凡吉、報酬が豪華すぎて引く
ハルとの比武を行った日の夜……雑務を終えた凡吉は、自身の居宅である小屋の居間で、蒼い画面を前にして考え込んでいた。
彼の目の前には『奨励品』の画面があり、その内容に変化があった。
練体境修練パック×6
隠された道『戦元帝国第三皇子第二公主 ダエンオロン・グンジ・ハルアヤンガとの比武に勝利する』達成パック
と表示されていた。どうやら、日中の比武は隠された道――シークレットミッション的なもので、それを達成したためにもらえたらしい。
修練パックの方も気になるが、凡吉はまず、隠された道のパックを開封した。
大黒天経
反魂鏡
神龍血
龍凰の勾玉
四つのアイテムを確認する凡吉。そして、それぞれの効果に目を通す。
〈大黒天経〉:大黒天に関する書籍。修練すれば、大黒天の金身を得る。
〈反魂鏡〉:死者を蘇生させることが可能な鏡。ただし、蘇生させるには代償が必要。
〈神龍血〉:神龍が持つ再生能力を付与する血液。不死身に近づける。
〈龍凰の勾玉〉:龍と鳳凰の加護が宿る勾玉。持ち主に強大な力を与える。
「……」
凡吉は無言で大黒天経を手に取る……それはなんとも不思議な材質で出来ており、感触としてはマッㇳな石だが、紙のように柔らかい。凡吉はその経典を開いてみる。
すると、そこには文字ではなく、妙な光の模様が描かれていた。まるで曼荼羅のような複雑な模様……普通ならば読めないはずのそれが、凡吉には理解できた。
(これは……)
脳裏に直接知識が流れ込んでくるような感覚。凡吉は瞬時に理解した。これは単なる書物ではない。読むことで、修為を得ることが出来る経典だったのだ。
ページをめくるごとに、彼の意識が研ぎ澄まされていくのを感じる。
(なるほど……)
凡吉は感心しながら、次のページへと進んでいく。大黒天経の修練方法はいたってシンプルだった。
毎朝、夜明けに太陽の光を浴びながら、運気調息を行うというものだった。
凡吉は残りの三つのアイテムを確認する。
まず『反魂鏡』を取り出す。
「鏡……か」
それは小さな銀色の鏡だった。表面は曇っており、凡吉の姿がぼやけて見える。
効果の説明を見る限り、蘇生能力を持つようだが……代償が必要だとある。その内容が分からない以上、迂闊に使うことはできない。
「これは保留だな」
凡吉は鏡を『諸天万界』の機能の一つである貯蔵塔に収めた。
次に『神龍の血』を取り出す。
これは白い陶器の瓶に入った赤い液体だった。見た目はただの血液だが、近くに置いているだけで、まるで生き物のような鼓動を感じる。
これも再生能力を与えるという効果があるが、不死身にするというのは、この時代においては完全に禁じ手だろう。触らぬ神に祟りなしとばかりに、凡吉は静かに蓋を閉めた。
「最後は……」
凡吉が『龍凰の勾玉』を取り出そうとしたその時だった。突然、画面に通知が現れた。
『隠された道[龍華鈴との親密度を一定値まで上げる:友人]達成』
「え?」
凡吉は驚いた。何の前触れもなく、新たな隠された道が達成されたことに。すぐに画面を確認すると、新しいパックが追加されている。
隠された道『龍華鈴との親密度を一定値まで上げる:友人』達成パック
「親密度……?」
凡吉は首を傾げる。確かに今日の比武では、華鈴と一緒に過ごす時間が長かったが……まさかそれが原因なのだろうか?
疑問は尽きないが、とりあえずパックを開封することにした。
【功法】
〈涅槃経〉:体力・気力を回復させる功法。
〈天心五雷正法〉:天雷、地雷、水雷、龍雷、社令雷の五つの雷を制御する功法。
【物品】
〈七曜輪環〉:七曜星の力を宿した指輪。装着者の能力を全て底上げする。
〈万仙丹〉:万病に効く丹薬。
「……なんですかこれ?」
思わず、そう言ってしまうほどの圧倒的な量と、謎に満ちたアイテム群だった。
(七曜輪環……万仙丹……?)
凡吉は混乱しながらも、一つずつアイテムを確認していく。
どれもこれも、間違いなくこの世界では至宝として扱われるようなものだろう。それが今、彼の目の前にずらりと並んでいた。
そして、また画面に一文が表示される。
『功法:天心五雷正法 を獲得したため、称号:九天雷帝 を獲得しました』
(……落ち着け……まずは状況を整理するんだ)
凡吉は深呼吸をして、頭の中を整理する。
(とにかく……貯蔵塔に入れておこう)
そう判断して、凡吉は全ての物品を貯蔵塔に収めた。今の時点でこれほどの宝物を持っていることを公表すれば、間違いなく波風が立つ。最悪の場合、命を狙われる可能性だってある。
この時代において、凡吉はただの使用人に過ぎない。どんなに強力なアイテムを持っていても、それを扱うには実力が伴わなければならない。
――まずは修行だ。彼はそう結論付けた。
そして、改めて『神龍血』を取り出し、その瓶に手を伸ばす。
しかし、蓋に指が触れた瞬間、彼は動きを止めた。
「……」
……やはり、躊躇してしまう。不死身になれる力は魅力的だが、それ故に危険すぎる。下手をすれば、人間ではなくなるかもしれない。凡吉は瓶を貯蔵塔に戻した。
「……もう寝るか」
彼は寝台に寝転がり、窓から見える夜空を見上げた。
月明かりが優しく降り注いでいる……明日は忙しくなりそうだ。
凡吉はそう思いながら、ゆっくりと眠りについた。




