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天尊降臨 ~神々の子は諸天万界を旅する~  作者: ポンタ
第二章 丐幇の乞食・乞凡
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覇雲派の支部

 翌日、凡吉が目覚めて拠点の居間に行くと、そこには誰もいなかった。気配を探るが、どうやら今、ここには誰もいないようだった。


(それなら……)


 凡吉は丐幇(かいほう)の拠点を後にし、周囲に自分を監視している者がいないことを確認して、一気に隠形の装具や功法を用いて覇雲派の支部に向かった。

 屋根伝いに支部へ向かうと、それなりの人影が見えた。どうやら覇雲派は、本腰を入れて飄雲派の件を調査するらしい。

 凡吉は『神通経』の功法の一つ、『天耳通』を使用して覇雲派の支部から聞こえる話し声に耳をすませた。


「まったく……なんで俺らがこんなことしなくちゃいけないんだ!」

「仕方ないだろう? 飄雲派はザコばかりだが、規模も多く仕切ってる商売も多い。それが壊滅したとなったら、天雲門も重い腰を上げなきゃだし、最後に残ってるウチに声がかかるのは当たり前だ」

「そりゃそうだけどよぉ……なんで掌門人様直々に指揮してるんだ?」

「それだけ、この件に本気で取り組むってことだろ?

 ウチは天雲門以外に飄雲派からも金や資材をもらって強くなったんだ。

 ここらでその成果を披露しねぇと……」


 そこで、男は自身の首を掻き切る動作をする。


「マジかよ……」

「まぁ、あまり詮索しない方が身のためだぜ。じゃなきゃ、消される」

「うぇぇ……」

「まぁ、とにかく仕事だ仕事。手分けして城内の連中に聞いて回れって指示だ。二人一組で行動してくれ。あと、お上には目をつけられるなって話だ。どうも城主がなびかねぇらしい」

「どうしてまた……」

「さぁな。とにかく行くぞ」

「おう」


 次に凡吉は、支部の中で一番強い気力を発している人物に目星をつけ、耳をすませる。


「…やはり状況から考えて、一番怪しいのは玉修門かと……」

「そうか……して、飄雲派の連中の足取りについては?」

「残念ながら、未だに……掌門人さえも行方が掴めません」

「むぅ…玉修門は衰退しているとはいえ、帝国の忠臣たる正道門派だ。しかも、未だに昔の考えに囚われておる。

 謀(たばか)り事(ごと)や暗殺など、出来ようはずもないのだが……」

「……やはり、中原帝国以外の勢力の仕業でしょうか?」

「……戦元帝国…西戎国に北海氷宮…どれも天雲門とはいざこざなど起こしておらん。もしや…我々が知らないだけで、飄雲派の連中が何かしでかしたのか?」

「そうかもしれません。飄雲派は我々よりも世俗に関わっていましたから……どこかで恨みを買っていてもおかしくはありません」

「ふむ……まぁ、門主がこの城の城主を連れて玉修門を牽制(けんせい)してくださったおかげで、時間はある。まずは場内の情報収集を徹底せよ」

「かしこまりました、掌門人」


 凡吉はここで、支部の捜索を切り上げることにした。

 どうやら、今のが覇雲派掌門人の万来安のようだ。相手はおそらく覇雲派の長老だろう。

 そして、今の会話から察するに……覇雲派の面々は、飄雲派の消失の滅門について凡吉が一人でやったとは気づいていないらしい。むしろ、外部から攻撃されたことを念頭に置いているようだ。

 それならば、こちらもしばらくは時間が稼げるだろう。


(一度、報告しよう)


 報・連・相は大事……おそらく、どこの世界でも同じだろう。

 凡吉は隠形の功法と軽功を用いて玉修門に戻り、精華門主が執務室にいるのを把握して近くに降り立ち、窓を軽く叩いた。


「っ⁉」


……考えれば分かることだが、精華門主はびっくりして振り返るが、凡吉を認識するといつもの調子に戻って窓を開ける。


「凡吉?」

「ご報告に参りました」

「えっ、もう?」

「はい」

「あ、ええ……そこの椅子に座って」


 凡吉は精華門主に執務室に招かれ、机の横の椅子に腰掛ける。精華門主も姿勢を正して凡吉の話に耳を傾けた。


「――なるほど……」


 凡吉からの報告を聞いた精華門主は、大きく息を吐く。


「まさか掌門人まで来ていたなんて……」


 精華門主はそのまま黙り込むが、少し経つと凡吉に目をやった。


「凡吉。申し訳ないのだけど、引き続き覇雲派と天雲門について情報を集めてくれる?

 それから、飄雲派に関して何かつかんだらすぐに報告をお願いしたいんだけど……いいかしら?」

「はい」

「ありがとう。これからもよろしくね」


 凡吉はその言葉に頷くと、そのまま静かに退出する。当然、誰にも見られていない。


「――護法大陣が発動しなかった……あの子、本当にすごい……」


 一人になった精華門主は、凡吉の手腕と忠誠に感服しながらそう呟いた。


            ※


 その後、凡吉は北山城に戻り、再び乞食の『乞凡』として丐幇の拠点に戻った。居間には誰もおらず、気配を探っても感知しない……まだ誰も戻っていないようだ。

 凡吉は自分の居室に戻り、これからの事を考えた。


(……飄雲派の情報を集める必要はない。僕がやったんだから…。

 それよりも、覇雲派と天雲門をどうするかだ。少なくとも、覇雲派の掌門人はこの北山城にいる)


 しかし、だからと言って下手に手出しは出来ない……自分の独断で飄雲派に手を下した結果、こうなっているのだから…。


(となると……覇雲派の監視、か……)


 運が良ければ、天雲門に関する情報も入ってくるかもしれない……凡吉はそう考えて、拠点を後にした。

 まず、拠点周辺に誰か潜んでいないか探知し、いないことを確認するとそのまま隠形の装具と功法、軽功を使用して、覇雲派の支部に向かった。

 支部にたどり着くと、凡吉は支部周辺を注意深く監視する。

 すると、徐々に人影が集まってきた。どうやら、昼過ぎの時間になって城内に出ていた支部の人員が続々と戻ってきているらしい。そして、そのうち一人が口を開いた。


「おい、何か見つかったか?」

「いや、ダメだな……それにしても、飄雲派の連中はどこに行っちまったんだ?」

「さぁな……まさか、みんな死んでるなんてことはないよな?」

「わっかんねぇ……ただ、変な噂があった」

「噂?」

「ああ、なんでも飄雲派のほとんどの弟子達はこの支部で行方が分からなくなったが、掌門人とその側近達は城外で行方不明になったらしい」


……どうやら、凡吉のやったことは徐々に覇雲派や天雲門に知られているらしい。

――凡吉は今回得た情報もすぐに精華門主に報告し、そのたびに門主から情報収集を命じられる……そんなことを、数日間繰り返した。

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