進化・融合・精錬
深夜になるまでの間、凡吉は自身の実力を上げることにした。そのため、まずは貯蔵していた経験丹をすべて飲む。
(甘い……)
丹薬はほのかな甘みがあり、ちょっとしたお菓子のようだった。
凡吉が蒼い画面を開くと、『諸天万界』の権能の一つである修為塔に告知マークが浮かぶ。
タップすると、経験値6000点を得たという表示と共に、凡吉がこれまで貯めてきたであろう経験値が表示されていた。そして、その数字は18600点だった。
(ということは、経験丹一粒で1000点か……微妙だな。まぁ、もらえるならもらうけど…)
そんなことを想いながら凡吉が『諸天万界』の画面を戻すと、そこにはビックリマークが示されていた。
(ん……?)
凡吉はそのビックリマーク――告知マークが気になって押してみると、画面の文章が切り替わる。
経験値10000点または精錬値10000点で、『諸天万界』の権能を進化させることが出来ます。
その下には、相変わらず『はい/いいえ』の選択肢……精錬値はほとんど溜まっていないが、経験値ならば問題ない。
しかし、ここで使ってしまってもいいものか……経験値は、境地の上昇には使えないが、功法の昇級・昇格には使用できる。
せめて、進化後の権能がどのようなものか分かればいいのだが……見る限り、それは表示されていない。
(まぁ、いっか)
特に強くしたい功法はないし、経験値で変に強化させれば、実戦で何が起きる分からない。それなら、おそらくこの世界で自分だけが持っている能力に投資するのは悪い選択肢ではないはずだ。
凡吉はそう考え、『はい』を押した。すると、画面が一瞬光ったかと思えば、そこには新しい文章が記されていた。
『諸天万界』の進化に伴い、以下の能力が得られました。
貯蔵塔の空間拡張:10平方キロメートル
経験値と精錬値の兌換・解放
天壇の祈祷機能・解放
瑞宝塔の取引階位・解放
回収機能の強化:回収速度の向上
精錬塔の機能強化:1時間に一度、精錬塔に精錬値10点付与
修為塔:1時間に一度、修為塔に経験値100点付与
聚魂塔の空間拡張:1000体
(……なるほど。確かに強化されているな)
どうやら悪くない結果になったようだ。特に精錬値と経験値の自動獲得は良い。兌換の方は、1対1の割合だった。これも都合がいい。
凡吉は、新しく解放された権能『天壇』についての説明欄を開いた。
『天壇』
『諸天万界』の権能の一つ。
主な効果は二つあり、まず一つ目が祈祷。一日に一回、天壇に祈りを捧げることが可能。
二つ目の効果は神祇の獲得。
(……おかしいな)
神祇の獲得の説明欄には、それ以上の説明がない。どうすれば神祇というのは獲得できるのだろうか?
それに、祈祷の効果は?……ザッと画面を操作して調べてみるが、まったく手掛かりがない。
凡吉はいったん画面を元に戻し、次に『精錬塔』に目を向ける。その画面には、ある文章が書かれていた。
『霊感眼(初級)、蛇眼、魂魄解析、魔道眼、殺人慧眼、凶殺之相(基礎)、心理戦術、殺意感知、解呪指(基礎)を龍神眼(初級)に融合できます。承認しますか?』
凡吉は少々迷った。自分が知る限りでは、眼術との融合は今回が初めてだ。それがどんな結果を招くか、予想もつかない。
しかし、好奇心には勝てず、凡吉は『はい』を押す。すると、凡吉の瞳にピリッとした感覚が走る。痛くはないが、奇妙な感じだった。
(……どうなっているんだ?)
凡吉はそう思いながら、画面に目を向ける。すると、そこには以下の情報が記載されていた。
【龍神眼(初級)】
自分を中心とした半径5メートルの存在感知・距離測定
また、自分に殺意を向ける者が半径15メートル以内に侵入した場合、それを感知
物体・生命体・霊体の魂魄解析・確認(上級)
生命体・霊体に対する威圧(小)
生命体・霊体に対する精神干渉(中)
生命体を殺害すると、一時的に全能力上昇(小)
魔気吸収率向上(中)
精神干渉耐性(中)
呪術耐性(小)
(ふむ……)
凡吉は自分の成長を実感しつつ、新たな能力に驚きを感じる。
同時に、画面には融合した功法や眼術、技能などが消失したことを知らせる文章が記されていた。惜しくないと言えばウソになるが、その権能がすべて『龍神眼』に集約されたと考えれば、ありがたいことだ。
まだ他にも融合できる組み合わせはあるようだが、凡吉はひとまず、精錬塔の機能を試してみることにした。それが、『精錬』だ。
この機能の説明欄によると、精錬塔は物品や功法などを精錬し、精錬値を生み出して貯蔵する機能があるとのこと。
精錬値は、おもに瑞宝塔という別の権能で使用できるものらしく、そこでは様々なものが売られていた。
とりあえず凡吉は、自分にとって不要な物――『太虚鶴翔符』を精錬することにした。すると精錬値200点が得られ、貯蔵される。凡吉は満足した表情を浮かべる。
そして彼は、その精錬値を使って何か購入しようと考え、瑞宝塔をタップする。
(ふむ……)
凡吉は、瑞宝塔で取り扱われている商品をざっと眺めた。そこにはいくつかの功法や武器、防具、さらには特異な道具などが並んでいたが、精錬値はまだ十分ではないため、すぐに購入できないものが多い。
(まぁ、仕方がないか……)
凡吉はひとまず瑞宝塔の画面を閉じ、貯蔵塔にある収納してある凝気丹をすべて取り出す。
(もう夕方……急いで修練しなくちゃ…)
凡吉がそう考えていると、飄雲派の支部から聞き慣れた声が聞こえてきた。




