第七十一頁―体育祭の準備
クラスの看板の下、見慣れた扉の向こう。
また一つ、いつもと変わらない朝がやってきた。
空っぽだった椅子も、今ではすべて誰かの鞄で埋まっている。
…
ワイワイ…ワイワイ…
生徒たちはいくつもの小さな輪を作り、集まっていた。
腕を高く掲げ、誰もが満面の笑みを浮かべている。
「スピード系の種目はうちのクラス勝ち確だろ!」
「うちには元々陸上で実績のある奴が揃ってるしな」
「それでも油断はできないぞ」
「他のクラスに何がいるかなんてわからないだろ?」
…
バンッ!
教室の一番後ろ、窓際で、
小さなグループの中にいた男子生徒の一人が、突然机を強く叩いた。
「このままじゃ全然ダメだ」
「この調子だと他のグループに負けるかもしれない」
「決めた!」
「今日の午後は全員残って練習だ!」
「体力系の種目は絶対に勝ち取るぞ!」
…
ひそひそ…ひそひそ…
女子たちが一台のスマホを囲んで集まっている。
「とりあえずこの感じが一番合うと思う」
「あとで下校したら店に行って聞いてみようよ」
「そこで決めちゃってもいいし!」
「賛成!」
…
…
ふっ
「みんな…すごくワクワクしてるみたいだな」俺はその光景から目を離せなかった。
「俺も負けていられない」
「今夜父さんは暇かな?」
…
…
ガラッ…
教室の扉が突然、勢いよく開いた、ハヤマ先生が目を細めて周りを見回す
そして、手には奇妙な白い紙の束を抱えていた。
「まったく。この連中は…」
「朝っぱらからそんなに騒がしいのか?」
「始業のベルが鳴ったのも聞こえなかったのか?」
…
ガタガタッ…ガタガタッ…
突然言葉が途切れる
教室中の小さなグループが、一斉に散っていく。
一人、また一人と、自分の席へ駆け戻っていった。
…
コツ...コツ...
「普通の日なら…」ハヤマ先生は教卓へと歩み寄っていった。
「一人ひとり名前をリストに書いて罰を受けていたはずだ」
「まあ…」
「学校は、タダ働きしてくれる奴らをいつでも歓迎するがな。」
…
「…」生徒たちは一斉に肩を落とし、身を縮めた。
…
ドサッ.
「だがもしお前たちが協力してくれるなら…」ハヤマ先生が紙の束を机に置く
「今日は何もなかったことにしてやる」
…
ほっ.
「…」目が徐々に上がり、それに続いて顔が徐々に緩む
「よかった…」
「今度は重い罰だと思ってたぞ」
「さっきベルが鳴ったの、誰か聞こえたか?」
「俺を見るなよ、俺も何も聞こえてなかった」
「それはいいから、今はハヤマ先生の言うことをやれよ」
「結局俺たち何をすればいいんだ?」
…
パンッ!
「簡単に言うと…」ハヤマ先生が手を強く叩く
「自然科学部のカワサキ先生が小さな研究をしている」
「彼女から、各教師にこの用紙の問題を生徒たちに解かせてほしいと頼まれているんだ。」
「今からこれをやってくれる奴は……」
「さっき何も悪いことをしていなかったことにしてやる」
「質問はあるか?」
…
「…」すべての目が今やハヤマ先生に集まる
…
スッ
「よろしい」ハヤマ先生が小さな紙の束を各列に分けていく
「この問題用紙を回して、一時間以内に終わらせろ!」
…
「そして先に言っておくが…」ハヤマ先生の目が教室を見回す
「今回の結果はお前たちの試験の点数には影響しない…」
「だがある人間の努力の結果には大きく影響する」
「だから全力でやれ」
…
「お互いに答えを聞いたり、教えたりするな。」ハヤマ先生の目が細められ、まっすぐ俺を向く
「隣がどこまで進んだかも気にするな」
「特に…」
「トガミさん」
…
「は…はい…」わずかに顔をしかめ、体を少し後ろへ引く
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[一時間後]
…
トントン…
「クラス全員提出したな?」ハヤマ先生が紙の束を軽く机に叩き、目を回す
「まだ提出していない奴はいないか?」
…
バッ!
「先生!」レンが勢いよく手を挙げ、満面の笑みを浮かべた。
「もう一人も残ってません!」
「こんな簡単な問題なら俺でもできましたよ!」
…
コツ、コツ……
「そうなら…」ハヤマ先生が部屋の扉の方へ進む
「今から昼休みまで…」
「今から昼休みまでは、クラスで勝手にやっておけ!」
「朝みたいにうるさくするなよ!」
…
「…」生徒の影が一斉に体を伸ばし、目がまっすぐハヤマ先生を追う
…
コツ……
一歩が部屋の外に出た瞬間、ハヤマ先生が突然止まる
背中をこちらに向けたまま、ハヤマ先生が静かに口を開いた。
「お前たち…」
「言い忘れていた…」
「この問題用紙の点数は…」
「今回の実力評価テストの結果として使われる。」
…
スッ……カチャッ。
部屋の扉がまた一度閉じられる
ハヤマ先生の姿が今や部屋から消える
中に残された全員が、まだ少し体を硬直させている
…
へぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!
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それからしばらくして、学校の敷地内の別の場所。
廊下の先には、他のどの扉よりもひときわ大きな木製の扉があった。
そのすぐ脇には、「校長室」と書かれたプレートが掲げられている。
…
部屋中、両側に並べられた長い革張りのソファには、すでに何人もの人が座っている。
中央には長い木のテーブルがあり、まだ湯気の立つお茶のカップが並んでいる
その奥には大きな机があり、一人の男が頬杖をつきながら周囲を見回していた。…
カチャ……
「失礼します!」ハヤマ先生がゆっくりと部屋に入る
…
目がハヤマ先生に集まる
「遅いですよ、ハヤマ先生」
「会議はもうかなり前から始まっています」
「F組からここまでせいぜい5分でしょう」
「まさか来る前に学校中を巡回してから来たわけではないですよね?」
…
キュッ.
ハヤマ先生は白い紙の束を、「1-F」と書かれた封筒へそっと入れた。
そのまま封筒の口紐をゆっくりと結び、目がわずかに細められる
「皆様、ご容赦ください」
「いずれにしてもすべて私の責任です」
「そのまま放っておくわけにはいきませんでした」
…
トンッ
「構いません」大きなテーブルの男が指の先を軽く叩く
「どうせハヤマ先生は、ほとんどすべて把握しているのでしょう。」
「では本題に入りましょう」
…
…
コホン
「ご存知の通り…」男が軽く拳を口に当てる
「今年の体育祭が近づいてきました。」
「いつものように、警備を確実にするために…」
「警察にも警備の支援に入ってもらうほか……」
「先生方には常に警戒を怠らないようお願いしたい」
「生徒たちが美しい思い出とともに大会を楽しめるよう安全を確保してほしい」
…
( ̄▽ ̄)ニヤリ
「同時に…」男の目が細められる
「去年のような過ちを犯さないよう…」
…
ボソッ…ボソッ…
「去年は本当に残念だった」
「我々の準備の労力が三年生にすべて台無しにされるとは」
「やっと数日面白いものを見られたというのに…なのに…」
「去年のように手加減しない方がいい」
…
スッ
「だが同時に、やりすぎないようお願いしたい」男が両腕を大きく広げる
「そして観客にとっても楽しめる内容であるよう、十分に配慮してほしい」
…
(ΦωΦ)
「…」目がまっすぐ男を向く
…
「結局のところ…」男の口元に、かすかな笑みが浮かんだ。
「生徒である以上」
「学ぶときは全力で学べ」
「遊ぶときも全力で遊べ」
「そして恋も……一線を越えない限り、あの子たちには思う存分楽しんでもらえばいい」




