玉修門
玉修門で唯一の使用人……その言葉が意味するところはつまり、僕はこの門派で暮らしてはいるが、弟子ではないということ。
この世界において、勢力は国であり、門派は家とみなされる。つまり僕は、玉修門という家に居候しているということだ。
そして弟子ではないということは……玉修門は、僕に功法を授けないという意味だ。
これはどういうことかというと、一人で数万の軍勢をなぎ倒すことが出来るような人がいるこの世界において、一生を凡人として生きていくという意味だった……もしかして、凡吉の『凡』には、そういう願いも込められていたのだろうか?
義母上は門主や長老達によるこの決定の際、般若も裾を上げて逃げ出すほどの形相で一同を威嚇していたが、僕があっさり受け入れたのを見て、怒りを鎮めてくれた。
ちなみに、僕はこの結末に満足している。
玉修門は、過去に中原帝国の皇帝や帝国軍の将軍――までを生み出したのは良かったのだが、その他にも天魔神教を含む魔教諸派の教祖達や邪道門派の大統領など、とにかく排出した人材の質だけは高かった。
しかしそれが災いしたのか、かつて栄華を極めていた玉修門はいつの間にか、正道や魔道、邪道勢力のどれにも組することのない孤高の勢力となった。聞こえはいいが、ようは孤立――いわゆる『ぼっち』になってしまったのだ。
現代の門主や長老達はこの事を大変危惧しているようで、本堂ではそのことで日夜議論が交わされていた。
というのも、ここ最近になって玉修門に入門する者が減少してきているのだ。その理由が、突き詰めれば孤立にある。
いずれの勢力にも属さないということは、転ずればどこの馬の骨か分かったもんじゃないということでもあるので、かつて貴人や名将、暴君から教祖まで輩出した門派は、名門としての面目こそ保っていたものの、誰の目にも衰退は明らかだった。
そんな時代に現れた僕という存在と、それに夢中になってしまった門派の太上長老……むしろ、義母上のおかげで僕は殺されずに今日まで生き延びてきたと言えよう。
だが、そんな僕に追い討ちするかのように、玉修門の医員が言った。
『あなたには……何もないわ』




