100 その会議、始まる
長達と彼らの護衛が集まり始めた。
俺たちの次にゴットゼルク、アールヴ、プロエリムの順で到着する。これで五種族の主要人物がそろった。
どの種族も他の種族とは距離を置いている。他の種族とは話すらしていない。そのせいか、十人もいるのにやたらと静かだ。話し声が聞こえても、どれも同種族同士で話している。
「なんか、思ったより静かだな……」
隣にいるライザーに話かける。
まだ会議は始まらないので席に座っていない種族もいるが、リグルートの長は既に席に着いて会議が始まるのを待っている。俺とライザーはその後ろで立つ配置となった。
「いつもこんな感じだよ」
「種族同士の会話が少ないんだな」
「え……?」
今まで疑問にも思っていなかったことを指摘したようで、彼が顎に手を当てて考え込む。
「…………うん。そうかもね。絶対神法書によって決められている、種族間の領域侵犯は悪意がなければ他種族の領域内に行けることが何年か前に分かったけど、未だに種族間の交流はまだ少ないかな」
「悪意がなければいいなら、もっと増えそうなものだけどな」
ライザーが少しばかり苦笑して続ける。
「…………そうだね……。だけど、大陸が種族毎にあるのは神によって他種族の干渉を禁じられたからなんだ。それがまだ僕たちの意識にあるんだと思う」
ライザーの意見を肯定するかのように空気は無干渉の沈黙を保っている。
そのせいで廊下の足音がはっきりと室内まで伝わってきた。
「あ、セレアだ! やっほー! 一ヶ月ぶりだね!」
「お嬢様。もう少し落ち着いて下さい。遊びで来たわけではないのですから」
場の静けさを突き破るような声がこちらに近づいてくる。元気よく入室してきたのは紫色の髪をもつ少女だった。その半歩後ろの老執事のような雰囲気の男は困り顔だ。
彼女たちはディアボロス族だ。元気よくセレアに手を振る少女がディアボロスの長である、シェリー・ヴィクトリア・バイオレットだ。彼女に付き従うご老人は執事のカールさんである。
「ええ、久しぶり。この前のようなことはもうしたらダメよ」
セレアが注意したのは一ヶ月前の訪問のことだ。リグルートも事前に知らされていなかったし、ディアボロスも急に長が行方不明になって大慌てだったらしい。
そのことを思い出してカールさんが大きく頷いている。一方で指摘された当の本人は口を尖らせて拗ねていた。
「その話は爺やの小言だけで十分だよ……。セレアはもうちょっと楽にしていいと思うけどな。ね、カケル?」
「え……ああ………………」
俺の曖昧な返答にシェリーは首を傾げる。
彼女は事情を知らないので仕方ないとして、問題は俺だ。答えを濁せば良いものを、下手に肯定してしまった。
苦虫を噛んだような気持ちになる。これではセレアから見ればあの時の揶揄にしか思えないだろう。恐る恐るセレアを窺うが、位置的に顔が見えなかった。
俺とセレア、両方の顔を見れるシェリーはそれぞれの顔を交互に見てまた首を傾げる。
「二人とも…………?」
ディアボロスの長の言葉は他の音によって遮られた。
からん、と軽い音が室内に響く。
木靴の音が最後の来訪者を告げる。
「にゃは! 妾たちが最後のようじゃのう」
「いやはや、そのようですな。まあ、開始時間には間に合っているので問題ありますまい」
入室してきたのは着物姿の二人組だ。言うまでもないが、最後の種族であるソウルビーストの長とその護衛だ。
水縹の髪に着物を着崩している女性が長の舞姫だ。その護衛の高齢の男性が聖騎士の上野はちさんである。
これで全種族が集まった。
それを確認して、主催者であるドラコーンの浅黒い肌の男が声を上げた。
「少々早いですが、全種族そろったので始めたいと思います。皆様、席にお着き下さい」




