第五十五頁ー甘い殻の中
タップ…タップ…
カーテンは今や微動だにせず
木の枝も少しも揺れず
紙の束が机の上に乱雑に散らばり
緑髪の少女だけが立ち上がっている
両手を胸に当て、瞬きひとつせず
……
コン…コン…
「結果はもう十分に明らかだと思うが。」紙束を机に軽く揃える、目を閉じる
「今回のテストに基づいて……」
「正確性だけでなく、速度も。」
「戸上さんは明らかに……」
……
ズッ
「もう一度考えてください!」少女は男の方へ体を向ける
「そんな判断、不公平すぎます。」
「もし今年の初めからの全科目の点数で見るなら……」
「私とあいつ、ほとんど差なんてないじゃないですか。」
「その後の補習テストの結果も……」
「私、全部満点だったじゃないですか!」
……
コツン
「否定はしない。」男は紙の束を置き、目をゆっくり開ける
「しかし」
「理論と実践は別物だ。」
「片方だけ優れているだけでは……」
「選抜クラスにふさわしいとは言えない。」
……
すっ…
「あの……」私はゆっくり手を挙げ、視線を少し下に落とす
「こんなこと言うのは変かもしれないですけど……」
「私……よくわからないんです……」
「選抜クラスって……」
「普通クラスと少し違うだけじゃないんですか?」
……
ドン!
「冗談でしょ!?」緑髪の少女は机を強く叩き、体を曲げて私に迫る
……
「えっ!」私は体を縮め、肩を大きく震わせ、全身を横に向ける
……
ギュッ…
「わかってるの……?」少女は拳を強く握り、私を真正面から睨む
「どれだけの努力……どれだけの苦労……」
「どれだけの競争を勝ち抜き……」
「どれだけの夜を本に埋もれて……」
「やっとあのクラスに入れたと思ってるの!?」
……
「私……」私の目が徐々に細くなる
……
ハハハ…
「……」男は目を細めて私を見、唇に笑みを浮かべる
……
「……」私たち二人は同時に動きを止め、顔を男の方へ向ける
……
「知らないのも無理はない!」男は軽く体を傾ける
「奨学金制度で入学した生徒には……」
「その情報は普通、伝えられないからな。」
……
コン
「いいかい、戸上さん。」男は肘を机に付き、両手を組み合わせる
「もし君が選抜クラスの生徒になったら。」
「まず、校舎内のどこへでも行ける特別権限が得られる。」
「生徒も教師も立ち入り禁止の区域も全て。」
「学食では特別優先権。」
「教室は最新技術が揃い……」
「パソコンも完全自由に使えて、用途について制限はほとんどない。」
……
「次に――」男は二本の指を軽く掲げる
「学校が持っている全ての資料にアクセスできる……」
「外部の学習機会があれば優先的に通知が来る……」
「学校と提携しているどんな施設にも見学可能。」
「スパやジムなどのサービスも完全無料で利用できる。」
……
キラッ…キラッ…
「……」私は思わず目を見開いた。、唇が少し開く
……
「そして最後に――」男は三本の指を高く掲げる
「学費は全額免除されるだけでなく。」
「選抜クラスにいる限り毎月……」
「学校から各生徒にちょっとした褒賞が出る。」
……
「他にもいくつかの特権があるが……」男は手を机の下へ伸ばす
「それは三年生になってからの話だ……」
……
スッ…
「さて――」男は青と白のカードを前に差し出す。波のマークが入っている
「この機会を掴むか?」
……
スー…
「……」私はゆっくり立ち上がり、手をそのカードに伸ばす
……
バタバタ…バタバタ…
「待って待って待って!」緑髪の少女は私の目の前で手を激しく振る
「何しようとしてるのかわかってないでしょ!?」
「もしカードを受け取る……」
「そのカードを……」
……
スー…
「……」私はカードの方へさらに進む
……
「そのカードを取ったら……」少女は顔をあちこちに向ける
……
スー…
「……」私の指はもうカードの端に触れそうになる
……
「そのカードを取ったら……」少女は体を縮め、隅に寄る
「Fクラスのみんなとは――」
「もう二度と会えなくなるのよ!」
……
ピタッ
私の指が止まり、頭がゆっくり少女の方へ向く
「今……」かすれた声が漏れる
「何て言った……?」
……
「ただの些細な条件だだ。」男はゆっくり目を開ける
「優秀な生徒が下位の生徒に縛りつけられていたら……」
「最大限の力を発揮できるわけがないだろう!」
「理解できるだろう?」
……
「私……」喉が凍りついたようだった
……
……
スッ…
「すみません。」私はゆっくり手を引く
「選抜クラスは確かに魅力的ですが……」
「ですが……」
「少し考える時間をください。」
……
……
はぁ…
「……」男は顔を手で覆い、額を机に預ける
「できる奴はやりたがらず……」
「まだ足りない奴は必死に欲しがり……」
「どうしたらいいんだ……」
……
「そうだ。」男は唇を小さく動かす
………
カリカリ…カリカリ…
今、机の上には大きなノートが広げられている
男はノートを何度も見ながら
手を止めず小さな紙切れに文字を書き
それを次々と小さく折り、積み上げる
……
「……」私たちは目を丸くして男を見つめる。
……
サラッ…サラッ…
「ちょっとしたゲームで決めることにしよう。」男は折った紙片を私たちの前に広げる
……
「ゲーム……」私の唇が小さく動く
……
「……ちょっとした?」緑髪の少女は少し首を傾ける
……
「今からこうやって決めよう。」男は腕を広げて紙片を囲む
「目の前にある紙には……」
「……現在Fクラスで成績下位生徒たちの名前が書いてある。」
……
「二人への課題は――」男は目を細めて私たちを見る
「気になった紙を一枚選びを一つ選び……」
「そこに書かれた名前の生徒に勉強を教えることだ!」
「もし自分が教えた生徒が……」
「相手が教えた生徒より高い結果を出せば……」
「その勝者が、この特権を手にする。」
……
「?」私たち二人は首を傾げ、瞬きもせずに見つめる
……
「要するに――」男は緑髪の少女の方へ手を向ける
「もし石川さんが教えた生徒が……」
「戸上さんが教えた生徒より優秀なら……」
「君は選抜クラスへ戻れる。」
……
「……」石川さんは小さく笑みを浮かべた。
……
「そして逆に――」男は腕を私の方向へ向ける
「もし戸上さんが教えた生徒がより良い結果を出したら……」
「君が選抜クラスに入ることに、もう迷う必要はない。」
「違うか?」
……
「……」私の視線はゆっくり床に落ちる
……
「もちろん無理強いはしない。」男はカードを机の下にしまい、窓の方へ背を向ける
「二人がその気がないなら……」
「出口はすぐ後ろだ。今の話はなかったことにしよう。」
「だが――」
「受けるつもりなら。」
「どうすればいいかはもうわかっているだろう。」
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大きな扉の前では、二つの影がまだ耳を押し当てていた。
スマホの光が顔を照らす
眉をひそめ、
目を細めながら――
……
タタタッ…タタタッ…
指は止まることなく画面の上を走る。
チャット画面に新しいメッセージが表示される
「緊急。」
「15分後に完全削除。」
「戸上 春。」
「……もうすぐ選抜クラスへ入る。」




