【最終章-1】それぞれの思惑
レイヴラント王国王都にある王宮レヴラント城。国王ルドルフ・フォン・レイヴラントは執務室で書類と格闘していた。各地方から寄せられた嘆願書、現在の国の財政状況のまとめが財務大臣より届いたりしていた。
ルドルフはそれを余すことなく読み、次の貴族会議の議題の草案を仕上げる。国王の座に就いて15年になるルドルフにとっては、最早日課と言っても過言では無かった。
一通り書類を片付けたルドルフはふと、最近マリアンヌと会話していないなと気づく。四賢者として優秀な人材ではあるが、その破天荒な行動に最初は胃を痛めそうになったが、彼女と会話を重ねるうちに彼女がこの国を愛し、この国の未来を想っていると言う事を知ってからは、四賢者としてだけでなく良き友人として接する事が増えた。
何時もは突然現れては禁書庫から禁書を借りたとか四賢者として相談に乗ってくれたりしていたのだが、この数か月はそれがピタリと来なくなった。
「ふむ、マリアンヌも忙しいのだろうな」
執務室で一人、ポツリと呟く。四賢者として忙しく動いてくれているのは有り難いが、友人としては少し寂しい。
そんな事を考えていると、何処からともなくマリアンヌが現れた。
「あら、私もちゃんと四賢者としての責務を果たしていますわ」
そう言いマリアンヌは笑みを零しながらルドルフに向き合う。
「おお、マリアンヌ・・・久しいな」
「えぇ、ちょっと用事があったりして中々来れませんでしたわ」
普段は砕けた口調のマリアンヌも、ルドルフの前ではそれなりに礼を欠かさない。
「用事も済んだことですし、久しいに陛下のお顔を拝見したく参りました」
マリアンヌは軽く会釈をし、そのままソファに座る。
「して?今日は何用で来たのだ?」
何か面白い話しでもしに来たのだろうか、それとも他愛のない雑談をしに来たのか。ルドルフは楽しみにしていた。
「用と言うより、私の可愛い弟子がマクスウェル魔法学院に入学したって話しをしましたわよね?」
以前、マリアンヌの弟子であるリリィが学院に入学したと聞いた時には驚かされた。まさかマリアンヌが弟子を持っていた事を、ルドルフは初めて聞かされたのだ。
「うむ、お主に弟子がおったとは知らなんだ。して、その弟子は元気であるか?」
ルドルフは弟子のリリィに興味があった。あのマリアンヌが初めて取った弟子であり、マクスウェル魔法学院を首席で入学したと言う事に。
「えぇ、友達も出来て楽しく過ごしていますわ」
「それは良かったな。お主の弟子ならさぞかし魔法の才能があるだろう?」
「そうね、私程じゃ無いけど・・・あの娘は充分強いですわ」
自分の弟子が褒められる事に嬉しく思い、マリアンヌは笑みが零れる。
「折角だから、陛下もリリィに会ってみたくありませんか?最近、視察にも行かれてないでしょう?」
突然の申し出にルドルフは驚くが確かにこの数年、学院に視察をしていなかったなと考える。国王による学院視察、学院の動向や教育水準の確認を行う為に行われる。
「そうだな、久しくガルシアと会う機会だ。日程を組むか」
そう言いルドルフは手帳を手に取り空いている日取りを確認する。
「マリアンヌよ。あの学院にはアークレイン公爵の次男も通っておったよな?」
「えぇ、オリビエ様も在学して寮生活をしていますわ」
「ならばアークレイン公爵にも付き添いの打診を出す。それにブラックモア公爵の長男も来年、あの学院に入学する予定と聞いた。彼にも付き添って貰い学院の見学の機会としよう」
ルドルフは真剣に考えた結果、アークレイン公爵とブラックモア公爵の付き添いを提案する。その様な気配りが出来る国王であると、周囲は高く評価している。
「えぇ、良いと思いますわ」
その言葉を聞いたマリアンヌは一瞬、不気味な笑みを零したが、ルドルフは気づかなかった。
――
ブラックモア公爵の元に学院視察の付き添いの打診が届いたのは数日後だった。公爵はウィリアムに魔法阻害の魔導具と強力な魔物を呼び寄せる魔導具の準備をさせていた。
「まさか、アークレイン公爵と共に国王の学院視察に同行出来るとはな」
これも何かの僥倖だろうと考え、リリィだけでなく政敵であるアークレイン公爵を亡き者にしようと企む。
「儂を殺す小娘などと言う予言、実現させてなるものか」
小さく呟く公爵にウィリアムが現れる。
「準備は整いました」
その報告を聞いた公爵は自身が勝ち再び保守派が盛り返す事を夢見て高笑いしていた。
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