↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/25

Code2

春、夏、秋、冬……。


 季節は巡って話は十年後へと移る。黒髪と新緑の瞳の少女――サラ・ユーズベルトは、貴族院イージス高等学院に通う第一学年だ。


 公爵家の娘でもある。


 サラが暮らすアイズリー王国は、鉄道もあって独自のスマートフォンも開発されていた。家への近道をしようと、いつもの近道をした瞬間だった。

 

 ドンッと誰かとぶつかる。

 歩いていた足を止めた。


 一人の少年とぶつかったのである。暑いのに長袖のタートルネックを着ていた。


「ごめんなさい。怪我はなくて?」


 サラから見ても瞳には光はない。深い、深い闇がある者の瞳だった。


 危うさすらある。


 小さい頃から、宝石や花を奇麗だとは思わなかった。血の流れる殺人をテーマにした本にはまっていく。図書館の本を読み漁った。感覚は世間一般では珍しく、狂っているとまで言われていた。ついたあだ名が『狂愛少女』である。


 何を言われていたとしても、惹かれていくのは闇を持った人物だった。まさに、目の前にいるカイルがそうだった。早く手に入れたい衝動にかられる。


 ――私にぴったりな人物を見つけましたわ。

 ――獲物は逃さなくてよ?


 サラは唇を舐めた。

 口元に笑みをのせる。


 飢えていた心が満たされていく。駆け抜けていことするカイルの腕を掴んだ。腕を掴んだまま、スマートフォンで電話をかける。


『お嬢様! また、帰りの車を無視して!』


 筆頭執事の声がキィン、と耳に響く。


「あら? 私は堅苦しいのは嫌いと言っているではありませんか。そうそう。迷子の子猫を一匹拾いましたの。準備をしておいてくださいませ」

『どういったおつもりで――』


 最後まで聞かずに電話を切る。数分も経たないうちに、高級車が横付けされた。腕を掴んだまま車に乗り込む。


 はい、使ってください、とタオルを渡す。何の反応もなかった。じれったくなって、雨でぬれた頭を拭き取っていく。サラの手をパシリと弾いた。それだけで、背筋がゾクゾクしていくのが分かる。



 ――そう。

 ――そうですわ。


 ――私はこれを求めていましたの。

 ――待っていたのです。


「ねぇ、あなた。学校は? 家族は? 家は?」

「お嬢様。そんなにストレートに聞いても、答えてはくれないと思いますよ」


 それでも、サラはジッとカイルを見つめる。興味津々といった眼差しだった。


 答えてくれるのを待つ。


「――てくれ」

「え? 何か言いまして?」


 聞き取れなくて、問い直した。


「降ろしてくれ」


 まだ、家までは距離がある。駅も遠い。中途半端な位置で降ろすわけにはいかない。仕方がないと、車を道の端に寄せて降ろす。


「これ以上僕に関わるな」


 サラはカイルを引き留められなかった。それから、しばらくして、家について車は駐車場に入る。着替えもせずに、父・レインの書斎に入った。サラに母親はいない。病気で亡くなっていて、レインに育てられていた。


「お父様!」

「ただいまぐらい言いなさい」


「私、新しい子猫を見つけましたの! 黒髪で茶色の瞳を持つ子猫でしたわ!」

「茶色の瞳と黒髪?」


 何か疑問でも? と首を傾げる。

 サラの前にタブレットを投げた。


 コードネーム:キサラギ。

 変装をしながら、凶悪犯罪者だけを狙う暗殺者。

 家族を殺した犯人を捜しているとも言われている。


「まぁ、この資料も噂でしかないけどな」



 ――面白そうじゃないですか。

 ――楽しめそうですね。


 胸がときめく。


「決めました! 私、この人を婚約者にします!」

「ダメだ! 仮にこの少年が<キサラギ>だとしたら、お前が傷つくだけだぞ!」


「お父様。私が狙った獲物は逃さないとよくご存じではなくて?」

「会社の人工知能を使って検索してみでほしいと?」


 ご名答と、にっこり、とサラは笑う。


 名前:ゼイン・アーガイル

 性別:男


 年齢:十六

 学校:私立ガーベラ高等学院第一学年

 家族:交通事故で死亡。


 ふぅん、と眉間に皺がよる。

 ざらり、とした感触がある。


 けれど、レインが開発をした人工知能が突破されるとは思えない。それでぞ、不穏な影を感じるのは確かだ。心からワクワクが止まらない。


 ――やっぱり、面白いですわ。


 新緑の瞳がキラリと光った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。