Code20
カイルとメフィスは切っても湧いてくる魔物に舌打ちをした。姿を消す魔法石の力を一時的に解除したのだ。
魔法石の力を魔法石を使っても対処できない。予想していた通りにフレイルは、リージュに攻め込まれていた。
すると、カイル、騎士団長、下がれ! と言う声を耳にした。カイルの目の前で物凄い勢いの炎が、魔物を焼き払っていく。火炎車が火を噴いたのだ。断末魔を上げて魔物が焼かれていく。仲間たちが魔物に切りかかっていった。
カイルはその光景に瞳を見開いた。まさか、一緒に戦ってくれるとは思ってもいなかった。もしかして、とメフィスを見ると、うっすらと微笑んでいる。
仲間を呼んでくれたのだ。
「皆!」
「ここは俺たちが引き受ける! 住民も避難させた! カイルは騎士団長と行け!」
カイルはメフィストと支配をしているアリスの居場所へと向かう。滅茶苦茶になってしまった町並みを見て、唇を噛みしめた。噛みしめすぎたのか、血の――鉄の味がする。
「気になりますか? フレイルの人間は皆強いから大丈夫ですよ」
カイルはメフィスから言われて顔を上げた。話している間に、アリスの本拠地に到着をする。カモフラージュの魔法石で姿を隠して、中に入った。
「おや? ネズミが入ってきたのう」
カイルとメフィスの姿が、アリスの前に晒されてしまった。ガキィン! と剣が交わる音が響いた。背後からは魔物が迫る。シールドの魔法石で防御壁を使って受け止めた。
ヒュオーとどこからともなく強い風が吹く。風の魔法石を使ったのである。あまりの強さに魔物たちが、空いている窓から吹き飛ばされていく。
庭の木に突き刺さった。カイルの思いの強さに魔法石が呼応したらしい。魔物たちはそのまま息絶えていった。
「アリス・リージュだな?」
「カイル・コールエン。お前はまた人を殺したなぁ?」
「まさか、中にロット・ウィーズリーが?」
「そうじゃ」
「ロット・ウィーズリーとつながっていると、聞いた時からいずれ衝突はするだろうと覚悟はしていました」
それでも、真っ直ぐ前を向いた。ブラウンの瞳が不敵に煌めく。
騎士団長! 押されているメフィスに、思わず声が出てしまう。血しぶきが上がった。メフィスの体がついに、ドサリ、と倒れていく。
血の海が床に広がった。
「ほら、お前一人になってしまったなぁ? カイル・コールエン」
カイルは一人で剣を受け止めた。ジリジリと押されているみたいに見える。
次の瞬間だった。
不意に空気が揺らいだ。
カイルとメフィスがいる空間が、ゆらゆらと揺らぎ始める。霧が発生していく。姿を覆い隠してく。先ほどまで戦っていたのは、本物のカイルとメフィスではない。霧でできている幻影である。見抜かれはしないだろう。
――何じゃ!
――この気持ち悪さと不気味さは!
――一体どこじゃ!
――どこにいった!
――何をした!
――霧でよう見えぬ!
ロットでさえも魔物に食べさせた冷酷さを、かなぐり捨てている。姿を消している最中にもアリスの混乱ぶりがよく分かった。
鉄壁だと思っていた防御が崩れていくとは、夢にも思っていなかったのだろう。魔物もロットに食べさせて力になるかと思っていたみたいだが、アリスにとっては誤算だった。ロット能力が予想以上に、低く何の足しにもならなかったのである。
ジリジリと攻められていく姿を、身に染みているみたいだった。その様子を眺めて、撃つなら今だと思った。
「その割には、隙だらけですね? アリス・リージュ女王陛下?」
カイルの甘い声がアリスの耳元で囁かれる。
「何じゃと!」
「僕たちはここですよ?」
霧が晴れていく。
本物のカイルとメフィスの姿が現れた。
体に傷の一つもない。
カイルは背中に銃をメフィスは、真正面から喉元に剣を突きつけていた。
「動くな。アリス・リージュ」
他人でも聞いたことのない冷たい声だった。カイルの声を聞いて、騎士団長として戦場を駆け回って来たメフィスでさえも、ぞくり、と背中に寒気が走った。
カイルの本気でもあった。
暗殺者としての顔を覗かせる。
五年の歳月をえて、再びスイッチが入ったのだ。眠りから目覚めたのである。
「お主ら……! どうやって……!」
僕たちが何も考えていないとでも? 口元には笑みが浮かぶ。余裕のある優美な笑顔だった。
「さようなら。アリス・リージュ。永遠の眠りについてもらいましょう」
引き金を引く。
『聖女の涙』が撃ち込まれる。
「嫌じゃ! 嫌じゃ! 我の力はこれぐらいで……! 世界を手に入れるまで、まだ死ねぬ……まだ!」
アリスの姿は溶けてなくなっていく。魔物も消えて行った。アリスの死によって、主が途切れのだ。魔物に飲み込まれたロットも生きてはいない。
「カイルさん!」
カイルの殺気が一瞬にして発散した。「カイル・コールエン」一個人へと戻る。ふらり、と傾いた華奢な体をメフィスは受け止めた。
成功をしてよかったと呟く。また、アイル先生と、サラさん、エリスに怒られてしまいますね、と不意に笑う。
「無理をしたのには変わりはないのですから、しっかりと怒られてください。さぁ、皆が待っている町に戻りましょう」
カイルは頷くとメフィスの手を、掴んで立ち上がった。




