表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚者達はその異世界で  作者: 八日園 啓地
第2章 祭り前の動乱
30/143

29 その二人、ご対面

 体に窮屈さを覚え、俺は目を覚ます。

 しかし俺の目は十分な明かりを得ることができなかった。辺り一面、暗闇の世界で覆われている。

 徐々に目が慣れてきて、ぼんやりとだが見えるようになる。しかし、それはあまり関係なかった。目の前には壁が立ちはだかり、視界を遮る。

 「どこだ、ここ? 確か、ハリサキと別れた後……」

 思い出した。昨日の襲撃犯 (たぶん)に再び襲われたんだっけ。で、痛みに耐えきれず気絶したらしい。

 異世界に来て一ヶ月が経つ間に俺は何回気絶をするのだろうか。絶対神法書(シガンマナ)には意思が弱いと気絶しやすいとでも書かれているのだろうか。それならこれからは人の意見に流されないようにしよう。

 新たな目標を胸に再度辺りを確認する。

 ……で、まじでここどこ?

 辺りを両手で探るも、腕を伸ばしきっていないくらいのところで壁にぶつかる。かなり狭い。何かの部屋ではなさそうだ。

 「おーい! 誰かいないか?」

 とりあえず目の前の壁を叩きながら、助けを求める。しかし、いくら待っても返事はないし、誰かが近づいてくる気配も無い。誰も居ないみたいだ。

 まあ、居たとしても、俺を助ける気が無い奴となり、俺をここに運んだ奴とみて間違いない。ならば、この場合そんな奴は居ない方がいい。

 仕方がないので、俺は一度状況を整理しようと床に座り……たいのだが座ると余計窮屈になるのでやめた。

 さて、状況を整理しよう。

 まず、ライトソードとバーチャルバレットは持っている。犯人は意図的にかどうかは分からないが武器を取り上げなかったらしい。ライトソードはともかくバーチャルバレットには目の前の壁くらいなら破壊できる弾もある。しかし壁の向こう側に何があるのか分からない以上、あまり得策とは言えない。

 というわけで壁を破壊して脱出する作戦は最後の手段となるだろう。

 次に犯人についてだ。ここに俺を運んだ奴イコール昨日俺を襲った犯人とみて間違いない。だが、不思議なことに気絶する前に声のした方向を確認しても誰もいなかった。咄嗟(とっさ)に視界から外れたのか、それとも俺が向いた方向が間違っていたかのどちらかだ。

 ふと、頭がズキズキと痛む。頭を強く打たれたせいか、意識が飛んだ前後の記憶があやふやだ。

 確か、犯人がなんか喋っていたような……。

 そんなことを考えていると、扉の向こうから微かな物音がする。

 ガチャ、とドアが開く音がして誰かが入って来た。

 俺はその瞬間体が強張(こわば)る。

 敵か味方か、それとも関係のない人か判断に迷う。しかし敵なら俺がここにいるのを知っているはずだ。ここは誰であれコンタクトを取った方が良いだろう。

 「おーい! そこに誰かいるのか? 悪いけど、俺をここから出してくれ!」

 さあ鬼が出るか蛇が出るか……。いや、出るのは俺なんだけどね。

 少し間を置き、こちらに近づいてくる足音がする。

 ……もし敵だったらどうしよう。……一応バーチャルバレットを起動しておこう。

 目の前の壁は扉だったらしく、ガチャガチャと激しい音が狭い空間内に響いている。建て付けが悪いのか中々開かない。

 俺は手にバーチャルバレットを装備し、目の前に構える。開けてくれるなら敵じゃない可能性が高いが念には念を入れておく。敵じゃなかったらごめんなさい!

 やがてガチャ、と音がして、ゆっくりと光が狭い空間内行き渡る。

 俺ははやる気持ちを抑え、ゆっくりと開くように感じるドアの向こうにいる相手の正体を待ち構えた。




 カケルと別れた後、ハリサキは真っ直ぐ帰路に着く予定だった。まず更衣室で制服から私服に着替えて、部屋に戻ろうと、そう考えながら街を歩いていた。

 「あ、ハリサキさーん。ちょっといい?」

 ふと間の抜けた声がして振り返る。そこには騎士団銃撃隊の女子数人が固まっていた。

 制服を規則に反しない程度に着崩している、いわゆる派手系女子だ。普段ハリサキとは関わりのないタイプである。

 そんな彼女達がハリサキをわざわざ呼び止めるのは珍しい。

 「何かしら?」

 ハリサキが答えるが、お互いにくすくすと笑っているだけですぐには答えない。

 「ちょっと祭りの準備を手伝って欲しいんだけど」

 今の妙な間にハリサキは怪訝な表情を浮かべるも、特に断る理由もなく引き受けた。




***

 準備はさほど難しいものではなかった。しかし、時間がかかってしまった。なぜなら手伝いを頼んだ彼女達が全く協力せずに話をしているため結局ほぼハリサキ一人で終わらせたからだ。何か一言、いや五言くらい言いたかったが部署が違うのでやめておいた。こんな些細なことで部署間の溝になるとは思わないが、言ったところでせいぜい笑いのネタにされるのがオチだろう。

 騎士団の配属先は大きく分けて二つに分けられる。一つはカケルやハリサキなどが所属する執行部。もう一つは事務部だ。

 執行部の仕事は街や国を挙げたイベントの警備、他の内戦がある種族への援助などが挙げられる。もちろん、数日後に開催予定の祭りの警備や設営も仕事の範囲である。そして、執行部の中でもカケルやライザーが所属している剣劇隊とハリサキやシモンが所属している銃撃隊

 一方、事務部は騎士団の予算の割り振りやデスクワークを主にしている。しかし、こうして執行部の仕事の祭りの設営を手伝う事もある。当然、事務部の方が女性が多い。その次に多い所は銃撃隊だ。

 つまり、ハリサキは日々デスクワークの彼女たちには急な肉体的労働はかなりの疲労が発生するのだろう、という結論に至ったのである。

 手伝いを終えて、やっと城にたどり着く。そこから向かって左に曲がり、少し進むと騎士団の人が使っている建物が見える。

 手前が男子寮、奥が女子寮だ。ロビーは男女共同だが、そこから男子部屋に続く廊下と女子部屋に続く廊下に分かれている。

 寮には騎士見習い、つまり学生もいる。学生は十歳から五年間学校で学び騎士団に入団する。騎士にならない子でも十歳から三年間は騎士見習いとは違う学校に行く。

 寮は騎士学生三年生から入ることができる。しかし、ハリサキは入寮する時の手続きで年齢詐称を疑われてしまった。よくあることらしいが、もちろんハリサキはしていない。なんとか誤解が解けて、寮母がお詫びにと今の一人部屋を使わせてもらうことになった。

 (そういえば彼も絶対私の年齢を誤解しているわね)

 ハリサキはさっき別れた黒髪の少年のことを思い出す。

 カケルはハリサキのことを同い年だと思っている。同い年のセレアがあの調子だからだろうが、実際ハリサキはカケルよりも少し年上である。それこそライザーと同い年、十九歳だ。セレアやカケルより三歳年上だ。

 別に年上だから敬語を使えだの体育会系みたいなことは言うつもりはない。しかし、いつまでも誤解されたままだとあまりいい気持ちはしない。

 (まあ、機会をみて解けばいいか)

 そう結論付けて、更衣室の扉を開ける。昔から実際の年齢よりも下に見られることはかなりあった。数十年後に間違われたら嬉しいかもしれないが、多感な時期はこの間違いをされて『そんなに子供っぽいだろうか』と悩まずにはいられなかった。加えて、学生時代は感情を表に出すのが得意でないハリサキを大人ぶっていると疎む者さえいた。その事は当たり前だが彼女にとっていい思い出ではない。

 更衣室には人はいなかった。室内の静寂が彼女を迎える。

 迷わず自分の荷物があるロッカーの鍵を開ける。そして着替え始める。

 騎士服は夏の制服の場合、上は男子と同じだ。下は男子は薄い生地の長ズボンだが、女子は膝より少し上のスカートだ。

 スカートを脱ごうと手をかけた次の瞬間、一つのロッカーから何か打ちつけるような音が響く。

 ハリサキはばっとその奇妙なロッカーを数秒間見つめる。

 (誰かいるのかしら? いやまさかね、動物かしら?)

 誰かが捨て猫とか捨て犬とかを拾ってとりあえずロッカーに隠している、と思いハリサキは扉に手をかける。

 ちらっと確認するだけのつもりだった。

 ロッカーは特に指定されていないため、誰がどこを使ってもいい。そのため誰がそのロッカーを使っているのかわからないのだ。

 ロッカーに入るサイズなら大型犬は有り得ない。ロッカーは縦に細長い形状をしている。ということは小型である可能性が高い。

 そう予想してハリサキはやけに建て付けの悪いロッカーの扉を開ける。ゆっくりと開けた先には……。

 「……………………あなたここで何しているの?」

 そこにはつい先程別れたばかりの少年が入っていた。しかも銃をこちらに向けている。

 「ハリサキ? …………っ!」

 彼はハリサキの顔を見て、戸惑いの表情を浮かべていた。しかし視線が下にいくにつれ顔が赤くなっていき、彼女から目を背ける。

 「? ……っ!」

 ハリサキも自分の体を見て、そして思い出す。自分が今()()()()()()()()()

 上の制服はボタンが全部開かれて、下はスカートのチャックが開けっ放しだ。それぞれの間から上下共に水色の下着が顔を覗かせている。

 ハリサキは顔が急激に暑くなるのを感じ、自分の体を隠すようにしゃがみこむ。

 「えーと、その、すみません」

 彼女に目を向けないままカケルが謝る。ハリサキはカケルを睨みつけ、カケルもそれをひしひしと感じていた。

 ハリサキの目からは好奇心の色が消え、嫌疑と警戒の色が強まっていき、更衣室の静けさが更にそれを強調していった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ