【悲報】短パンがえっちすぎる件と、深夜番組みたいな俺の吐息
「おい直樹、俺をぶん殴ってくれ。これは絶対に悪い夢だ。目覚まし時計が鳴る前の、タチの悪い悪夢なんだ」
見渡す限りの草原のど真ん中。
俺は、超絶イケメン勇者になった親友に真顔でそう懇願した。
「む、無理だよ! そんな美少女の顔、俺に殴れるわけないだろ!」
直樹は、鼻にティッシュ(俺がポケットに入れていたもの)を詰めながら、ブンブンと首を横に振った。
「使えねえヤツだな! 貸せ、自分でやる!」
パァァァンッ!!
俺は容赦なく、自分の白い頬を全力でビンタした。
「いっっっっっっっっっっっっっつ!!?」
ジンジンとした熱と激痛が走る。
視界がチカチカして、生理的な涙がポロポロとこぼれ落ちた。
「痛い……痛すぎる……。嘘だろ、マジで夢じゃないのかよ……」
地面にへたり込み、俺は絶望に打ちひしがれた。
信じたくないが、現実だ。俺は絶世の美少女(胸が異常にデカい)になってしまっている。
「な、なぁシナ。とりあえず落ち着け。声も……その、なんかエロいし」
「あ? 声? ……あー、あー、テステス」
俺は立ち上がり、咳払いをして発声練習をしてみた。
以前の『おっさんの低い声』を意識して、腹から声を出したつもりだったのだが――。
『あぁんっ……テス、テス……♡ はぁ……♡』
「――――ッ!?」
俺の口から飛び出したのは、深夜の大人向け番組でしか聞けないような、甘く、とろけるような、極上の吐息交じりの声だった。
「うわああああっ! なんだこの声ええええっ!! 俺の喉にエロいお姉さんが住み着いてるぅぅぅっ!?」
「シ、シナ! 頼むから静かにしてくれ! また鼻血が……ッ!」
直樹が股間を押さえながら、新たなティッシュを探して慌てふためいている。
ダメだ。見た目も声も、俺の知っている『俺』から完全に書き換えられている。
俺は頭を抱え、再び地面にうずくまった。
「……とりあえず、ここにずっといても仕方ない。どこか街や人里を探そう。このままだと夜になって魔物とか出たらヤバいし」
直樹が、なんとか勇者っぽい(?)冷静な提案をしてきた。
確かにその通りだ。現実逃避している場合ではない。
「……わかった。歩くか」
俺はため息をつき、直樹と共にランダムな方向へ歩き始めた。
しかし、すぐに新たな『問題』が発生した。
俺も直樹も、元の世界で着ていた部屋着(Tシャツとハーフパンツ)のままだ。
直樹は背が伸びて筋肉質になったため、服がピチピチのツンツルテンになっている。
そして俺は――。
華奢な女の体になったことで、服のサイズ自体は少し緩くなったはずなのだが……。
「クソッ……さっきからこのパンツ、やけに股に食い込んで歩きにくいんだが……」
俺が履いていたハーフパンツは、豊満すぎるお尻と太ももの肉に引っ張られ、まるで極限まで短い『ホットパンツ』のようになってしまっていたのだ。
歩くたびに、太ももが擦れ、布が食い込む。
「んんっ……あーもう、気持ち悪いな……」
俺はお尻の布を引っ張って直そうと、腰をよじらせた。
――ピタッ。
ふと気づくと、俺の後ろを歩いていた直樹の足音が止まっていた。
「おい直樹、どうし――」
俺が振り返ると、直樹は顔を真っ赤にして、天を仰いでブルブルと震えていた。
(ヤバい……さっきからシナの後ろ姿がヤバすぎる……。あの食い込んだ布……白い太もも……揺れるお尻……。だめだ、俺の血液が全部鼻から抜け出て死んでしまう……ッ!)
「……俺が先頭を歩く!!」
直樹は血走った目でそう叫ぶと、猛ダッシュで俺を追い抜き、ずんずんと前を歩き始めた。
「は? おい、急にどうしたんだよ! 待てってば!」
親友の不可解な行動に首を傾げながら、俺は食い込むパンツを気にしつつ、彼の後を追いかけた。
***
――数時間後。
俺たちは、深い森の中で完全に足を止めていた。
太陽はすっかり傾き、辺りは薄暗くなり始めている。
「……なぁ直樹」
「……なんだい、シナ」
「完全に迷ったな、これ」
「……ああ、見事に迷子だ」
適当に歩き続けた結果、街どころか道すら見失ってしまった。
二人して途方に暮れていると、木々の隙間から、石造りの古びた建造物が見えてきた。
「おい、あれ……廃神殿か?」
「みたいだな。とりあえず、今日はあそこで夜を明かそう」
俺たちは疲労困憊の体を引きずり、その不気味で古い神殿へと足を踏み入れたのだった。




