第9話 内政要員召喚
<第九話>
蝦夷鎮守府のコントロールルーム内。
そこには魔王国の首脳が集合していた。
とはいっても、魔王ルイン、宰相ルティアラ、技術長官飛鳥、軍務長官範馬の四人だけなのだが。
「さて、これでひとまず拠点確保には成功したわけだ」
「そうね、範馬。次は奥州鎮守府よ」
「その前に、蝦夷地を完全に平定するべきではありませんか?」
「飛鳥の言う通りだが、面積はそれなりに広いぞ、この蝦夷とやらは」
「問題ないわ。各方面の基地はこの鎮守府から遠隔コントロールが可能だそうだし、回線を通じてそれぞれの基地に通告済みよ」
ルティアラが飛鳥に目配せする。
「は。服従か、死か選ぶようにと極大魔法発動からルイン様のお言葉までを動画にて添付し送信済みです。ついでに、ルティアラ様の言う通り、そこに並んだ生首の画像も付けておきました」
司令室のテーブルに綺麗に並べられた生首のオブジェ。
題名を付けるのならば『絶望』か『苦悶』のどちらかだろう。
「基本的には助命嘆願とともに我らの支配下に入る旨を伝えてきておりますが、念のため代官を派遣するべきかと考えます」
「代官か・・・」
「知能が高く、内政経験があり、現代兵器をものともしないレベル。上級魔族か高位の不死者が適当と思うわ、ルイン」
「そうだな。何人喚べばいい?」
「蝦夷は東西南北の4ブロックに別れておりますので、文官が最低四人ですね。それを補佐するような武官も付けていただけるのであれば八人は」
「飛鳥の言う通り、八体召喚するとしようか。では早速」
ルインが何事か呟くと、司令室の巨大なモニタと床の中央に魔法陣が浮かび上がる。
そこから現れたのは、四体の魔族と四体の不死者であった。
『お呼びでございましょうか、我が主』
頭部の両サイドからねじくれた巻き角を生やした男性型高位魔族が口を開く。
「うむ、久しいな、ビフロス」
『は。お喚びいただき光栄の至り』
ビフロスの言葉に従って、残る七体も平伏する。
「お前達八人を呼び出したのは、新しく手に入れたこの領土の統治を任せるためだ。今の状況は分かっているか?」
『残念ながら・・・』
かくかくしかじかと状況を説明するルイン。
若干滑稽な感じは否めないが。
『なんと。魔王様におかれましてはこの世界を手中に収める決意を為されたと。さすがは魔王様でございます!』
感激したようにいうビフロス。
『為れば我らに否やはございませぬ。魔王様のご期待に添えますよう、確と治めてみせましょうや』
「うむ、頼むぞ。我らは次の領土を落としにいく。ああ、ここは地獄ではないからな。生かさず殺さずよりも甘めにな。世界を滅ぼしたいわけではないのだ」
『勿論で御座います。魔王様の御名を遍く世界に轟かせられますよう粉骨砕身致す所存で御座います』
「であればよい。詳細はそこの女、飛鳥に聞け。手荒な真似はするなよ」
『御意』
深々と頭を下げるビフロス。
それに合わせるようにして残りの七体も頭を下げ、飛鳥に向き直る。
『ただの人よと侮っておりましたことをまずお詫び申し上げます。魔王様御自らが信に足ると認めたお方。我らも貴女様に敬意を払いご命令に従いまする』
「そのように言っていただけるとは・・・。私は感動している。人も魔も関係ない。私は魔王様に従ってきて良かった!!」
仰々しい口上に負けず劣らず、飛鳥も感激して涙を流さんばかりだ。
『おおお、人の身でありながら何という深い忠誠。今後も共に魔王様の為に!!』
二人で手を取り合って感動している。
「ねぇ、ルイン」
「なんだ?」
「アレでいいのかしらねぇ・・・」
「・・・よかろう。人と魔が手を取り合えるという証左であろう」
「そんなもんかよ?」
若干ルインのこめかみがぴくぴくしているように見えるのは気のせいではあるまい、そう範馬は結論づけた。
要するに、どこにでも馬鹿馬鹿しい奴はいるということなのだろう。
「では飛鳥、ビフロス、任せたぞ?」
「はっ!」
『御意!』
ぴたりと息の合った礼を返すと、飛鳥と八体の悪魔と死霊は打ち合わせのためにコントロールルームの隣、作戦室へと移動していった。
「さて、ルティアラよ」
「何かしら、ルイン」
「奥州鎮守府宛の宣戦布告を改めて行うとしようか」
「そうね。時間空けたら飽きちゃいそうだし」
「おっし、じゃあ次はオレに活躍の場をくれよな!」
「おお、範馬がやる気ではないか」
「だってよ、戦闘機が相手だとさすがになぁ」
如何に規格外の力を持つ勇者とて、自力で空を飛び戦闘機と格闘戦をするには無理があると言うことだろう。
「飛び道具で叩き落とすのもちょっとイメージ違うくね?」
「確かにそうね。ルイン、自力飛行できるようなギミックが必要じゃないかしら?」
「ふむ。もしくは範馬専用の騎獣だな」
「おおっ、それいいね。何か勇者っぽいぜ!?」
「そうか、ではそうするか。どんなものがいいのか何となくでいいから言ってみろ」
「そうだなぁ・・・」
ルインに促されるままイメージを伝えていく範馬。
色やら形やら特殊能力やら様々な条件で絞り込んでいくと、最終的に候補として残ったのは二種類だった。
「で、どっちがいいんだ、範馬?」
示されたのは、黒竜と黒麒麟であった。
色が黒いのは通常の勇者とは反対のイメージにしたかったからだろうか。
「さぁ、選べ」
「二択かよ!?」
「範馬のイメージから絞り込んでいった結果の二択だ。喜べ」
「お、おう?」
思案顔の範馬。
単純なだけに、あっさりと誤魔化される。
「範馬っていい奴よね」
「どうした、藪から棒に」
「いえ、独り言みたいなものよ。気にしないでちょうだい」
しばらく頭を抱えていた範馬だが、ようやく決心が付いたようだ。
「よし、決めた。やっぱ男はドラゴンだよな!」
「そうか。ではそうするがいい。名前はお前が付けてやれ」
そういって、ルインは刀身から柄まで全てが漆黒に染め上げられた長剣を範馬に投げてよこす。
それを危なげなく掴み取る範馬。
「なんだよ、これ?」
「それが黒竜の化身だ。普段は魔剣の姿を取り、主の召喚に応えて竜身に変化する。剣の状態でも十分強力だ。勇者らしく腰にでも下げておけ」
「了解だぜ。名前は・・・やっぱ黒王だな。黒き王!」
「ベタ・・・」
「そこが厨二魂をくすぐるんだぜ?」
ニヤリと笑う範馬。
ちょうどそこに飛鳥が戻ってくる。
「打ち合わせは済んだか?」
「はっ。皆様非常にやる気で、早速各ブロックに赴任するとのことでした」
「そうか。まぁ、蝦夷はヤツらに任せておけば良かろう。では飛鳥。奥州鎮守府に宣戦布告を行う。開戦を開いてくれ」
「了解であります!」
飛鳥が機械のセッティングをしている間に、ルティアラが生首の配置を調整している。ルインのちょうど斜め後ろあたりに生首の山が映り込む設定のようだ。
「ふう。これで無念さが良く伝わるわね」
「相変わらず悪趣味だな」
「はったりもテクニックなのよ?」
「まぁ、そのあたりは一任しよう、宰相殿」
「一任されましょう、国王陛下」
悪い笑みを浮かべる二人。
その間に、回線の準備が整った旨、飛鳥から報告が入る。
「よろしい。では第二幕といこうか」
回線のスイッチが飛鳥によって入れられた。
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