Code21
――神様。
――どうか、カイルさんが無事に帰って来るかを祈らせてください。
サラはエリスとともに祈りを捧げていた。
――サラさん、エリス。
「え? カイル、さん?」
パチパチと瞳を瞬かせる。
「ねぇ、ママ。パパの声が聞こえなかった?」
「エリスも」
「うん」
――サラさん、エリス。
また、聞こえた。
愛しい人の声が。
甘い、甘い声で二人への愛情が、詰め込まれていた。その声を聞いてドロドロにとろけてしまう。崩れかけた表情を慌てて隠す。言いたいことはたくさんあった。
眼差しを強くする。
「カイルさん」
「パパ」
――心配をかけてごめんなさい。
――ライエル騎士団長から、通信の魔法石を貰って話しかけています。
サラは息を吸った。
「バカ! バカ! カイルさんの大バカ!」
お腹から声を出す。
肩で息をした。
怪我をしているのに、私たちがどれだけ心配をしたか! わなわなと怒りに震えながら、声を張り上げた。サラとエリスの瞳には涙が浮かんでいる。
「パパのバカ!」
サラに負けないとエリスも怒る。
――言われる覚悟はしていました。
――決着がついたので二人の声が聞きたくて。
――ダメだったでしょうか?
「よかった! 生きてくれてよかったですわ!」
サラは五年前と同じ言葉を口にする。あなたは覚えていてくれているか分かりませんが、とつい言ってしまう。
――サラさんにその言葉を言われるのは二回目ですね。
ええ、そうですわ、覚えていてくれたのですね、と言いながら涙を拭う。あの時から、あなたは無理をしすぎですわ、仕事もありますし、休めないじゃないですかと苦い顔をする。
――ケアハウスの子どもたちは、どうしていますか?
「アイル先生のケアハウスの子たちと、仲良くやっています」
――よかったです。
――もう少しで帰れると思います。
――アイル先生にも怒られるでしょうね。
「アイル先生も住民もあなたに怒っています。それでも、皆待っています」
「パパ、待って!」
――エリス?
「さっきは怒鳴ってごめんなさい! 何があってもパパはパパだから! 大好きだよ! だから、早く帰って来てね!」
あらあら妬けてしまいますわ、ライバル出現ですわね、と頬に手をそえる。嫌がっている素振りはなかった。
むしろ、楽しそうだ。
――サラさん。
――子どもにしかもエリスに、妬けてどうするつもりですか?
「あら? 私の愛は狂愛だとご存じでしょう? 狂おしいほど愛していると言ったではないですか?」
サラはカイルとポンポンと会話を交わす。なるべく、普段通りにといったサラの配慮でもあった。このやり取りだけで二人の関係性が成立していた。
やはり、カイルはこうではないと思う。歪んでいたとしてもこれが、サラの「愛」でもあった。
愛情だった。
――覚えていますよ。
――お姫様。
「エリスも私も待っていますから、早く帰って来てくださいね」
「パパ! 帰って怪我がよくなったら、たくさん遊んでもらうからね! 約束!」
――約束だ。
――いっぱい、遊ぼうな。
――エリス。
サラとエリスと約束を交わしたところで、通信は終了したのだった。




