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天尊降臨 ~神々の子は諸天万界を旅する~  作者: ポンタ
第一章 玉修門の使用人・凡吉
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これまでの軌跡

 その後、凡吉は天璃堂主と共に内門堂の修練場に向かう。

 ここでは、内門堂に入りたての弟子達が思い思いに修練に励んでいた。師範代達は、その様子を静かに見守っている。


「内門堂では、基本的に師範代から何か指示されることはないわ。

 その代わり、身の回りのことはもちろん、修練だって自分でなんとかしなければいけない。

 師範代達はその様子を見て、弟子を自分の直伝弟子として迎え入れるの」

「分かりました」

「それじゃあ、凡吉。あなたも好きなように修練しなさい」


 そう言い残して、天璃堂主は立ち去った。


(さて、どうしようかな……)


 内門堂入りたての弟子達は、その大半が外門武闘会の成績優秀者だ。そのため、誰もが一般人の力量を越え、修練者としてそれなりの基礎が出来つつある。しかも、玉修門に至っては全員が女性だ。

 凡吉はつい先ほどまで使用人として働いており、性別は男性……本来、ここは自分がいて良い場所ではない。

 しかし、母上を含む上層部の判断で、自分は今ここにいる……その状況を、他の人達は歓迎しないだろう。特に、実力がものを言う価値観の世界では。


(……頑張るか……)


 凡吉は内門弟子達の修練風景を観察する。

 ある者は剣を振るい、またある者は拳を突き出し、さらに別の者は足技を繰り出している……そんな光景を見ながら、凡吉はぼんやりと思った。


(この光景……懐かしいなぁ…)


 かつては、自分もああいう風に汗を流しながら修練に明け暮れていた時期があった。あれはまだ幼かった頃の話だ。

 そう、自分が虚無体質だと知らされてもなお、なんとかなるはずだとガムシャラになっていた頃……今となっては、遠い昔のように感じる。


(あの時は、こんな未来が来るなんて思いもしなかったけど……)


 だが、人生は何が起こるかわからない。だからこそ面白い。

 自分は今、過去の自分が望んだ未来を生きている。これからどんな風に変わっていくのか……楽しみだ。そんなことを考えているうちに、徐々に周りの弟子達の動きが目に馴染んできた。


(そういえば、飄雲派支部の報酬の確認とか、色々やることがあるな……)


 そう思い、凡吉は修練場の隅に移動して座禅を組み、修練しているフリをして『諸天万界』の画面を眼前に映す。そこには、こう表示されていた。


行者:凡吉

境地:練体境円満


(練体境円満……玉修門だと外門堂の上位って大長老が言ってたな……)


 それに、門主達いわく小さな門派や家門であれば長老格ということなので、もはやただの凡人ではないだろう。平穏な第二の人生を謳歌するためには、今後より一層、慎重な振る舞いを心掛けないといけない。そう肝に銘じて、『奨励品』の項目を見る。


練体境修練パック×4

練体境円満達成記念パック

『初めて情報収集をする』達成パック

『下汚門(かおもん)に依頼して情報収集する』達成パック

『初めて暗殺する』達成パック

『一度に10人以上暗殺する』達成パック

隠された道『丐幇の一員になる』達成パック

隠された道『万福商会の最貴賓客卿になる』達成パック

隠された道『飄雲派北山城支部を壊滅させる』達成パック


 画面にはそう表示されていた。凡吉は首をひねる。


(下汚門?)


 凡吉の記憶では、そのような門派とは接触した記憶がない……少し記憶の糸を辿っても、やはり思い当たる節がない。


(まぁ、いっか)


 いつもの調子で、凡吉はまず、『初めて暗殺する』達成パックを開封した。


【称号】

暗殺者:自身の存在を認知しずらくなる(小)


【功法】

隠息功:自分の修為を隠すことが出来る。自分より境地が高い相手には無効。

隠形功:自分の姿、気配を消すことが出来る。自分より境地が高い相手には無効。

万相経:性別以外の外見や声、境地や気運を完全に変えることが出来る。


(……これは凄いな)


 隠息功、隠形功、万相経。どれも使い方によっては非常に強力な効果を持つ。

 特に『万相経』は興味深い。性別以外の外見を完全に変えられるというのは、つまり他人になりすますことも可能ということだ。このスキルを使えば、面倒事に巻き込まれることもなくなるかもしれない。

 もちろん、使い方を誤れば逆に厄介なことにもなりかねないが……それでも、自分の身を守る上で非常に有効な手段であることは間違い無い。

 しかし同時に、悪事に使用してそれが露呈した場合……おそらく自分は、最悪の死にざまを見せることになるだろう。これらの功法は、使用に際して慎重にならなければならない……要は、心の持ちようというものだろう。

 そう結論付けた凡吉は、次に『一度に10人以上暗殺する』達成パック』を開封する。


【称号】

暗殺の達人::自身の存在を認知しずらくする(大)・暗器を使う際、威力を高める(中)・不意打ちの成功確率を高める(小)


【功法】

迷踪步:攻撃の瞬間を悟らせないようにする歩法。


【物品】

空月刀:薄くて鋭い、片刃の曲刀。使用者の意図により、斬りつけた対象の血や痕跡を消すことができる。

幽玄鎧:軽量で頑丈な軽鎧。装着すると気配を遮断する効果(大)

黒縄飛鏢:漆黒の麻縄と一体になった鏢(ひょう)。かすめただけでも、燃えるような痛みを与える。


 次に、隠された道『飄雲派北山城支部を壊滅させる』達成パックを開封した。


【功法】

魔影功:影に潜み、自在に移動できる。自分の存在を隠匿することが可能(大)

幻妖法:幻覚を見せ、幻影に触れた者は一定時間行動不能となる。

隠殺功:自身が認識している相手に対する不意打ち成功率が高く、隠蔽工作も容易にこなせるようになる。

潜影移形:暗殺に特化した軽功。


【物品】

星塵網:撒くと周辺に大量の細かい網がばらまかれ、罠として機能する。罠にかかった者は、数日間全身麻痺状態になる。

呪血珠:生命体の血液を腐敗させる効果を発揮する数珠。

呪刻刃:生命体に使用することで、身体・精神を破壊し続ける呪物。

幽冥鎖:霊魂を拘束する鎖。生命体の精神を直接傷つけることも出来る。

死絞縄:使用者に敵意を持つ生命体を自動追尾する縄。掴まれたら、窒息死するまで締め付ける。

影死鈴:自分の影を利用して敵を暗殺する武器。

金蝋:金色の蝋燭。火を灯すと強い眠気を引き起こす煙を放つ。

霊犀針:霊力を込めて打つことで、相手の霊脈を穿つことに特化した針。

玄武刺:玄武の甲羅の鱗片を切り取った矢じり。万物を貫く力を宿している。

迷幻粉:粉末状の薬品。吸い込むと五感が麻痺する。

暗色布:夜目に映りにくい布。寒さ暑さにも強い。

鬼面兜:人の顔を模した仮面。装着すると、使用者の印象を消し去る効果がある。

妖気糸:使用者の感情に呼応して形を変える糸状の物体。触れた生命体の肉体を腐食、精神を錯乱させる。


……予想はしていたが、不穏な報酬ばかりを受け取ることになった。

 しかし、それが自分がやってきたことの軌跡なのだろう……凡吉はパックを開ける手を止めない。


『初めて情報収集をする』達成パック


【称号】

探偵:情報収集の際に、得られる情報が増える(中)・推理力が向上する(中)

洞察者:真相を見抜く能力に長けている。目利き技能が向上する(中)

好奇心旺盛:些細な違和感を察知しやすくなる(中)


【技能】

読心術(初級):相手の表情や仕草などから、感情や思考などをある程度推測できるようになる(小)

観察眼(初級):情報収集が容易になる(小)


『下汚門に依頼して情報収集する』達成パック


【称号】

情報屋:他人よりも情報を手に入れやすくなる(中)


【技能】

交渉術(初級):対人交渉における能力を強化する(小)

暗示術(初級):相手に対し暗示をかける(小)相手が暗示を受け入れやすい場合、成功率が上がる。

心理学(中級):人間の心理についての理解が深まる。また、自分に対する言動や行動パターンから心理状態を分析できるようになる。


(……これは……かなり便利な能力だな)


 情報収集は、どんな分野においても重要な要素の一つだ。これらの能力を活用すれば、今後の生活も多少楽になるかもしれない。とはいえ、あまり安易に使って問題を起こさないように注意が必要だが……。

 凡吉は次に隠された道『丐幇の一員になる』達成パックを開封する。


【称号】

丐幇の一員:丐幇を援助する義務が生じる。丐幇からの支援を受けることが可能になる。

下賤:生命体への心理的な威圧効果(微)・人間から見下されやすくなる(中)

忍耐:苦痛に対する耐性(中)・体力回復速度向上(小)・寒暑への適応力向上(小)

義侠無双:弱きを助け強きを挫くという信念を持つ者に与えられる。称号効果なし。


【功法】

丐幇護身術(初級):丐幇独自の功法。相手からの攻撃を防御・回避すると同時に攻撃し、逃走する武功が多い。また、内功を使用して受けた攻撃の一部を相手に反射する功法も存在する。

乞討術(初級):他人から物資を譲ってもらう時の成功率が上がる(小)

食鋼鉄腸(基礎):いかなる毒物も消化する体内環境を手に入れる(極小)


【物品】

浮萍瓢:浮萍(うきごけ)という名前の植物を加工して作った瓢箪(ひょうたん)。中には液体を入れておくことができる。常に液体が浄化される機能が備わっている。

碧雲靴:雲のような軽さを持つ革製の靴。履いている者の機敏性を上げる効果があるとされる。また、足音を消す効果もある。

万鈍棒:棒状の武器。殴打による衝撃波を利用した攻撃が得意で、主に接近戦で使用する。


(……まぁ、こんなものだろう)


 次は、隠された道『万福商会の最貴賓客卿になる』達成パックを開封する。


【称号】

万福商会の最貴賓客卿:万福商会の最上位会員。万福商会の商品・サービス等を利用する際、特別待遇を受けることが出来る。

商人:物品に関する鑑定能力を強化(微)

商売繁盛:商業活動における利益率向上(中)。

金持ち:所有する財産の量に応じて影響力が変動する(中)。

豪商:金銭に関するトラブルに対して対処する力が向上する(中)

交渉上手:商談時に有利な条件を引き出す可能性が高まる(中)

貴顕高名:社会的地位の高い者に対して敬意を払って接される傾向がある。

富豪:金品が増加する速度が速まる。金を多く所持している時に得られる恩恵が増える。


【技能】

算術(中級):計算処理能力を向上させる(中)

法律知識(中級):契約書などの条文を読み解き、理解する能力(中)

交渉術(中級):対人交渉における能力を強化する(中)

豪運:運勢が極めて良好となる。様々な場面で幸運が舞い込みやすくなる(大)

商才(中級):商品販売における能力値向上(中)

経営学(中級):組織運営に関する知識(中)

招福運功:自身の運気を向上させ、災難に遭いにくくなる。幸運を呼び寄せる効果もある。

投資術(中級):資産運用に関する知識(中)

弁舌巧み:交渉時における説得力や印象を高める(中)

商品鑑定(中級):物品の価値を見極める(中)

会計学(中級):会計業務、経営管理などの知識(中)

販路開拓(中級):新たな販売先を見つける(中)

帳簿管理(中級):会計処理を迅速に行う(中)

簿記術:帳簿作成、管理能力に補正が入る。

商談の奥義:交渉において優位に立てるような話し方を習得できる。

才気煥発:思いつきやひらめきが豊富になり、アイディアが浮かびやすくなる。

柔軟思考:臨機応変な考え方をする事が出来るようになる。

多角視点:複数の角度から物事を見ることが可能になり判断ミスが少なくなる。

人心掌握:相手の信頼を得やすくする。

見識卓抜:物事の本質を見抜く力が養われ判断力が向上する。

戦略立案:全体像を把握した上で最も有効と思われる策を考えられるようになる。

状況分析:現在置かれている状況を正確に把握できるようになる。

演算処理:計算能力が飛躍的に上がり複雑な計算であっても即座に答えが出せる。

多重思考:同時に複数のことについて考える能力を持つ。一度に処理可能な情報量の上限が増える。

並列処理:二つ以上の異なる作業を同時進行することができるようにする。

高速記憶:短時間で多くの情報を頭の中に覚え込むことが可能になる。

精密操作:繊細な動作を行う際に高い精度を維持し続けられるようになる。


……ある程度は予想していたが、どうやら商売に関する能力や思考能力を向上、強化させる報酬が多い。


(……悪くない)


 今は必要としていないが、あるに越したことは無い。自分にとっても、玉修門にとっても。

 ひとまず凡吉は練体境関連のパックを置いておき、経験値で『隠道大化訣』を『円満』の境地まで引き上げた。


隠道大化訣(円満):大境地の突破を難しくする一方、小境地の限界を突破して実力を上げ続ける。


 これこそ、凡吉が求めていた功法だった。

『諸天万界』の権能とそこから得られた数々の恩恵を使えば、一気に強くなれるだろう。

 しかし、それは同時に、自身の存在を目立たせることにつながる。なんせ凡吉は、ついこの間まで修為を得られない凡人だったのだ。

 それがいきなり強くなっては、周囲は喜ぶどころか困惑し、最悪凡吉をどうにかしようと考える人も出てくるだろう。

『大境地』とは、修練者にとっての入門となる『練体境』や、次の境地である『練気境』を意味する。

『小境地』とは、その大境地からさらに強さの位が分かれ、一番弱い段位が一段、もっとも強い段位が円満だ。

『隠道大化訣』の功法、それも『円満』の功法は、練体境小境地の『円満』を突破して、実質的に『練気境』の強さへと昇華させるものだった。

 これならば、目立たずに済む……無論、大境地の突破――練体境から練気境への突破は難しくなるだろうが、目立って厄介事に巻き込まれるよりはマシだと凡吉は考えた。

 その後、凡吉は凝気丹を服用しながら内門堂の隅の一角で修練に励んだ。

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