↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/79

【第6章-4】不穏な影と演劇とダンスの特訓

「はい、もう一度!右足から!」

「ほよ・・・足がもつれる・・・!」


学院祭を目前に控えた放課後、空き教室では、リリィのダンス特訓が繰り広げられていた。指導役を買って出たのは、ロナとミリアムだった。


「リリィ、力み過ぎよ。もっと自然に」


ミリアムがリリィの肩にそっと触れ、力を抜くよう促す。


「で、でも。踏まないようにって思うと、どうしても・・・!」

「大丈夫、ちゃんと私がリードするから。まずは私の足を見ないで、目線はまっすぐ」


ロナが根気強く手本を見せながら、何度も何度もステップを繰り返す。最初はぎこちなく、二人の足を何度も踏みつけていたリリィだったが、持ち前の高い身体能力と、規格外な魔力操作で培われた繊細な体幹の感覚が、意外な形で功を奏し始めていた。


「あ・・・あれ、今の、出来た・・・?」

「そうよ!その調子!」


数日にわたる猛特訓の末、リリィのダンスは、なんとか人前に出せる形にまで仕上がっていった。


「ほよ・・・魔法の修行より、疲れるかも・・・」


最後の通し稽古を終え、リリィはくたりと椅子に沈み込む。


「なかなか筋が良いと思うわよ」


ロナが満足げに笑う。


「そうね」


ミリアムも同意するように頷いた。


「もう少し苦戦するかと思ってたけど・・・徒労に終わって、良かったわ」


「なんかね」


はにかみながら、リリィがぽつりと言う。


「ちょっと大きな魔物との立ち回りに、似てるかも」


――そのちょっと大きな魔物とは、災害級の大型魔物のことである。


「そ、そっか〜・・・」


ロナとミリアムは、揃って何とも言えない苦笑いを浮かべるのだった。


――


そして迎えた学院祭当日。


学院内には、貴族や商人、その関係者など、様々な人々が訪れ、朝から賑わいを見せていた。


「今日なら学院に簡単に潜入出来る。あんたも手筈通りにやるんだな」


青年がそう言うと足早に立ち去ろうとする。しかし、案内された女性・・・シーナは青年を呼び止める。


「貴方が探している物、既に誰かの手に渡っているわ」


シーナは青年に静かに告げる。青年の顔が青くなる・・・あれが誰かの手に渡れば自分はもう終わりだと悟っていた。


「私は行くわ。貴方も身の振り方を考えた方が良いわ・・・」


そう言い残し、シーナは人混みの中に紛れていく。


――


一方、リリィたちの担当は資材調達や調整役だったため、学院祭当日はこれといった仕事もなかった。強いて言えば、屋台の食料調達くらいのものだった。


「私、あそこの串肉っての食べてみたい!」


はしゃぎながら、リリィは屋台へ向かって駆け出す。


「こらこら、あんまり走ると転ぶわよ」


ロナが注意した、その直後。


「――ほよっ!?」


見事に、リリィは盛大に転んだ。


「言わんこっちゃない・・・」


やれやれとため息をつきながら、ロナがリリィを引き起こす。その様子は、まるで年の離れた姉妹のようだった。


――


やがて、リリィたちはオリビエが主役を務める公演を見物することにした。演目は、王国で長く愛されている定番の物語だという。


王子がヒロインを救うため旅をし竜を打ち倒す、そして最後は見事結ばれる――そんな筋書きの舞台劇だった。


やがて、王子役のオリビエがヒロインを救うべく旅立ち、魔物と対峙する場面に差し掛かる。


「――!」


オリビエの目が、わずかに険しくなった。


(おかしい・・・魔物役は、こんなに居なかったはずだ)


打ち合わせでは魔物役は三人のはずだった。しかし今、舞台上には五人。明らかに数が合わない。


だが、大勢の観客が見守るこの舞台を、いきなり止めるわけにはいかなかった。


(ここは・・・!)


平静を装いながら、オリビエは芝居の流れを自然に保ちつつ立ち回る。氷魔法を巧みに操り、二人の――紛れ込んだ刺客の足元を凍りつかせ、その場に縫い留めた。


(これで、大人しくしてくれれば良いが・・・)


そのまま視線でエリオットに合図を送る。頷いたエリオットは、他の魔物役たちと共に、拘束した二人をさりげなく舞台袖へと引きずっていった。


観客席からは、まるで演出の一部のような自然な流れにしか見えていない。


そうして何事もなかったかのように、芝居は次の場面――王子と竜の一騎討ちへと、静かに進行していった。

ここまでお読みいただきありがとうございます!面白いと思っていただけたら、ぜひ『ブックマーク』や『評価(☆☆☆☆☆)』をよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。