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召喚者達はその異世界で  作者: 八日園 啓地
獣たちの夜戦
71/143

70 その夜戦、暁まで

***

 「サキ、大丈夫?」

 「平気よ。少し休んだから。それにみんなを待たせるわけにはいかないしね」

 イノシシとの戦いはあっけない形で幕を閉じた。最後はこちらが圧倒していたが、どうにも実感がわかない。

 それは俺が追い詰めたわけではないし、予想外な事態にあったからだと思う。

 人の姿をしたイノシシの死体は荷台に積まれていた。

 騎士たちは馬に乗って、荷台を引いている馬を囲む陣形で帰路につく。

 「ん? なんだあいつ?」

 馬に乗って(俺はサキと二人乗り)街に入ると黒いローブをまとった人物が進行方向を塞いでいた。

 それに気づいた騎士が声をかける。

 「おい、あんた! 危ねぇからそこどきな!」

 しかし、その黒いローブは退かない。

 何も言わずに突っ立ている。

 「ねぇ、あの格好……」

 「ああ、もしかして……」

 前にいるサキが俺に小声で確認する。

 間違いなく避難勧告を出された街の者ではないだろう。

 サキと俺はその黒ローブに見覚えがあった。

 「みんな、一旦……!」

 「獣畜生如きがぁ……!」

 サキの指示に被せる形で黒ローブが声を出す。

 「天才(オレ)に指図してんじゃねぇ!」

 その怒声を合図に周りの建物の屋根から黒ローブの集団が現れた。完全に囲まれている。

 その全員が顔のない仮面を付けていた。

 騎士たちの緊張が一気に高まる。

 「……また会いましたね」

 サキが道を塞いでいる黒ローブに声をかける。

 「ん? ああ、あの時のメスか。よく無事だったなぁ」

 顔のない仮面たちが馬鹿にしたような笑い声をあげる。

 「今度は何の用ですか? お友達も連れてきたところ申し訳ないのですが、私たちは急いでいるので」

 「おいおい、つれないねぇ。まあ、こっちもお前らには用はないよ。要件はただ一つ。その荷台にあるモノを渡してもらおうか」

 少なくともこんな手段をとる連中に渡すものなんかないのだが、今戦闘になればこちらの不利だ。

 サキや騎士たちはイノシシ戦で疲労困憊(こんぱい)で、聖騎士のハチさんは一足先に離脱している。

 ぱっと数えたところ、こちらの方が数では勝っているが、厳しい戦いになるだろう。

 サキは周りの騎士たちと視線を交わして軽く頷く。

 「……カケル、馬を降りるわよ」

 「え? お、おう」

 サキは馬を降りて荷台に向かう。俺も急いで追いかける。

 顔のない仮面から勝ち誇ったような笑いが聞こえてきた。

 「荷台を渡すふりして近づいて、ギリギリのところで加速してください。連中は私たちが引き受けます」

 サキが荷台を引いている馬に乗っている騎士にそう告げる。

 「……了解であります。ご武運を」

 サキはその言葉に軽く頷いて俺を見る。

 「ごめん、カケル。荷台に乗って護衛をお願いね」

 俺も戦うよ。

 そう言えるほど強くない俺は黙って頷いてサキの指示通り荷台に乗る。

 俺とソウルビーストの約束は魔物の討伐であって謎の集団との戦闘ではない。それを考慮してサキは俺が参戦することを避けたいのだろう。

 護衛役という建前で逃すようだ。

 前の列にいる騎士たちが自分の馬をどかす。

 「お、なんだ。随分と物分かりがいいじゃあないか」

 道を塞いでいる顔のない仮面は愉快そうに笑う。

 屋根の上にいる連中も荷台に注目していて騎士たちのことを見ていない。

 だから馬から降りている騎士が数人いたとしても気づかない。

 「今です!」

 サキの合図と共に馬が嘶くのが聞こえてきた。

 「なにっ……!?」

 突如荷台は速度を上げて街を駆ける。

 すれ違いざまに顔のない仮面が地べたを転がっているのが見えた。急に速度を上げた馬に面食らって飛び退いたのだろう。

 「チッ……おい! なんとかしとけよ!」

 「……命令すんな」

 道を塞いでいた黒ローブが喚くように言った後、気だるげな声が微かに耳に届いた。

 刹那、大きな衝撃が上から降ってきた。荷台が大きく傾く。

 「おわっ……!?」

 俺は何も抵抗できずに放り出されてしまい、腰を強かに打つ。

 荷台を引いていた馬は驚き、騎手を放り捨ててその場を去っていた。

 「くそっ……荷台が! 何者だ!?」

 俺と一緒に荷台を運んでいた騎士が叫ぶ。

 逆さになった荷台の横に黒ローブの顔なし仮面がいた。道を塞いでいたヤツではない。あいつは今サキ率いる騎士たちに足止めをくらっている。

 それはつまりサキたちもこちらの援護はできないということだ。目の前の黒ローブはこちらでなんとかするしかない。

 顔のない仮面はその場にいる騎士二人と俺を一瞥する。

 「……はぁ」

 顔のない仮面は退屈そうにため息を零して、蹴りで逆さの荷台をひっくり返す。そして荷台の下敷きになっていた例の死体を小脇に抱える。

 「待て! それをどうするつもりだ!?」

 騎士二人が苦無を取り出す。

 いつのまにか能力(スキル)を発動させたらしく、獣の耳と尾が生えている。

 「……やめた方がいい」

 しかし、顔のない仮面はつまらなそうに騎士たちを見るだけだった。戦闘態勢に入る気もないようだ。

 「……どうせ(かな)わないよ」

 会話の速度がワンテンポ遅いその声を合図に騎士二人は動き出す。

 顔のない仮面は再度ため息をついて死体を離す。

 「……能力復元(ノスタリジア)

 そして静かに言葉を紡ぐ。

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