第六十三頁ー静かな昼休み
トン…
周りのすべてが、再び元の位置に戻る
教科書の山が、机の隅に綺麗に置かれ
小さな紙切れ一つ一つが、別の山に分けられる
…
ガララ…
内側から、ミズノが開いたままの扉へ向かって歩いていく。
気絶した二人を肩に担ぎ、目がぐるぐる回り
顔は真っ赤、頭の上にはまだ煙が立ち上っている
…
グッ…
「ハッチのこと、少し見ててくれる?」ミズノが教師の机の方を軽く振り返る
「この二人、ちょっと頭冷やしてくるから。」
…
「もちろんいいわよ!」アサギリが軽く頷く
「ゆっくり行ってきて!」
「私もちょうどご飯食べようと思ってたところ!」
…
「ありがとう、クラス副!」ミズノが微笑み、目を細める
「他の人に頼むと安心できないから!」
...
ズルッ…ズルッ…
「さあ…行くわよ…この二匹の猿ども!」ミズノが出口の方へ体を向け、両腕で二人を引きずりながら
「結局…このメスザルども…」
「何食ったら…こんなに重いわけ…?」
「絶対…このこと忘れないから!」
…
…
ガララ…
アサギリが静かに歩み寄り、教室の扉をゆっくり閉めていく
周囲にはもう誰も残っていない
カーテンも揺れるのを止め
小さな囁きが、教室の中に響く
「ミズノさんって、見た目通りじゃないわね。」
「私がだったらもうお手上げよ!」
…
「でも…」アサギリが徐々に、教師の机に長く横たわる背中に振り向く
「ハッチ…いつから…」
「あの二人、そんなに親しくなってたの?」
…
フルフル…フルフル…
「まあ、いいか。」アサギリが何度も首を振る
「誰にだって自分の人生があるんだし!」
「余計な詮索なんてしなくていいわ!」
「まずは自分のやるべきことをしなきゃ!」
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スッ…
机がゆっくり共通の列から離れる
椅子が静かに引き寄せられる
そして一人の少女が、教師の机の真正面に黙って座る
…
パカッ…
目の前で、質素な弁当箱が開かれる
「いただきます!」アサギリがそっと手を合わせ、目を閉じる
…
…
教室に風一つ吹かず
陽光はもうこの部屋に存在しない
音一つ響かない
ただ一つだけ…
…
ヒョイ…ヒョイ…
箸が一回一回動くたび、白いご飯が少しずつ減っていく
一つの背中が、静かに教室を見回している
教師の机の上では、一つの体が微動だにしない
…
コト…
「ごちそうさまでした。」アサギリが空になった弁当箱の蓋を静かに閉じる
...
...
キョロ…
少しずつ、アサギリが教室の中を見回す
「もう、半期も経っちゃったんだね。」
「まだ初日のことみたいに感じるのに!」
…
「まさか、私がこんなところにいるなんて。」アサギリの唇が小さく囁く
「何の才能もない私みたいな人間が。」
「ただひたすら頑張ることしかできないのに。」
「夢みたい…」
…
コト…
「本当はね…」アサギリが軽く頬杖をつき、出口の方へ顔を向ける
「入学初日から…」
「私は思ってた…もしかしたら…」
「すぐにこの学校から去ることになるんじゃないかって!」
…
「でも…」アサギリの視線が徐々にハルの方へ細まる
「君のおかげで…たくさんの人が去らなくて済んだ!」
「厳しい先生の授業も…君が一言声をかけるだけで急に穏やかになった…」
「重い授業の日も…もう難しく感じなくなった…」
…
スッ…
「さっきもそうだった!」アサギリが黒板の方をチラリと見て、唇を軽く微笑ませる
「もし君が来てくれなかったら…」
「きっとイシカワさんが熱心に指導してて」
「みんながイベントでみんな大変なことになってたわ…」
…
…
「ねえ、トガミさん。」アサギリの顔が少し伏せられる
「知ってる?」
「入学したばかりの頃から…」
「私はもう気づいてたの。」
「君と…このクラス…」
「君だけ、このクラスにいる人じゃないって思ってた。」
...
「本来…君のいるべき場所は…」アサギリがハルの方をチラリと見る
「少なくとも…A組か、それ以上…」
...
「…」ハルの体は微動だにしない
...
ふっ…
「私、あの人たちに会ったわよ!」アサギリがハルに向かって優しく微笑み、目を細める
「会議のたびに会うの!」
「あの人たち…本当に普通じゃない…」
…
ふっ…
「それとも、私たちの能力がまだ足りないのかな?」アサギリが首を軽く傾ける
…
…
ギュッ…
「ねえ、トガミさん。」アサギリの顔がさらに伏せられ、手を強く握りしめる
「知ってる…? 私たちがみんな遅刻した初日…」
「ただ一人…君だけが時間通りに来た…」
…
ギュッ…
「あの日…私…」アサギリの指が次第に強く絡み合う
「あ、いや…最初の日から思ってた…」
「クラス副…それかクラス委員…」
「本来…君がやるべきだったのに…」
「私みたいな人間じゃなくて…」
…
ギュッ…
「ナツメでさえ、本当はやりたくなかったのに…」アサギリの顔が徐々に歪む
「でも…あの子はちゃんとやってる…」
「誰もが認めてる…上位クラスにいる人たちでさえ…」
…
「なのに私…一番簡単なことさえ…」アサギリが手のひらを目の前に広げる
「弱い子たちに教えること…資料の準備…」
「ただ単に…教室がさっきみたいな状況にならないように…」
「私…何もできなかった…」
...
うるっ…
「やっぱり…私は役立たずなんだ…よね?」アサギリの目尻に小さな涙が溜まる
「みんながいつも言ってたように…」
「どれだけ頑張っても…」
「才能のない人間は…何もまともにできない…」
「本当に…」
…
「ダメな人間だよね?」アサギリの視線が真正面からハルに向けられる
「トガミさん?」
…
…
なで…なで…
「そんな風に…言うなよ…」ハルの腕がそっとアサギリの頭に触れ、唇が小さく動き、目を固く閉じる
「君は…自分のやり方で…頑張ってる…」
「他の奴らが何て言おうと…関係ない…」
「ただ…君が歩き続ければ…」
「それだけで…十分だ…」
「もしまだ辛いことがあったら…」
…
「…」アサギリの目が大きく見開かれ、体が凍りついたように固まる
…
…
ガラッ!
「おいハル!」レンが教室の扉を強く開ける
「起きたか?」
「美味いもん買ってきたぞ!」
…
ギギギ…
「…」アサギリがゆっくり扉の方へ顔を向ける
…
コツ…コツ…
「結構いろいろ見つけたぞ!」シラカワが白い袋を手に教室に入ってくる
「早く顔洗って一緒に食べ…」
「……よう…」
…
「俺はずっとそばにいる…」ハルの唇が小さく動く
「どんなことでも…どこにいても…」
「たとえ君が追い払っても…」
「俺は…そこにいる…」
…
「…」空間全体が凍りつく
すべての音が突然止まる
…
…
えへへ…
「シノミ~」ハルの唇が小さく微笑む
「今度は…君が追い払う番…」
…
はぁ…
「このハルってやつ!」レンがハルの手をアサギリの頭から引き剥がす
「寝てても他人に迷惑かけるなんて!」
「家でも相当苦労してるんだろうな、お前!」
…
ふぅ…
「なるほどね。」シラカワが顔を少し伏せ、目を閉じる
…………
そっ…くいっ…
「シノミったら…」ハルがレンの腕を何度も引っ張る
「ずるいぞ…もう罰を受けろ…」
…
グググ…
「早く離せって!」レンがハルの顔を何度も押し返す
「人違いだ、ハル!」
…
…
コツ…コツ…
「さっきの女の子たちはどこ?」シラカワがアサギリに近づく
「どうして急にあんた一人に任せたの!」
…
あはは…
「それは…」アサギリが軽く目を閉じ、微笑む
「いろいろあって…今…」
「頭冷やし中よ。」
...
「頭を冷やす?」シラカワが首を傾げ、目を丸くする
「まあいいわ。」
「見ての通りあの子がこんな状態だし、あんたも大変だったでしょ!」
「先に休んでて、クロミ!」
「ここは私とコバヤシさんに任せて!」
…
「大丈夫よ。」アサギリがハルの方に視線を向ける
「どうせ私はただここに座って見守ってただけだし。」
「別に疲れてないわ!」
「でも…確かに…ちょっと…」
………
グググ…グググ…
「ハル、早く起きろよ!」レンが目を細め、腕でハルを何度も押す
「こんなスキンシップいらねぇ!」
「他の奴にやれ!」
…
グイ…グイ…
「シノミ…シノミ…」目を固く閉じたまま、ハルの両手がレンを引き寄せ続ける
「今度こそ…逃がさない…」
………
しーん…
「シノミ…?」シラカワが顎に手を当て、首を軽く傾ける
...
「どうしたの、ナツメ?」アサギリが体を傾ける
...
「あの名前…なんか聞き覚えがあるわ…」シラカワが周りを見回す
「確か…この学校に…」
「同じ名前の人が…」
「どのクラスだっけ?」
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グググ…グググ…
「そういうのどうでもいいだろ!?」レンが後ろに体を引こうとし、顔を歪める
「早く助けてくれよ!」
…
ぐいぐい…ぐいぐい…
「…」ハルの腕がますますレンを引き寄せる
…
「ったく!」レンが腕を高く上げ、顔をしかめる
「後で恨むなよ、ハル!」
バシッ!
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んぅ……んぅ……
奇妙な感覚が全身に広がる
ぼんやりした映像が徐々に消えていく
目の前に広がるのは、馴染みの教室の光景
…
さす…さす…
少しずつ、俺は体を起こす
頭をゆっくり回して周りを見回す
すぐ近くの影たちに視線を向け
喉が、無意識に言葉を紡ぐ
「おはよう。」
…
「おはよう……じゃねぇよ。」




