【最終章-7】想いの丈
リリィは、周囲を取り囲む刺客たちを鋭く見据えた。
(全員、魔導具を持ってる・・・まさか!?)
その予感は、すぐに現実となった。
「――!」
刺客を止めようと、ガルシアが咄嗟に防御魔法を展開しようとする。だが――構築されたはずのその術式は、まるで霧のように、跡形もなく霧散していった。
「何じゃと!?」
驚愕の声を上げるガルシアに向け、容赦なく雷の矢が放たれる。
だが――その矢がガルシアに届く直前、淡く輝く防御魔法が、ふいに展開され、確かにそれを弾いた。
「何!?」
驚きの声を上げたのは、ブラックモア公爵だった。
(既に、学院全域に魔法阻害の魔導具を展開済みのはず。誰も魔法を行使できない――そのはずなのに)
理解が追いつかず、焦りの色が滲む公爵に、リリィは静かに歩み出た。
「魔法阻害の魔導具を使っても、無駄です」
そう告げると、腕に嵌めた腕輪型の魔導具を、そっと掲げてみせる。
「私は、魔法阻害を無効化する魔導具を持っていますので」
――マリアンヌが送った魔導具、それこそが今までリリィが苦しめられた魔法阻害を打ち破る為の魔導具だった。
「大人しく、罪を償ってください」
まっすぐに、公爵を見据える。
「そして、二度と私を狙わないでください。私はこの学院で――友達と楽しくお喋りしたり、学び、笑いあいたいだけなんです」
その想いの丈をぶつけると同時に、リリィは雷魔法で周囲の刺客たちを瞬く間に失神させていった。
「――!」
一瞬にして無力化された刺客たちに、公爵の顔から血の気が引く。
「これで終わると思うなよ」
それでも、公爵はなお抵抗の姿勢を崩さなかった。
「こ奴を捕まえよ」
ルドルフの命令に従い、ガルシアが公爵へと歩み寄る――その、まさに直前だった。
「陛下!申し上げます!」
慌ただしく駆け込んできたのは、ルドルフの側近だった。
「災害級の魔物の群れが、こちらに向かっております!」
「――!」
その報告に、その場の全員が息を呑んだ。
だが――ただ一人。
「――ふ」
ブラックモア公爵だけが、その口元に、勝ち誇ったような昏い笑みを浮かべていた。
(このまま・・・道連れにしてやる)
窮地に追い込まれてなお、公爵の中に残されていた、最後の一手。
その邪悪な策略が、今――静かに、動き出そうとしていた。
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