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召喚者達はその異世界で  作者: 八日園 啓地
第2章 祭り前の動乱
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21 その少年、職場で

 第2章です。

 「勝負だ、ライザー」

 「負けないよ、カケル」

 俺は目の前のライザーの行動に注視する。ライトソードを構えているライザーもこちらの動きを見ているらしく動かない。

 周りの音が徐々に聞こえなくなり、目の前の、相手に、戦いに集中できていることが自分でもわかる。

 (ライトソード)(ライトソード)がぶつかり合う音、壁にもたれかかって会話している声、それらが一切なくなった。

 その瞬間、俺は大理石の床を利き足で蹴る。それによって生まれた速さを殺さずに、一気にライザーへ接近する。

 「はあああああ!」

 俺は近距離で突きを繰り出す。狙いは右利きが守りにくい右腹部付近だ。

 「くっ…………!」

 しかし、ライザーはとっさに体を左にずらしてこれを()けて、距離をとる。

 ……狙い過ぎたか。

 反省を頭の中で二秒程して俺は動き終えた後の硬直後、すかさずバックステップで後退する。

 しかし、ライザーはその一瞬を逃さない。今度はライザーが詰め寄る。

 「なっ…………!?」

 バックステップに入った俺は動作をキャンセルすることができない。縦に振られたライザーのRS(ライトソード)RS(ライトソード)を盾代わりに使い、形だけの防御をとろうとする。

 ガキン、という金属音がして俺は自身の(ライトソード)と共に吹き飛ばされる。

 「痛っ!」

 尻もちをつき、尾骶骨(びていこつ)らへんに鈍い痛みが走る。俺はそれを堪えながら素早く自分の武器の在り方を確認する。右に数十センチの場所にお目当ての物があり、慌てて拾おうと体を右に動かして右手を伸ばす。

 あと少し。

 「そこまでだよ、カケル」

 ウォーン、というパソコンなどで聞こえそうな電子音が間近に聞こえる。左を見ると、ライザーが自身の武器を俺の喉元に添えていた。

 「あー、今日も負けたー!」

 「今のは追撃した方が良かったよ」

 ライザーの言葉を聞きながら、俺はそのまま仰向けに倒れる。今まで動いた分の汗が栓を捻った蛇口のように出てくる。

 上昇した体温には冷たい大理石が心地よく感じる。目の前には高い天井とそこに付いている照明が見える。

 「ふぅ、……そろそろみんなも終わってくれ!」

 ライザーは RS(ライトソード)を仕舞って、周りの騎士達に声をかける。様々な方向から返事が聞こえ、力強く床を蹴る音が消える。代わりに忙しなく動く、早歩きのような音が聞こえ始める。片付けに入ったのだろう。

 俺も片付けをするために起き上がる。近くに落ちてある自分の R S(ライトソード)を拾い上げて、はぁ、と軽くため息がでる。

 ……俺tueee状態だった二週間前に戻りたい。




***

 ジャロウの事件から二週間が過ぎた。カレンダーを見ると五月の半ばに差し掛かっている。

 ちなみに、異世界と俺が元いた世界は日にちがほぼ同じみたいだ。相変わらずこの世界は元いた世界との差が少ない。

 神様も絶対神法書(シガンマナ)を生み出すこと以外にこの世界のオリジナル要素を作ればよかったのに。

 俺は午前の鍛錬が終わり、午後は仕事に入る。鍛錬は一週間に二回ある。午前だけでなく、午後の部もある。騎士団は数が多いので七つの班ごとに日を分けて鍛錬に励んでいる。

 午後からはこの国の王女にして、七つの種族の一つ、リグルートの象徴であるセレアの身辺警護だ。

 ……こうして考えるといささか重い。気とか荷とか、色々。まあ、今のところ順調に仕事はこなしていると思う。

 最近では、騎士団の半数が帰ってくるとかでセレアは手続き? とか詳しいことは分からないが色々忙しいらしい。どのくらい忙しいかと言うと、近くにいた俺に『今日の仕事は特にないわよ。あまりすることないし。というか、居たら少し邪魔かな……』と遠慮がちながらも、きっぱりと要らない子宣言するくらい忙しい。お陰様で俺は暇だ。

 かと言って、騎士の服で街中をぶらついていると、街をパトロールしている同業者に睨まれる。その目からは『働け』の二文字が読み取れる。

 これが俺の騎士団の今の立場だ。ジャロウを倒すときに使ったプレアで聖騎士(ライザー)に匹敵する実力を手に入れた。しかし俺が、今だけでも、と付け加えてしまったため、その日限りになってしまった。

 したがって、何人かの騎士は実力が伴わない奴が王女の護衛をしていると、あまり俺に対して好意的ではない。後の連中は急に入ってきたよく分からない奴だと、敵意はないがただ遠巻きに見ている。しかし、前者の連中がそこそこ上の役職だから俺と関わって目を付けられたくない、というのもあるかもしれない。

 というわけで、俺異世界に来てもぼっち状態です。ライザーは時々話しかけてくるが、あれは先生枠だろう。立場が他よりも遥か上だし。誰にでも気軽に声かけるし、相談にも乗っているし。

 セレアの身辺警護という仕事が休みになった三日間、俺は病院に足を運んでいた。

 清潔感あふれる廊下を歩き、目的の扉に到着する。扉を横に開き、中に入る。

 「やあ、来たか」

 そこには病衣を纏った、俺と同じ『女神の加護者』であるアキヒロがいる。

 俺は彼にこの世界の常識やこの国のシステムを学んでいるのだ。というか、セレアもライザーも忙しいそうだし、ほかの騎士達に仲のいい奴がいないから消去法なのだが。

 「そういえば」

 俺が近くの椅子に座るのを見届けて、アキヒロが言う。

 「騎士団が帰って来ていないか?」

 「なんかもうすぐ帰ってくるらしいぞ」

 彼が言う騎士団とは今エルフの大陸に行き半年間、内乱を止める手助けをしている団長率いる銃撃隊のことだ。

 ちなみに絶対神法書(シガンマナ)には戦争禁止とだけ書かれているので、内乱はその範囲外だ。

 「そうか。帰ってきたら銃撃隊に銃を見せてもらうといい。あれは、バーチャルバレットは中々の出来だったと思う」

 「またお前が作ったのか?」

 俺は目の前にいる入院患者に呆れたという口調で言う。彼はプレアに電化製品の設計図を手に入れることを願い、頭の中にその全てが入っているそうだ。そして、この世界の技術を取り入れて作った物が魔導機械だったりする。

 「いや、あれは私の師が作ったものだ」

 「師? あんたの先生が?」

 「そうだ。だいぶ変わり者だったがね。私が昔いた『女神の加護者』と元いた世界にあった銃について話していたら興味を持たれてね。簡単に説明したら、次の日には元いた世界と同じものを作られていたよ。まあ、王から危険と判断されて武器庫に仕舞われだのだけどね」

 恐らく、ジャロウが持っていた物がそれだろう。セレアに致命傷を負わせた銃だ。

 「その後に彼が作られたのがバーチャルバレットだ」

 「そのバーチャルバレットってどんなものなんだ?」

 「だから、見せてもらえと言っただろう。あれは見たほうが早い」

 アキヒロがそう言い終わったタイミングで病院の先生が入室して来た。彼の検査の時間らしい。一応は催眠の後遺症が残っているかもしれないということで彼は入院している。俺は邪魔にならないように病室を後にした。

 読んで頂きありがとうございます。

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