第七十五頁 ― 同じ人間、でも誰もが同じように見えるわけじゃない(二)
日差しはいつものようにまぶしく、時折、風がこの場所をそっと吹き抜けていく。
他のクラスも、それぞれの場所に集まって食事をしたり、会話をしたりしている。
中には少し休む人もいる。
でも、なぜか、
今、F組は二つの場所に分かれている。
奇妙な空気が一人ひとりを包み込んでいる。
...
もうわからない。私にも、どうしてなのかわからない。
みんなはどうして急に喧嘩してるの?
ただの小さなトラブルなのに、
どうしてこうなっちゃったの?
どうしてツメコちゃんが途中で試合を棄権したの?
苦しい……息が詰まりそう……
だんだん、自分が何をすればいいのかわからなくなってくる。
...
ハックン……いつものように、早く来てよ。
...
...
でも、静けさの中で、
グループのみんながまだ目を合わせるのを避けていて、
誰も口を開ける方法がわからない時、
...
パタン.
ツメコちゃんは、顔を上げないまま、
手は、蓋を閉めた弁当箱をそのまま持ったままで、
でも、
「ねえ」
「みんな知ってる?」
「今日ね、私すごく嬉しかったの。」
「何人か、手強い相手と戦ったけど、結局勝った。」
「クラスのみんなが応援に来てくれた。」
「ハルくんも、昨日約束した通りに私の試合を見に来てくれた。」
「あの時は...本当に最高だった。」
「私...すごく嬉しかった。」
...
「でもね」
「勝った後、」
「わかってたの。」
「早く帰れば午後の試合前にもう少し休憩できるって。」
「男子たちも、私を早く戻そうとしてたし、」
「それもわかるよ。」
「少しでも時間を有効に使う。」
「クラスが優勢なら、それを活かさなきゃ。」
...
ギュッ.
ツメコちゃんが急に身を縮め、両手で自分の肩を強く掴む。
顔を膝に寄せて誰にも見られないようにして、
「でも...」
「でも...」
「なぜ...」
「なぜ...」
「あんなに大勢なのに、」
「誰一人...あの子に気づかなかったの...」
「今日...ハルくんも試合だったのに。」
...
...
「みんなわからないと思う。」
「あの瞬間...私が勝った直後に...」
「ハルくんがそこにいたの...手にはまだラケットを持って...」
「私の方へ近づいてきて...手を高く振って...顔にはまだ笑顔が浮かんでて……」
「みんなが私を囲んで...急いで押し戻そうとした時...」
「でも誰も……あの子をこっちに引き寄せようとはしなかった……」
...
「ハルくんはただそこに立ってた...一人で...私を囲む人垣の向こうに...」
「少しずつ...その腕が下がっていって...」
「笑顔も消えて...顔に残ったのは...あの目だけ...」
...
だんだん、私はわからなくなる。
ハックンはいつもクラスを助けてくれる人じゃなかったの?
ハックン...今日も試合の予定があったのに...
なぜ...誰もあの子を応援しに行かなかったの...
...
...
そして、みんながまだ何をすべきかわからない中で、
誰も音を立てず、
みんな目を逸らすか、スマホを見るだけだった時、
...
ガタッ!
「この連中、もうどうしようもないわ!」
「クラス委員長!」
「一緒に行こう!」
「今日はあいつらと話をつけなきゃ!」
コバヤシさんが立ち上がり、画面がまだついているスマホを強く握りしめる。
...
「どういう意味、コバヤシさん?」
シラカワさんが目を丸くして見上げ、手はまだ強く握ったまま。
...
「これを見ればすぐわかる!」
「最近クラスに入ってきた男子たち...」
「あいつら、何も考えてないの?」
「その上何人かの女子がわざわざ火に油を注いでるし!」
「好きなように言わせておくわけにはいかないでしょ!」
「もしハルが本当に聞いたらどうするの?」
コバヤシさんがスマホの画面をまっすぐシラカワさんに差し出す。
...
...
「わかった。」
「このまま続けたらよくない。」
「彼らの考え自体に反対はしないけど、」
「やり方は受け入れられない。」
そうして二人は去っていく。
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コツ......コツ……
彼らが行ってからしばらくして、
残った人たちも、もう何を話せばいいのかわからなくなった。
今さら雑談を続けても、何も変わらないし、
勝利の喜びもほとんど残っていない。
そして...
...
コツ......コツ……
「みんな...」
「ちょっと、いろいろあった。」
「いいことなのか悪いことなのか、もうわからない。」
コバヤシさんが戻ってきた。でもその顔には、何か私を不安にさせるものがある。
奇妙な悲しみが浮かんでいて、さっきまでの怒りはもう消えていた。
...
「とりあえず、」
「クラス全体で応援演技は棄権することに決まった。」
「みんなが一生懸命練習したけど、」
「ヤマザキさんがメインの支え役としていないと、」
「無理に参加しても意味がない。」
...
「だから今日の午後は、うちのクラスはもうほとんど競技がない。」
「早く帰ってもいいよ。」
...
変だ。
これは明らかにいい話なのに、
みんな安堵するはずなのに?
もう試合がないなら、
さっきの喧嘩も大したことじゃないはずなのに、
なぜ、
誰も...声を上げないの...
笑い声も、安堵のため息も一切ない...
...
「コバヤシさん。」
「質問があるの。」
「そんなにいい話なら...」
「ナツメはどこにいるの?」
「普通なら絶対に報告に来るはずでしょ!」
アサギリさんが顔を上げて、目を細めて前を見る。
...
「それも今言おうとしてたことよ。」
コバヤシさんが急に顔を伏せて、両拳を強く握りしめる。
...
「クラス委員長は……残ったクラスメイトたちと、生徒会を交えて話し合ってる。」
「棄権は私たちだけで決められることじゃないから。」
「向こうにも、クラスの点数を失うことになるんじゃないかと不満を持っている人が何人かいる。」
「それに今年の応援演技はかなり大きな点数を占めるし。」
...
ギュッ.
「だから...」
「生徒会長が提案を出したの。」
「B組が深刻な人手不足を訴えていて、」
「何クラスにも人を借りに行ったけど誰も譲らなくて、」
「だから...F組が一人でもB組に出してくれるなら……」
「B組は自分たちの点数のかなりの部分を……F組に譲る……」
「もちろん...向こうのみんなはもう同意してる...」
「本人も...同意してる...」
「どうせ...」
...
ガシッ!
私が何が起きたのか理解するより早く、
ミズノさんが飛びかかるようにして、コバヤシさんの襟を掴んだ。
「冗談でしょ、コバヤシさん?」
「冗談だって言って。」
「男子たちは本当に全部さらけ出すのが好きなの?」
「必要なら...」
...
「あいつらが全部言ったの。」
コバヤシさんはそこに立ったまま、顔はもう諦めたみたい。
...
「はあ。」
...
「向こうの男子たちが全部言ったの。」
「大きな声で、はっきりと。」
「生徒会まで気まずいほどに。」
「でも今はそんなことどうでもいい。」
...
「ハルは……その場にいたの……その瞬間に。」
「全部聞いたの...そして...」
「何も言わず……何の反応も見せず……」
「あの虚ろな目が……昨日会った時よりも、さらに深くなってた。」
コバヤシさんが、ギリッと歯を食いしばる。
...
「そして最悪なのは...この提案が出た時に...」
「あいつらが喜んで...満足そうな顔をして...」
「誰一人...あの子に気づかなかった...」
「まさにそこに立ってるのに...」
...
「つまり、」
「私たちは...トガミさんを売ったの...」
「たった……どうでもいいような、わずかな点数のために……」
私のすぐ後ろのピンク髪の子が、完全に私の背中に隠れている。
...
何...売るって...誰を...
何のために売るの...
あの仮想のボード上のわずかな点数...それとも他のどうでもいい物のため...
普段はいつもみんなの勉強を手伝ってくれるのに...
誰もやりたがらない仕事をいつも頑張ってやってくれるのに...
なぜ...なぜ...
なぜ……このクラスにはこんなにたくさん人がいるのに……
なぜ...ハックンなの...
...
「とりあえずこれだけ。」
「わからないことがあったら、クラス委員長が帰ってきてから聞けばいい。」
「私はハルのところに行く。」
「午後は準々決勝だから。」
「誰も応援に行かないなら一人で行く。」
コバヤシさんは私たちの方に背を向けて、
...
...
コツ、コツ……
「もしあの時...」
「あの時……先輩たちがハルを庇ってくれてなかったら……」
「たぶん...今のあの子は...」
...
どうして今...こんなに無力なの...
何かして...何か言って...
立ち上がって...ハックンのところに行って...
あの子は、私が一番助けてほしい時に、いつもそこにいてくれたのに……
誰に頼まれなくても、いつもそばにいてくれたのに……
なのになぜ...こんな時に...
あの子が一番人を必要としてる時に...誰もいないの...
...
何でもいいから……何かしなきゃ……
アマミヤ・ミヤキ。




