返り討ちの報酬
(――やっぱり、死体は収納できるのか……)
時は少し遡り、北山城と玉修門を結ぶ街道……その路肩にある死体の群れの中で、凡吉は冷静な様子で考え事をしていた。
彼の眼前には、『諸天万界』の蒼い画面が映る。そこには、最初に殺害した飄雲派の弟子の死体が収納された『貯蔵塔』の画面があった。
そして彼以外の弟子達の死体も同様に、貯蔵塔に収めることができた。その際、飛び出した内臓や血液、持っていた武器も同様に回収された。
「……」
凡吉はそれらの事象を前に、思考を巡らせる。
まず、死体を貯蔵塔に収納できたこと。
これは、彼にとって大きな意味を持っていた。もしもこの機能を使えば、殺人の証拠隠滅が可能になる。
今回の一件のように、正当防衛とはいえ人を殺めてしまった場合などに有効だろう。もちろん、悪用すれば犯罪にも大いに役立つだろうが……。
次に、殺人によって得られた報酬についてだ。
凡吉は近くの岩場に腰を下ろし、早速『奨励品』の項目をタップする。すると画面には新たな選択肢が表示された。
『初めて練体境の人間を殺害する』達成パック
『初めて門派の弟子を殺害する』達成パック
『飄雲派の弟子を複数殺害する』達成パック
『初めて殺そうとした相手を見逃す』達成パック
凡吉は迷うことなくこれらの奨励品を受け取った。早速、中身を確認する。
まずは『初めて練体境の人間を殺害する』達成パック。
【権能】
魂魄解析:対象の魂魄を詳細に解析できる。解析結果から様々な情報を得ることができる。
【功法】
闇遁秘法(中級):内功を操り、周囲の暗がり・影と一体化する秘術。姿を隠したり、気配を消すことができる。また、光を吸収することで自身の力を高める効果もある。
瞬歩(初級):一瞬で数メートル先へ移動できる歩法。素早い回避や奇襲に有効。
屍鬼傀儡術(初級):死体を傀儡として操る術。生前の能力や技能をある程度再現できる。
怨霊召喚術(初級):死者の霊を呼び出し、使役する能力。ただし、強力な怨念を持つ者ほど制御が困難となる。
【技術】
無音行動:足音や呼吸音などの微細な動きを消す技術。潜入や暗殺に適している。
遠距離狙撃:弓矢や投擲物を使用して遠方の敵を正確に攻撃する技術。
心理戦術:相手の心理状態を見抜き、混乱させたり恐怖を与えることで優位に立つ方法。
【陣法】
血鎖縛陣:地面に描いた血の紋様から鎖状のエネルギーを生成し、敵を拘束する陣法。
魂縛封印陣:対象者の魂魄へ干渉し、その能力を封じることが出来る陣法。
【物品】
冥葬刀:黒曜石のような漆黒の刃を持つ小太刀。極陰の気力を帯びており、相手の生命力を吸収する性質がある。
幽影衣:薄手ながら高い防御力を誇る外套。着用者の存在感を薄め、視認されにくくする効果がある。
魂喰石:他者の魂魄を取り込み蓄積できる特殊な宝石。
封魂楔:魂魄を封じ込めるための道具。対象者の精神を安定させる効果もある。
生命還元丹:重傷者や瀕死の者に使用すると即座に全快させることができる霊薬。
暗殺指南書:暗殺に関する知識やノウハウが記された文書。
【眼術】
魔道眼(中級):源気、その中でも特に魔気の流れを視覚的に捉えることができる。また、相手の弱点や隠された真実を見抜くことも可能。他者からの精神操作への耐性を持つ。
殺人慧眼(中級):標的となる人物を見ると本能的な衝動と共にその行動パターンや弱点などが鮮明に浮かんでくる特殊な視覚能力を持つ。
あいかわらず、奨励品の内容は豪華で、この世の摂理に反しているのではないかと思えてくるほど強力なものばかりだった。
凡吉は次に『初めて門派の弟子を殺害する』達成パックを開封した。
【神魂】
殺戮衝動:対象を殺害しようとする強い欲求を持つようになる。
共情拒絶:他人との精神的な繋がりを感じにくくなる。
恐怖支配:自分より境地が低い相手に対して、恐怖心を利用することで支配関係を築けるようになる。
【称号】
鮮血の支配者:一度に複数人を殺害した際に発動し、周囲の味方の士気が向上する効果を持つ(大)
無慈悲なる狩人:対象に致命傷を与える確率が上昇する(中)
非道な執行者:倫理観や道徳心を一切考慮せずに行動する際に全能力が向上する(中)
狂気の処刑人:人間を殺害する度に追加で経験値を獲得(中)
猟奇的殺人犯:異常とも言える方法で殺害することにより、追加で経験値を獲得(中)
【功法】
寸歩:ほんのわずかな重心の移動と足さばきによって、相手に間合いを錯覚させる。
無影功:自身の影を内功によって不可視化させる。
【技能】
殺意感知:自分の命を狙う者の意図を察知することが出来るようになる。
拷問術(初級):相手に対する肉体的苦痛を与える技法。
尋問術(中級):精神的な圧力を掛けて情報を聞き出す技法。
【物品】
黒曜の鎖鎌:黒い金属製の鎖と分銅付きの鎌。
屠龍刀:赤黒く染まった長大な刀。斬り裂くよりも叩き潰すように使う。龍族に対して攻撃力上昇(極大)
龍血塗鞭:龍の血に浸して鍛えられた鋼で作られた鞭。龍族に対して攻撃力上昇(特大)
……これまた物騒なものが出てきたなと思うものの、使い道がなければ『精錬塔』に送って精錬値と交換すればいい。
凡吉はそう思うことにして、今度は『飄雲派の弟子を複数殺害する』達成パックを開封した。
【称号】
連続殺人鬼
大量殺人犯
殺戮者
死神
災厄の化身
【功法】
飄雲心法(上級):飄雲派の心法。身体能力の向上と耐久力の上昇に特化している。
飄雲剣法(上級):軽やかな動きと高速剣技が特徴。
飄雲拳法(上級):素早く柔軟な打撃主体の拳法。
飄雲軽功(上級):浮遊感のある独特な足運びが特徴。
飄雲掌法(上級):掌による打撃や衝撃波を中心とする打法。
【技術】
暗殺術(中級):不意打ちや奇襲などを中心とした戦闘技術。
【物品】
鬼哭杖:泣き声のような音を立てて振動する不気味な短い杖。
妖狐面:九尾の狐を模した仮面。装着者はその力を借り受けることが出来る。
幽鬼面:人の顔の骸骨を模した仮面。装着者自身を霊的存在へと変貌させる。
飄雲靴:身に付けるだけで飄雲軽功の力を発揮することが出来る。
亡者の血肉×10
凝気丹×10
これもまた凄まじいラインナップだと思わざるを得なかった。
しかし同時に、ここで飄雲派に関連しているであろう功法を手に入れられたことは幸いだ。もしもの時があったら、これらを駆使して正体を悟られないようにすることも出来るだろう。
続いて、『初めて殺そうとした相手を見逃す』達成パックを開封する。
【称号】
慈悲深き者:敵対している人物であっても温情を持って接することで好感度が上がりやすくなる(大)
寛容なる魂:例え裏切られても許してあげることで信頼度が高まりやすくなる(中)
清廉潔白:その時代、その地域において善行を成すと得られる名声が上がる(中)
偽善者:表向きは良いことをしながら内心では何かしら企んでいる時に発揮される魅力度が上昇する(小)
命の恩人:命の危機に瀕する生命体を助けた場合、親密度が高まる(中)
【功法】
有情功(初級):自身の生命活動が続く限り、自動で気力を回復(微小)
解呪指(基礎):指に内功を集中させ、呪術を解呪する。基礎段階では呪術の進行速度を遅らせるだけ。
【技能】
応急治療術(基礎):止血処置など、最低限の医療技術。
【物品】
万仙丹
先程までのものよりも比較的穏やかな内容だったように感じる。それでも『殺そうとした相手を見逃す』だけでここまで貰えるというのは驚きを隠せないところではあったが……。
(ふむ……)
ひと通り確認し終えた凡吉は納得したように頷くと画面を消した。
そして一度深呼吸をしてから立ち上がり歩き出すことにしたのだ。
目的地は北山城――飄雲派の支部である。




