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【最終章-3】友達には話しておこう

翌日、国王がマクスウェル魔法学院を視察に訪れるという知らせは瞬く間に学院中を駆け巡った。リリィたちも昼食を食べながらこの話題でもちきりだった。


「でも、何で国王が視察に来るのかしら?」


疑問を口にするロナに、ミリアムが紅茶を一口飲みながら答える。


「確か、国王陛下って学院長とご学友だって話だから、それでかもね」


「なんでも、アークレイン公爵とブラックモア公爵が付き添いで来るって噂もあるよ」


ティオがそう付け加える、そこまで話が広がっていた。


「そうだね、父上も視察に来るから私は少し気恥ずかしいよ」


オリビエが普段通り爽やかな笑みを零しながら言う。


リリィはふと神妙な面持ちで押し黙った。


「どうしたの?リリィ?」


不思議そうに尋ねるロナに、リリィは静かに人払いの結界と防音魔法を展開する。そして、真剣な表情で語り始めた。


――昨晩、マリアンヌから届いた手紙の内容を。


一通り話し終えたリリィは結界と防音魔法を解除する。

ロナたちは話の内容に驚きつつも、妙に納得いった。


「そう、マリアンヌ様はリリィの為にここまで動いていたのね」


魔法の才能だけでなく、弟子であるリリィの事を想い策を弄するとは思ってもみなかった。


「この計画が成功する事を祈ってますわ」


ミリアムがリリィに優しく言う。


「うん、きっとリリィなら上手くやれる」


少し恥ずかしがりながらティオも言う。


「マリアンヌ様がそんな事を・・・」


マリアンヌの進言で実現した学院視察とは分かっていたが、底の知れない方だと身震いするが、オリビエとエリオットはこのタイミングで公爵も何かしら仕掛けてくるだろうと考える。


「師匠がこれを送ってくれたから、公爵が何か仕掛けても大丈夫だよ、オーリ」


リリィはそう言うと袖を捲りマリアンヌから送られた魔導具を見せる。

その魔導具を見てオリビエは安心する。これがあれば公爵が仕掛けてきても対抗出来る。そう確信めいたものがあった。


「あら、リリィ・・・オリビエ様をオーリと呼ぶだなんて随分と距離が縮んだじゃない?」


不意にミリアムがリリィを見て言う。先程の表情とは打って変わって、その目は輝いておりリリィに詰め寄る。


「ほよ・・・オーリって呼んで良いよって言ったから・・・」


ミリアムの圧に負けてリリィは言うが、愛称で呼ぶことを許してくれたオリビエは自分の事をどう思っているんだろうと考える。


きっと大切な友達として想ってくれているんだろう、きっとそうだ。自分は平民でオリビエは公爵なのだから。


自分にそう言い聞かせ気持ちに蓋をしてしまう。


「ははは、サゴット嬢。私はリリィにならそう呼んで貰って構わないと思っているよ」


平静を装うオリビエだが、心なしかその顔は赤く染まっている様な気がした。リリィがその顔を見て「えへへ」と笑顔になりオリビエの心臓は跳ね上がる。


「でもまぁ、マリアンヌ様も大胆な事考えるなぁ・・・そんな事したらどうなるか分かってるだろうに」


呆れにも似た表情でエリオットが言う。


「だが公爵は罪を償わなきゃいけない。その為にマリアンヌ様は今回の視察を提案したんだろう」


オリビエは真面目な顔に戻り話す。きっとマリアンヌはリリィの為に裏で動いていたのだろう。それが例え公爵を追い詰める事になっても。


「師匠の手紙にね、『お膳立てはしたから、後は貴女次第よ』って書いてあった。だから私頑張るね」


「えぇ、でも私たちは貴女の無事を祈るわ」


ロナがリリィの頭を撫でながら言う。いくらマリアンヌの計画といえど、公爵が何をしてくるか分からない、だからこそ大切な友達の無事を祈らずにはいられなかった。


――


そして、視察当日。


学院全体が、緊張感に包まれていた。国王の到着を、誰もが緊張の面持ちで待ち構えている。


「――陛下、お着きになりました」


やがて、荘厳な馬車の列が学院の正門をくぐる。降り立ったのは、ルドルフ・フォン・レイヴラント国王だった。


「ガルシアよ。久しいな」


差し出された手を、ガルシアは深く頭を下げながら恭しく取った。


「お久しぶりにございますな、国王陛下」


畏まるガルシアに、ルドルフは軽やかに笑った。


「そう畏まるな。儂とお主の仲ではないか」


「・・・そうですな」


ガルシアは、ふっと肩の力を抜くように苦笑すると、案内するように学院内へと歩みを進めた。


その一行の中に、静かに控える人影があった。


(奴らを、ここで始末してやる・・・)


ブラックモア公爵だった。表向きは穏やかな笑みを湛えながら、その瞳の奥には、隠しきれない昏い炎が揺らめいている。


国王、二大公爵、そしてリリィ――様々な思惑が絡み合う中、視察という名の舞台の幕が、静かに上がろうとしていた。

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