↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/79

【第6章-6】ずっと続けば良いのに

舞台は、大盛況のうちに幕を下ろした。


拘束した刺客の身柄を引きずるようにして、オリビエはエリオットと共に足早にガルシアのもとへと向かう。


「やはり、紛れておったか」


低く唸るように、ガルシアが呟く。


「今回は、私を狙った刺客のようです」


オリビエは険しい表情のまま続けた。


「もしかしたら――リリィを狙った刺客も、紛れているかもしれません」


彼女の身の安全のためにも、今まで以上の警戒が必要だ。オリビエの脳裏には、既にそんな思いがよぎっていた。


「うむ、その可能性はある」


ガルシアは静かに頷く。


「しかし――君やリリィ君には、この学院の生徒として、学院祭を楽しんで欲しいと思っておる。刺客の事は、儂らに任せて、楽しむんじゃぞ」


そう言うと、ガルシアはすぐさまジョシュア、ケビン、リーシャに指示を飛ばし、警戒態勢の強化を命じた。


――


その頃、リリィたちはドレスに着替え、舞踏会の準備を進めていた。


「うん、似合ってるわよ、リリィ」


ミリアムが満足げに言う。


「えへへ、ロナが選んでくれたんだよ」


照れくさそうに、リリィがくるりと一回転してみせる。淡い水色のドレスの裾が、ふわりと優雅に広がった。


「わ、私も・・・どう、かな・・・?」


おずおずと、ティオが尋ねる。


「ほよ~、ティオなの?」


いつもの瓶底メガネを外したティオの素顔に、リリィたちは思わず声を上げた。


「貴女、メガネ取ると、かなり可愛いのね」

「いっその事、メガネ辞めちゃえば?」


ロナの提案に、ティオはぶんぶんと首を横に振る。


「い、嫌です・・・見えないと、不安で・・・」


そんなやり取りをしている間にも、周囲からはざわめきが広がっていた。


「あんな可愛い子いたっけ?」

「リリィ達といるって事は・・・あれ、ティオじゃないか?」

「嘘だろ!?あんな可愛い顔だったのかよ!?」


男子生徒たちの動揺した声が、あちこちから聞こえてくる。


「はぁ・・・男って奴は・・・」


呆れたようにため息をつくロナに、リリィは笑いながら言った。


「ティオは可愛いもんね」

「そ、そんな・・・」


真っ赤になって俯くティオを、四人は微笑ましく見守っていた。


――


そして、舞踏会が始まった。


きらびやかな会場を見渡しながら、リリィはオリビエの姿を探す。だが、視線の先に見つけたのは――大勢の女性に囲まれ、人だかりの中心にいるオリビエの姿だった。


(オリビエ・・・私と踊りたいって、言ってた・・・)


困惑した様子で対応しているオリビエを見つめながら、リリィの胸に、じわりと小さなもやもやが広がっていく。


(なんか・・・嫌だな・・・)


だが、すぐにその感情を打ち消すように、リリィは首を振った。


(でも、オリビエは貴族で公爵なんだし・・・私なんかじゃ・・・)


平民である自分など、あの華やかな輪の中には、到底釣り合わないのではないか――そんな思いが、リリィの心を小さく萎縮させる。


やがて、オリビエはなんとか女性たちの輪から抜け出し、まっすぐにリリィのもとへとやって来た。


「すまない、リリィ。少し、対応に追われてしまって」


申し訳なさそうに言うオリビエに、リリィは慌てて首を振る。


「大丈夫だよ。でも・・・良いの?私と踊って」


その瞳には、隠しきれない戸惑いが滲んでいた。他の貴族令嬢を差し置いて、平民の自分などと――そう言いたげに。


「大丈夫も何も」


オリビエは、迷いなく微笑んだ。


「私が、リリィと踊りたいんだ」


そう言うと、オリビエはそっと手を差し伸べる。


「じゃあ・・・お願いします」


リリィは、その手をそっと取った。


――


音楽が流れ始め、二人はゆっくりとステップを踏み始める。慣れないながらも、何とか踊れているリリィを、オリビエはしっかりとエスコートしていた。


「緊張しなくても良いよ。私が、ちゃんとエスコートするから」


爽やかな笑顔で言うオリビエに、リリィは思わず頬を緩めた。


「ほよ、やっぱりオリビエは上手だね」

「嗜みだからね」


さらりと答えると、オリビエはふと表情を和らげた。


「そのドレス、よく似合っているよ」


「ほよ、あ、ありがとう」


オリビエのその一言にリリィは照れくさそうに笑う。


「このドレスね、ロナが選んでくれたんだよ」


笑顔で言うリリィに、オリビエの心臓は弾み少し顔が赤くなった気がした。


「そうだ。公演、見に来てくれてありがとう」


そんな顔をリリィに悟られないように、オリビエは舞台の話に話題を移す。


どうやら、芝居をしながらも、オリビエは客席のリリィをしっかりと見つけていたらしい。


「ほよ、気付いてたんだね。格好良かったよ」


はにかみながら言うリリィに、オリビエは少し照れくさそうに笑った。


「ありがとう。私の方こそ、ありがとう」

「え?」

「炎の演出の時――咄嗟に、防御魔法を展開してくれただろう?」


やはり、あの瞬間の防御魔法が、リリィのものだと気づいていたらしい。


「ロナが、教えてくれたから」


リリィは少し照れくさそうに答える。


「咄嗟に・・・守らなきゃって、思って」


その言葉に、オリビエの表情が、一層柔らかくなった。


気づけば、リリィは自然に、上手にステップを踏めていた。緊張も、先ほどまでのもやもやとした感情も、いつの間にか溶けてなくなっている。


ただ、この穏やかな時間が――ずっと続けばいいのに。


そんなことを、リリィは静かに思うのだった。

ここまでお読みいただきありがとうございます!面白いと思っていただけたら、ぜひ『ブックマーク』や『評価(☆☆☆☆☆)』をよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。