺の背中にガシッと抱きついて隠れやがった。
豊満な俺の胸に直樹の腕が当たり、俺の脳内に妙な緊張が走る。だが、それ以上に俺は怒りで目を丸くした。
「ほ、ほう! なんで俺の後ろに隠れてやがるんだ! 体だけ無駄にデカくなりやがって、この意気地なしッ!」
「む、無理言うなよ! 俺は昨日までただの社畜だぞ!? 戦闘経験なんてゼロだ! シナ、お前は学生時代に空手だかキックボクシングだか習ってただろ、なんとかしてくれよ!」
「はぁ!? お前、俺の今の姿を見て言ってるのか!? こんな質量(胸)の重い体で、まともに動けるわけないだろ! 遠心力で振り回されて自滅するわッ!」
絶体絶命の状況で、俺たちはギャーギャーと醜い言い合いを始める。
そんな俺たちを格好の獲物と見たのか、大きな棍棒を掲げたオークが足音を荒げて突進してきた。
「う、うわあぁぁ! もうヤケクソだ! まっ、前へ倣えぇぇぇッ!!」
直樹は恐怖のあまり完全に目を瞑ると、ヤケクソになって両拳を突き出しながら、前方のモンスターの群れへと突撃していった。
(あちゃあ……完全に終わったわ。直樹のヤツ、ただのサンドバッグになるぞ……)
俺はあまりの惨状を予想して、思わず両手で目を覆った。
――ズガァァァァァンッッ!!!
――バキッ! ドガッ! ボカッ!!
しかし、俺の耳に飛び込んできたのは、直樹の悲鳴ではなく、肉体が破壊される凄まじい爆音だった。
「……え?」
俺が恐る恐る指の隙間から目を開けると、そこには信じられない光景が広がっていた。
目を瞑って滅茶苦茶に拳を振るっているはずの直樹の動きは、まるで超一流の武術家のように流麗で、無駄が一切なかったのだ。
直樹が適当に繰り出したパンチ一発で、巨体のオークが木の葉のように吹き飛び、神殿の頑丈な石壁に叩きつけられてクモの巣状のヒビを入れている。
ゴブリンたちは、直樹の放つ風圧だけでゴミのように巻き上げられていた。
「…………」
俺は口をポカンと開けたまま、完全に開いた口が塞がらなかった。絵に描いたような、絵画のような呆け顔だ。
「……あれ?」
周囲の静寂に気づき、直樹がゆっくりと目を開ける。
自分の両手を交互に見つめ、それから不敵な笑み(イケメン補正付き)を浮かべた。
「わ、お。俺、マジで戦えてる……!?(ニヤリ)」
一瞬で自信をみなぎらせた直樹は、完全に勇者モードへと切り替わった。
「へいお前ら、かかってこいよ。一人ずつ、な」
そこからは一方的なワンサイドゲームだった。超絶イケメン勇者となった直樹は、残りのモンスターを凄まじいスピードで瞬殺していく。
最後に残ったのは、恐怖でガタガタと震え上がっている一匹のゴブリンだけだった。
直樹はそのゴブリンの前に立つと、フッと鼻で笑い、親指と人差し指をパチンと合わせた。
「お前にはこれな、ちびっ子」
ピシッ――ドガァァァンッ!!
ただの『デコピン』一発で、ゴブリンは音速の壁を突破する勢いで遥か彼方へと吹き飛んでいった。
「ふう、ちょっとしたウォーミングアップにはなったかな」
直樹は髪をかき上げながら、爽やかなポーズで俺を振り返った。完璧に俺に良いところを見せようとイキがっている。
「なぁ、シナ……さっきの俺の戦いぶり、どうだった? 惚れ直したか?」
「ま、まぁ……エホッ、コホン。……悪くないんじゃない(無表情。だけど、至近距離でのイケメンスマイルに、白い頬がほんのり赤くなる)」
「ふんっ、素直じゃないな。よし、あの奥にある宝箱を開けに行こうぜ! お宝があるかもしれない!」
直樹は再び嬉しそうに駆け出し、俺を置き去りにして最奥へと向かった。
(ったく、あいつの行動は本当に予測不可能だな……)
俺はため息をつきつつ、揺れる胸を両手で抑えながら後を追った。
最奥の台座の上には、古びた、しかし重厚な『宝箱』が置かれていた。
「お宝だ! 金ピカだ! 俺たち、これで大金持ちになれるぞ!」
「おおおっ! 早く開けろ、直樹!」
直樹が宝箱のフタに手をかけ、ゆっくりと持ち上げる。
その隙間から、彼らの目を眩ませるような【黄金の輝き】が、眩いばかりに溢れ出した。
俺と直樹は目を輝かせ、ごくりと唾を飲み込んで、その中身を見つめた――。




