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召喚者達はその異世界で  作者: 八日園 啓地
第2章 祭り前の動乱
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22 その少年、謝罪する

 朝の鍛錬も午後の鍛錬もない日はすごく暇だ。しかも今日はアキヒロも用事があるらしく、病院を一時退院しているらしい。

 仕方がないので俺は今住んでいる屋敷の書斎に篭っていた。適当な白紙に文字を書き連ねる。内容は約四百年前に作られた絶対神法書(シガンマナ)の内容だ。完璧には覚えてないので概要のみだが、ちょっと本や人から聞いたことを復習しておこう。

 「えーと、まず戦争の禁止。戦争の定義を異種族間の武力の争いとする」

 つまり、同種族間の争いは範囲外なのだ。だから、エルフ間の戦争も合法となっている。

 更に銃撃隊がアールヴの大陸であるトールキン大陸の主要国、トールキンに行って内乱の手助けをしているのも合法らしい。理由は手助けなので交渉の場を設けたり、物資支給だったりと直接戦わずに色々な場面でサポートしているからのようだ。

 「二つ目、魔法の禁止。詠唱魔法、術式魔法、その他の全ての魔法を禁ずる」

 しかし魔力や大気中の魔力の素となる魔粒子は存在している。だからリグルートでは魔導機械が発達したのだ。

 「三つ目、他種族の領土の不当な侵入、侵略は禁止」

 現在この世界は七つの大陸に分かれているらしい。一種族一大陸だが、昔はそうではなかった。一つの大陸に違う種族の国があることは珍しくなかったようだ。神様はそれを戦争の原因と考えたという説がある。

 「四つ目、基本的に姿形、言語、体内魔力をほかの種族は先の戦争で最弱だったリグルートに統一する」

 基本形態と書かれてあるが。まあ、特に気にしなくてもいいだろう。要はみんな人間になったという事だ。

 「五つ目、絶対神法書(シガンマナ)の破壊行為を禁ずる」

 破壊行為(・・・・)ということは絶対神法書(シガンマナ)は実体として存在しているということだろう。

 「六つ目、女神の加護者は五つのプレアを使用できる。プレアは絶対神法書(シガンマナ)や各種族の法律に抵触する内容以外の全てを叶えるものとする」

 例えば、魔法を使えるようになりないと願っても叶えてくれないということだ。疑問なんだが、俺はプレアを使ってアキヒロの研究所に不法侵入(・・・・)をしている。相手も犯罪を犯していたからだろうか。今でもよく分からない。

 「七つ目、女神の加護者はこの世界で生まれ育った生物に殺されることはない」

 要するに、生命力だけは俺tueee状態ということだ。

 七つの絶対的法律を書き終え、俺はふぅ、と吐息をこぼす。約四千年前に作られたのにもかかわらず、未だにこの世界に存在しているのはかなりすごいことだ。しかし、こうやって書き上げても俺が、いや俺たちが召喚された方法と理由がわからない。

 すると、突然軽やかな音楽が流れる。俺のタブレットだ。電話のようだ。相手は……セレアだ。

 「はい、セレア。何か用?」

 「『何か用?』じゃないわよ! なんで貴方城に来てないのよ!?」

 なにやら王女様がご立腹のようだ。

 え? ていうか今気がついたの? 結構前から特に鍛錬も仕事も無かったら出勤してないけど……。

 そんな言い分を(言い訳を)言おうとしたところでセレアのため息と重なり、タイミングを失った。

 「まあ、この件は後から説明してもらうとして。今すぐに城に来て。銃撃隊が後数十分後には帰ってくるらしいの。貴方を団長達に紹介するから絶対に来なさいよ」

 要件は済んだとばかりにセレアは電話を切る。切る瞬間に『セレア様、次の書類に関してですが……』という声が聞こえた。あの声は確か老執事のアロメさんだ。長い間、スカーレット一族に仕えてきた人だ。どうやらセレアの手伝いをしているらしい。

 セレアは大変そうだな、と完全に他人事な感想を抱きつつ、俺は騎士服に着替えるために書斎を出た。




***

 俺は出来る限り早く城へ到着した。そして、セレアが仕事場にしている部屋の扉を軽くノックする。

 「セレアー、俺だ、カケルだ。入るぞ」

 ガチャと扉を開けると、休憩していたのかティーカップを持って座っているセレアとその横に静かに立っているアロメの姿が見えた。

 「あら、随分な重役出勤ですね」

 セレアはティーカップを机に置き、刺々しい言葉を投げる。

 「はははは、僕そんなに出世した覚えはないんだけど。まあ、セレアの警護だから重役と言えなくも…………わかったわかった、悪かったよ! 謝るからその冷めた目で見るのはやめてくれ」

 無表情に、無感情な目、そして無言。まさに無の境地だった。いや、冗談抜きでかなり怖い。

 「カケル、私結構起こっているのだけれど、…………何か言いたいことはある?」

 セレアはその紅い髪を軽く揺らす。ここで冗談言ったら二重の意味で首が飛ぶ。

 「……反省してます。ごめんなさい」

 俺は床に正座をしながら頭を下げて誠意をみせる。決して土下座ではない。手は太ももにつけている。土下座は相手が要求しない限りしないほうがいい。積極的にすれば謝罪自体が軽く見られる。

 セレアはしばらく俺を見つめる。一秒一秒がやけに長く感じる。セレアはティーカップに入った紅茶(香り的にそう判断した)を啜る。カチャンと、ティーカップを置く音が聞こえる。

 やばい、超怖い。

 自分の心臓の音だけが鼓膜を大きく震わせる。

 「反省しているならいいわ。ほら、早く顔を上げて立って……ってなんで若干涙目なのよ。メンタル弱すぎでしょ」

 「な、泣いてないし!」

 と言いつつ一応目元を拭う俺の行動に、セレアは声を上げて笑い出す。

 「だから泣いてないから! 目にゴミが入っただけだから!」

 「はいはい、そうね。ゴミが…………ふふ」

 「だ、か、らーーー!」

 一気に緊張感のある空気が騒がしい空気に変わっていった。そんな中でもアロメだけが爆笑するセレアの横で静かに佇んでいた。いや、微笑ましそうにしている。

 とりあえず、アロメさんも俺の弁解を信じていなさそうだった。

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