ただひたすら、修練
飄雲派の北山城支部が事実上、壊滅してからの数日間――凡吉は午前中は使用人として働き、午後は内門堂で修練、夜もまた自分の小屋で修練という日々を過ごした。
しかし、表面的に凡吉には変化がなかった。そのせいか、内門堂の師範代達は次第に凡吉に対する興味を失っていったが、それこそ凡吉の望みだった。
(……どうなるんだ、これ……)
小屋の寝台に寝転ぶ凡吉の眼前には、『諸天万界』の画面があった。そこには以下の表示がある。
行者:凡吉
境地:練体境円満(練体境:21段)
練体境21段とは、この世に存在しない境地だった。それを可能にしたのが、『隠道大化訣』の力である。おかげで凡吉は目立たずに平穏な日々を送れている。
そして、凡吉はこれまで修練に励む一方、『諸天万界』の権能を可能な限り活用していた。
その最たるものが、融合である。以前から告知マークが出ていたが、実行するには少し心の準備が必要だったため先延ばしにしていたが、とうとうそれを実行した。
最初に行ったのは、飄雲派支部から持ち出してきた功法の融合である。
その結果として、凡吉は『飄雲功(円満)』を獲得した。使うとしたら、自分を飄雲派の高弟として認識させる程度のものだろうが、未だに飄雲派が健在な今、獲得して損はない功法だ。
そして、『飄雲功』に修められている軽功の一つである『飄雲歩』と、玉修門の蔵書閣で修得した『猛虎跳』を融合して生まれた『虎相軽功』を、経験値を使用して『基礎』から『円満』へと昇格させた。
すると、『昇格』の項目が出たので、迷わずそれに同意すると、『虎相軽功』は『虎相飛天功』に昇格した。
凡吉はその功法を『基礎』から『円満』まで昇格させる。
【功法】
虎相飛天功(円満)
効果1:俊敏性上昇(大)
効果2:跳躍力上昇(大)
効果3:移動時の体力消耗低下(中)
効果4:障害物回避能力上昇(大)
このように、経験値を使用して昇級、昇格を繰り返して強くなる功法が、貯蔵塔や修為塔にはごまんとある。その中には『千里遁』のように非常に役立つものもあった。千里遁の効果は以下である。
効果1:長距離移動能力の向上(大)
効果2:追跡からの逃走成功率の向上(大)
効果3:不意打ちの成功確率の向上(中)
効果4:長距離を移動した際の疲労度減少(大)
効果5:周囲の地形情報の取得能力向上(中)
効果6:特定の地点への直線的移動能力の向上(中)
これと『虎相飛天功』は非常に便利な軽功であり、今後の人生にも役立つだろう。残念ながら、この二つの功法は融合することが出来なかった。
そして、凡吉はここ数日の修練を通じて、『諸天万界』の経験値を使用せずとも功法の昇格に成功していた。
代表的な功法は、『五行訣』である。今は境地が『基礎』から『初級』になった。
それにより、凡吉は五行とそれに連なる属性の気を発現することが出来るようになったが、そこは初級……威力は知れたものである。
そして、一番実りある成果は、『神祇』を獲得したことだった。
意外だったのは、『融合』の権能は称号以外にも功法や技能、物品などもごちゃ混ぜにして融合できることで、そのおかげで『諸天万界』内のあらゆる塔の枠が空き、強力な能力を得ることが出来た……名称は不気味だったが。
一番最初にやった融合は以下の通りだった。
【神魂】
殺戮衝動
共情拒絶
恐怖支配
【称号】
鮮血の支配者
無慈悲なる狩人
非道な執行者
狂気の処刑人
猟奇的殺人犯
殺人鬼
連続殺人鬼
大量殺人犯
殺戮者
災厄の化身
魔王
暴君
【物品】
魔王魂核
亡者の血肉×10
すると、現れたのは『称号』ではなく、『神祇』の『殺戮神帝』だった。効果は以下の通り。
効果1:殺戮の快楽
生命体を殺害すると、体力・気力が全回復。
効果2:生命の簒奪者
生命体に対する攻撃力上昇(極大)
効果3:殺戮領域
自身の半径10メートル以内の生命体の知覚能力低下(極大)
効果4:自己犠牲
自己を危険に晒す行為が引き金となり、全能力上昇(極大)
効果5:殺戮の帝座
生命体への加害行為による、対象の身体的・心理的ダメージ上昇(極大)
生命体への加害行為による、自身の心理的負担の無効化。
効果6:恐殺眼
自身と同等か低い境地の生命体を恐慌状態にさせる。恐慌状態の生命体を死亡させる(選択可)
効果7:殺戮の饗宴
自身が指定した生命体が死亡するたびに、『諸天万界』の各塔へ上級の報酬贈呈
効果8:殺戮神の魂核
自身がなんらかの損傷を受けても、魂核が破壊されない限り完全に回復する。
効果9:殺戮の支配者
生命体を殺害した場合、追加で経験値を獲得(極大)
生命体を殺害した場合、精錬値を獲得(特大)
効果10:暴虐の神祇
自分と同等か低い境地の生命体に対して全能力上昇(極大)
効果11:終焉の双眼
生命体の精神力が一定値まで低下した時、任意のタイミングでその生命体を死亡させる。
効果12:神魔の血統
生命体に対して、自身の血を飲ませると、対象を隷属化(極大)・魅了効果(極大)
効果13:狂殺神
生存本能が刺激される瞬間、全能力上昇(極大)・治癒速度上昇(極大)・自動的に生命維持機能発動
(……僕、やっぱり化け物になっちゃったのかな……)
その効果を見て、凡吉はそう思った。このままこの能力が発現したら、恐らくどこに行っても迫害され、魔教や邪教などに受け入れられても警戒されるだろう。
しかし幸いなことに、神祇の権能は任意に操作することが出来るようだ。これならば、日常生活も容易に送れるだろう。
そして次に、以下の融合を試みた。
【称号】
暗殺者:自身の存在を認知しずらくなる(小)
暗殺の達人:自身の存在を認知しずらくする(大)暗器を使う際、威力を高める(中)・不意打ちの成功確率を高める(小)
【功法】
闇遁秘法(中級):内功を操り、周囲の暗がり・影と一体化する秘術。姿を隠したり、気配を消すことができる。また、光を吸収することで自身の力を高める効果もある。
隠息功:自分の修為を隠すことが出来る。自分より境地が高い相手には無効。
隠形功:自分の姿、気配を消すことが出来る。自分より境地が高い相手には無効。
迷踪步:攻撃の瞬間を悟らせないようにする歩法。
無影功:自身の影を内功によって不可視化させる。
魔影功:影に潜み、自在に移動できる。自分の存在を隠匿することが可能(大)
隠殺功:自身が認識している相手に対する不意打ち成功率が高く、隠蔽工作も容易にこなせるようになる。
潜影移形:暗殺に特化した歩法。
【技術】
無音行動:足音や呼吸音などの微細な動きを消す技術。潜入や暗殺に適している。
暗殺術(中級):不意打ちや奇襲などを中心とした戦闘技術。
【物品】
冥葬刀:黒曜石のような漆黒の刃を持つ小太刀。極陰の気力を帯びており、相手の生命力を吸収する性質がある。
幽影衣:薄手ながら高い防御力を誇る外套。着用者の存在感を薄め、視認されにくくする効果がある。
暗殺指南書:暗殺に関する知識やノウハウが記された文書。
空月刀:薄くて鋭い、片刃の曲刀。使用者の意図により、斬りつけた対象の血や痕跡を消すことができる。
幽玄鎧:軽量で頑丈な軽鎧。装着すると気配を遮断する効果(大)
冥天羽衣: 素早さが上昇(大)・隠密行動時の気配遮断能力上昇(特大)
冥天刺:暗器。気配遮断状態での攻撃力上昇(特大)
鬼哭杖:泣き声のような音を立てて振動する不気味な短い杖。
影死鈴:自分の影を利用して敵を暗殺する武器。
暗色布:夜目に映りにくい布。寒さ暑さにも強い。
鬼面兜:人の顔を模した仮面。装着すると、使用者の印象を消し去る効果がある。
その結果、新たに獲得した『神祇』の名は『隠形殺神』である。効果は以下の通り。
効果1:隠界の理
あらゆる存在から、自身の修為・境地・姿・動作音・気配を認知出来なくさせる(選択可)
効果2:暗殺の極意
奇襲攻撃の成功率・攻撃力上昇(極大)
暗器を使用した攻撃力上昇(極大)
奇襲攻撃によって生命体を殺害した場合、自身の体力・気力が全回復。
効果3:猟殺の権能
地形・建物・自然を巧みに利用し、罠などを設置する技術が向上する(極大)
罠の発動率上昇(極大)
生命体・霊体などを罠などで殺害・消滅させた場合、自身の体力・気力が全回復。
効果4:影の支配者
暗がり・影などに身を潜めることが出来る。また、生命体や物品の影に攻撃することが出来る。影を攻撃された対象は、本体にも同様のダメージが与えられる。
自身の影が存在を攻撃した場合、攻撃力上昇(極大)
効果5:殺意の双瞳
遠見能力・広域感知能力の向上(極大)
他者の能力・弱点などを瞬時に理解することが可能(極大)
効果6:暗殺の神祇
奇襲攻撃により生命体・霊体などを殺害・消滅させた場合、経験値獲得量増加(極大)・精錬値獲得量増加(特大)
――それを見た凡吉は思う。
(これはもう……隠すしかないよなぁ……)
そして、彼はそのまま寝台の上で眠りについた。




