蒼い画面
(……やっと一人になれた……)
その日の夜……仕事を終えた凡吉は、自分の小屋の寝台で横になって就寝しようとしていた。
しかし……彼にはどうしても、気がかりなことがあった。
彼が念ずると、眼前に例の蒼い液晶画面が出てくる。
日中に行ったさりげない調査の結果、どうやらこの画面は凡吉にしか見えていないことが判明した。
行者:凡吉
境地:練体境6段
『練体境6段』……それはまさに、義母上がズバリ的中させた境地だった。
その表示の他にも様々な選択画面が出てくる。凡吉は自分の名前と現在の境地を確認すると、満足げに頷いた。
そして、表示されている一つの選択画面に『奨励品』という項目があったので、それを押す。すると、
修験者基本パック
練体境修練パック×6
『主のために楯となる』達成パック
『初めて天羽剣法を使用する』達成パック
『初めて人間に暴力を振るう』達成パック
『初めて人間を負傷させる』達成パック
『初めて人間を殺害する』達成パック
『刃物で人間を殺害する』達成パック
『投擲で人間を殺害する』達成パック
『初めて人間を恐慌させる』達成パック
『逃走する人間を殺害する』達成パック
『恐慌状態の人間を殺害する』達成パック
『初めて人間の集団を壊滅させる』達成パック
『山賊を殺害する』達成パック
『自身が殺害した相手の持ち物を奪う』達成パック
『隠された道:中原帝国第二皇子の娘・龍華鈴を守る』達成パック
――という項目が表示された。凡吉はそのうち、『天羽剣法を使用する』達成パックを押す。
武器:黒杖:仕込み杖。刃の斬れ味は鋭く、外装は黒い骨で出来ている。
丹薬:凝気丹×16
功法:解毒功(初級):初級毒物への耐性。
技術:環境適応術(初級):環境変化への適応。
眼術:霊感眼(初級):周囲の気配察知。
――と表示されていた。
そのどれもが、凡吉にとっては十分過ぎる価値のものばかりである。
(それにしても……『隠された道』?)
隠された道とは? どんな意味なのだろう?
凡吉は首を傾けるも答えは出ず、今度は『貯蔵塔』の項目を押した。そこには先ほど画面に表示された物品があり、凡吉は『黒杖』を押す。
「おぉっ!?」
――思わず声が出てしまった。いきなり目の前に、黒い仕込み杖が出てきたのだ。
小屋に他に人がいなくてよかった……凡吉はそう思いながらも、仕込み杖を手に取り、柄を持って抜刀する。意外と軽く扱いやすい。刀身は月明かりに照らされて鈍い光を放っていた。
説明欄曰く柄や鞘黒い骨で出来ているとあるが、なんの生物の骨なのかは分からない。しかし、見た目はマッドな光沢をしており、手触りも同様だ。触れていると、ちょっと冷たいような感じもする……試しに山賊達が着ていた着物の内、返り血が多く付着した着物を切ってみる。
(おお……)
どうやらこの仕込み杖は、かなりの切れ味を持っているようだ。
凡吉が片手で持っていた着物は、刃が触れたところからスッと音も立てずに切れてしまった。
次は丹薬を飲もうと考え、『凝気丹』を押す。すると目の前に、白い陶器製の薬瓶が現れた。
陶器で出来た栓を開けて匂いを嗅ぐと、少し甘い匂いがする……凡吉は恐る恐る口に含み、舌の上で転がすように味わっていると、甘味がしてスッと溶けてしまい、喉を通ると身体中に染み渡っていくような気がした――その瞬間、全身が熱くなる!
(なんだこれ……!?)
身体中から力が湧き出すような感覚に襲われた。今まで感じたことのない感覚だった。まるで別の何かに生まれ変わったかのような錯覚すら覚えるほどだ。
呼吸を整えようと深呼吸すると、肺いっぱいに空気が入ってくる。そして吐き出された息と共に体力が回復していくのが分かる。傷はすぐ治り、病は癒され、疲れ知らずで昼夜を問わず働けるような気がした。まさに万能薬である。これさえあればどんな相手でも倒せるんじゃないかと思うくらいだ。
(……覚せい剤とかじゃないよね?……)
……不安になる凡吉だが、とりあえず『解毒功(初級)』を確認する。
使用を選択した途端に脳内に情報が流れ込み、凡吉の脳内に自然と知識として刻まれていくと同時に、自分の肉体が初歩的な毒に抵抗できることを本能的に理解した。
(ふむふむ……)
続けて『環境適応術(初級)』を押す。
こちらも同じように情報が脳内へ流れ込んできて、即座に体内に吸収されていった。
これは自身に常に効果を発揮するようで、天候不良時などでも問題なく行動できるようになるらしい。例えば豪雨の中で走っていても、普通の人なら風邪を引いてしまうところだが、この技を使えば体温調整がうまくいくため体調を崩すことなく動けるのだ。
(なるほどね……)
さらに『霊感眼(初級)』を獲得すると、視界に今まで見えなかったものが映るようになった。例えば壁越しに人の姿が見えるようになったりするのだ。と言ってもまだ初級なので精度は高くないし、見えてもぼんやりしているだけだが、それでも十分有用な能力であると言えるだろう。
試しに周りを見渡してみると、確かに少し遠くにいる門番の様子などがなんとなく把握できた。誰かが起きているのか寝ているのかくらいならわかるというレベルではあるが、それでもすごい能力だと思う。
凡吉は期待に胸を躍らせながら、次のパックを開封した。




