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Code17

 おい! カイルが……! カイルが……! 酒屋の扉がバンッと開いた。住民が息を切らして立っている。カイルがどうした? との声が上がる。


 子どもたちをかばって魔物に襲われた! 今、アイル先生のケアハウスで治療を受けている! 報告の声は悲鳴に近かった。

 

「おい! 嘘だろ! 魔物なんて今まで出没しなかったじゃないか! 闇の王国の奴ら……!」

「だから……!」


 男はドサッ、ドサッ、ドサッと何冊もの分厚い本を机に投げた。全部、魔物に関するものだ。カイルのために少しでも勉強をしよう。


 ページをめくる音だけがする。


 結局、分かったのは魂を売って契約をし、魔物たちを操られる力のみとしか書かれていない。倒す方法などは書かれていなかった。


「一つだけ――一つだけ方法がある」


 声を絞り出した一人の男に、視線が集中をした。ジャンク屋の武器に強いこの男なら期待ができる。


「何だ?」

「『聖女の涙(セレナーデ・ブラッド)』」


 昔、世界にはとある聖女がいたらしい。戦争が続き悲しみ嘆いて、流した涙から作られたとの説明が、フレイルの伝記に残されている。


 伝記の中には契約者と魔物を一発で、倒せる銃弾だと書き示されていた。騎士団のよって厳重に管理されている。


「あいつに……! あいつに……! 武器を持てと言うのか……!」


 非難の声が飛んできた。


 どしん、どしんと地鳴りがした。

 

 外を見ると魔物が列をなして歩いている。そのうちの一匹と目が合った。魔物が口を開いて向かってくる。反射的に武器を掴もうとしたがパッと離した。


 ゴロゴロと雷が轟いた。

 雷がぴしゃりと落ちる。


 魔物が焼けただれていく。

 魔法石が発動したのだ。


 残りを騎士団が馬で走り回って駆逐していく。青い血しぶきが上がった。


「ライエル騎士団長!」

「怪我はないですか?」


「貴様!」


 ジャンク屋の男がメフィスの体を壁に押し付けた。ギリギリと締め上げる。剣呑な空気になった。周囲がジャンク屋の男を引き剥がす。


「俺はあいつの武器を持たせるなんて反対だ! あいつがどんな思いでこの町に流れて来たのか、知っているだろう……!」

「彼の過去を知っているのですね?」


「知っているさ! ジャンク屋の情報網を舐めるよな! だがな! それ以外に、俺たちにとってカイルは家族だ! 仲間だ! あいつを失くしたくねぇだけだ!」


 基本、アイル以外には触れさせず、ケアハウスから出ようとはしなかった。怯えて閉じこもっていた。その後、少しずつ笑顔を見せてくれた日を、今でも覚えている。笑顔を見られて、どれだけ安心できたか知らないだろう。


 なのに、能力を利用するために声をかけたお前たちに、怒りしかない! と吐き捨てた。


「知っているのなら、話は早いです。生きるのか? 死ぬのか? あなたはどちらを選びますか?」

「なら、俺たちも戦う! それが、条件だ!」


 我慢なんてできなかった。

 黙るなんてできなかった。


 ジャンク屋の男はパチンと指を鳴らした。火器銃やライフル銃やナイフと剣を持った男たちが入ってくる。


 外には火器のついた戦車や装甲車まで。


 ジャンク屋の男はメフィスの口が僅かに、持ち上がったのを見た。


 ――この男……!

 ――もしかして、この言葉を言わせたかったために、挑発をしたのか……!


 ハッとした。


 自分たちならカイルと一緒に戦ってくれる。それに、炊きつけて挑発をしたのだ。


 最初から目をつけていたのである。


 力になってやってくれといわんばかりに。

 回りくどい奴だな、そう言えばいいのにと毒づいた。



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