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天尊降臨 ~神々の子は諸天万界を旅する~  作者: ポンタ
第一章 玉修門の使用人・凡吉
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飄雲派の遺産

 異界珍品堂を後にした凡吉は、中央通りが徐々に賑わってきていることに気付いた。空を見ると、すでに朝日が昇り始めている。

 露店の店主達は今日も稼ごうと準備に取り掛かり、朝飯の良い匂いが漂ってきていた。

 凡吉は、とりあえず今回の成果の確認と修練も兼ねて、再び飄雲派支部がある通りに向かった。

 そこに向かうと、ちらほらと人影が通りを行き来している……だが、支部は相変わらず静かなままだ。

 凡吉は支部を監視できる場所に腰を下ろし、貯蔵塔から一枚の木の皿を取り出して目の前に置く……これで乞凡としての人生が始まる。

 そして、貯蔵塔に収納されている物品に一通り目を通した。すべての品を確認できたわけではないが、かなりの量が保管されていたことを確認する。

 それらを視界の隅に映る『整頓』の文字を押して整え、飄雲派から略奪した日用品などの資器材は、ほとんど精錬塔で精錬値と交換した。

 結果、精錬値を10000点獲得し、凡吉は『諸天万界』の権能を進化させようとするが、


経験値10万点/精錬値10万点で、『諸天万界』の権能を進化出来ます。


 と表示されたので、諦めて『瑞宝塔』に載せられている品々に目を移した。相変わらず、豪華な至宝からよく使う日用品まで、何でも取り揃えているようだ。

 しかし、今はこれといって欲しいものはない。

 凡吉は次に、『貯蔵塔』に保管してある林徐福からもらった銀細工の玉牌と、好意でもらった玉佩を確認した。


【物品】

万福商会・最(さい)貴(き)賓(ひん)客卿(かっけい)玉牌(ぎょくはい):万福商会の会長が認めた者だけに渡される玉牌。この玉牌を持つ者は、万福商会で様々な恩恵を受けることが可能。


翡翠(ひすい)龍(りゅう)玉佩(ぎょくはい):龍族を祭る氏族によって伝承された玉佩。その深い意味は知られていないが、龍族の加護を宿していると言い伝えられている。所有者が求める力の一端を引き起こす可能性があると言われている。ただし、それがどのような力なのかは、所有者次第である。


(……あの人、万福商会の会長だったのか……)


 ただの老人が、実は大物だった……異世界物ではよくあることだが、自分がその当事者になるとは思わなかった。もちろん、嬉しいことに変わりはないが……。

 それに玉佩(ぎょくはい)の説明は曖昧だったが、もらって損はない。

 凡吉は画面を戻し、今度は持っている天授宝珠をすべて取り出して、説明欄を見る。


天授宝珠:潜在能力を解放する宝珠。また、使用者の丹田・識界を強化する


(なるほど……)


 凡吉は迷うことなく六つの天授宝珠を使用して、修練に励んだ――しばらくすると、支部の方からざわめきが聞こえる。

 宝珠の力で強くなった凡吉は、目を開けてそちらを見る。そこには、先日見た王曼玲達の姿と、複数名の官吏の姿があった。官吏の方は、おそらくこの北山城の者達だろう。

 皆は一様に飄雲派の支部を遠巻きに見ながら、話し込んでいるようだった。そんな様子を、凡吉は観察することにした。


「これはどういうことだ⁉」という、官吏の声である。

「それが……使者を送った時には、この有様で……」

「人は?」

「いえ……見ていないとのことです……」

「むぅ……とにかく、城主に報告しなければ…使いの者を出せ!」

「はっ!」そして、官吏の男は曼玲に向き直る。

「……曼玲堂主。我々が出来るのはここまでだ。後は、玉修門と飄雲派の問題だ」

「感謝します」


 そう言って、曼玲は剣を抜き、玉修門の人達に向かって『行こう』と言って支部の中に入っていった。だが、当然ながら、少し経って残念そうに帰ってくる。


「奴らはおりましたか?」

「いえ……人はおろか、物すら無くなっています」

「むぅ……奇怪な…曼玲堂主、申し訳ないが、我々はこれで失礼する」

「はい。城主様に、よろしくお伝えください」


 官吏の男はその言葉に『分かった』と言って、部下達とその場を後にした。残った曼玲達は話し合う。凡吉も、自然と耳を傾けた。


「まったく……凡吉はどこにいるというのか……」


 という誰かの呟きに対して、曼玲は言う。


「……分からないわ。ひとまず、もう一度城内を捜索してみましょう」

『はい』


 残った者達も、そう答えて全員散らばるように離れていった。


(……帰るか)


 凡吉はそう思いながら、ふと視線を自分の目の前へと移した。そこには、さっきまで目の前に置いておいた木の皿があった……そこには、いつの間にかいくばくかの銅貨や銀貨が入っていた。

 凡吉は立ち上がり、頭を下げる。そして、貯蔵塔に硬貨を全て入れて、拠点に帰ろうとしたその時……周辺に集まっている官吏と思われる人たちの話を小耳に挟んだ。


「――で……結局、飄雲派は壊滅したのか?」

「少なくとも、北山城の支部はな。郭凱が戻ってきたら、一波乱あるかもしれん」

「となると、我々も忙しくなるのか……」

「そういうことだ。まったく飄雲派め……面倒事を起こしやがって」

「まったくだ」


 話を終えた官吏達はその場を立ち去り、それぞれの持ち場に戻っていった。


(……今のところ、僕がやったことはバレてない……)


 しかし、だからといって安心は出来ない。凡吉は再び、貯蔵塔に収納されている物品に目を向ける。

 そこには、飄雲派・北山城支部の土地の権利書や、北山城から北東の村々にかけての薬園の権利書など、重要書類や貴重品などが列挙されている。

 これらは……決して、自分が持っていることを他人に悟られてはいけない……同時に、自分にとって大きな武器にも防具にもなりうるものだ。いつ、どのように使うか……それを誤らなければ、の話ではあるが……。

 その後、決意を新たにした凡吉は『乞凡』の変装を解き、『凡吉』として中央通りに向かった。

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