異世界キャンプ飯
肉はこれで置いておくとして、とローサが鍋を取り出した。
「火が弱くてもそろそろお湯は沸かしておこう」
「お湯は何に使うの?」
「乾燥させた野菜や肉を煮詰めたものを固めた携帯食を溶かしてスープにする。飲みたかったらお茶も入れれるし」
「おお、便利だねえ」
「献立は今日はステーキと、葉物野菜のソテー。保存スープとパンだよ」
「野営とは思えないくらい豪華!」
「ムジナもいるしね。グレゴリーと2人ならいつもはもう少し質素だよ」
くすくすといたずらっぽく笑うクールビューティー。
普段あまり笑顔にならないのでとても絵になる様だ。
一緒にきゃいきゃいしつつグレゴリー達の方へ行くと二人は熱心に火を大きくしていた。
コマタロウなんか、そよそよと杖からそよ風魔術を使っているようだ。
「おう、ぼちぼちいけるぞ」
「ムジナさん、火おこし楽しいです!」
と、コマタロウはキラキラと純朴に輝く瞳を向けてくる。
「先にスープ作ろうと思って」
「お鍋持ってきたよー」
水筒から水を入れた鍋を火にかけて、吹きこぼれないように気をつける。
沸騰してきたらスープ用の携行食を溶かし、味見しながら香辛料や調味料で味を整えればあっという間に一品。
ローサの手際の良さに関心してばかりだ。
「ムジナ、食材とフライパン持ってくるの手伝って。コマタロウはお皿」
「はーい」
「はい!」
まずは肉から焼くようで、トングでフライパンに肉を並べた。火からやや遠くなるように、下に木を組んだり石を積んだりして調整済みだ。
弱火でジューと肉が焼ける音が響き渡る。
音がパチパチとしてきて、においがより香ばしくなったと思ったタイミングでローサは手際よくひっくり返す。
「肉が焼けたとき音とにおいが変わったのかな」
「うん、そうやって料理する人もいるね」
「ぼくはあまり違いがわからなかったです」
「お嬢ちゃんもやれば、案外いい料理人になるかもなあ」
「そのうちやらせて!」
「まあ最初の頃に比べたらこけることもなくなったしな。いいんじゃないか?ローサ、教えてやればどうだ」
「いいよ。でもあんまり喋るのは得意じゃないから見ててね」
「はーい」
なんて喋ってる間に肉が焼け、先程洗ったまな板に取り出す。
4人分皿を出すと洗い物が増えるだけなのでまな板でカットして大皿に盛る方式らしい。
ローサは間髪入れずに暖まった油と脂の浮かぶフライパンにカットされた葉物野菜をぶち込む。
葉物野菜は加熱しすぎず、色が濃い緑になったらこれも大皿の脇に取り分けられた。
スープをそれぞれのお椀に、パンも大皿に。
湯気の向こうで、香草と肉の香りが焚き火の煙に混じって漂う。
完成だ。
「美味しそう!」
「何だかこうやって同じお皿で食べるの始めてです。あの、ぼくこれはどれくらい食べたらいいですか?」
「適当でいいよ。でもお肉は食べ過ぎないでね。皆食べたがるだろうから」
「コマタロウは行儀よさそうだからな!がっつくというこたないだろう」
じゃあみんなで食べようか、とおもむろにフォークで肉を取り分ける。
スープはスプーンではなくカップで飲む方式だ。
サイアムは人ではないので一応別枠で小さなお皿に取り分けておく。
「お家で食べるご飯とは全然違うけど、凄く美味しいです!」
コマタロウはひとつひとつ、丁寧にはぐはぐ咀嚼しているようだ。
育ちの良さを感じながら、私は庶民らしくもぐもぐ食べる。
「コマタロウ、このパン油につけると美味しいよ!」
「え、本当ですか?初めての食べ方です」
「そっか、パンお皿とかにつけるのって庶民的なんだっけ?」
「えと、そうなんですかね。僕はやったことなくて。でも、やってみますね」
と、前世の記憶を思い出す私にコマタロウは素直にパンをちぎって油に少し浸して口に入れる。
「ん……ごくん。これは、初めてですが本当に美味しいです! 肉の旨味が油に溶け出してます」
「ね!ローサに教えてもらった!」
ねー、とローサのほうを向けばうんうん、と頷いている。
お喋りを挟み、思い思いのペースで完食し、食後少し腹を休めてのんびりした。
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