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【第6章-1】裏方仕事はやる事が多い

マクスウェル魔法学院は、学院祭を控え、慌ただしい空気に包まれていた。


生徒たちの研究成果発表、魔法を用いた演目公演、賑わう屋台の数々、そして――学院祭の目玉とも呼ばれる、夜を締めくくる舞踏会。様々な催しが一斉に動き出す準備期間、学院中がその熱気に浮足立っていた。


リリィたちもまた、その渦中で慌ただしい日々を過ごしていた。


「ほよ〜、やる事いっぱいだね〜」


公演で使う衣装の材料を受け取りに行った帰り道、リリィたちはくたくたになって椅子に沈み込んでいた。


「後は、この材料を裁縫係に渡して・・・背景で使う資材の確認と、屋台の材料調整ね」


疲れも見せず、ミリアムが淡々と残りの作業を確認していく。リリィたちの担当は裏方――資材の調達や調整、各所への確認と、地味だが欠かせない仕事の数々だった。


「でも、ミリアム。良かったの?」


ふと、ロナが尋ねる。


「貴女、舞台のヒロインに推薦されたのに、断っちゃって・・・」


ミリアムはその整った容姿から、舞台演目のヒロイン役にと熱心に誘われていた。だが、当の本人はまるで乗り気ではなかった。


それどころか、こうしてリリィたちと共に裏方仕事に汗を流す時間の方に、よほど喜びを感じているようだった。


「良いのよ」


ミリアムは、あっさりと笑って答える。


「私でなくても、他にヒロインに合う方はいるわ」


「でも、ミリアムが舞台に出る姿、ちょっと見たかったかも」


リリィが、はにかみながら言う。


「そうだね」


ティオも小さく頷く。


「ミリアムって、背が高いから・・・ドレス着ても、様になると思う」

「私の事は良いの」


ミリアムは笑顔のまま、話を切り上げるように言った。


「こうして皆で、楽しく準備出来れば――それで良いのよ」


「――ドレスと言えば」


ふと思い出したように、ロナが口を開いた。


「舞踏会のドレスも、準備しないとね」

「ほよ? 舞踏会ってドレス着るの? 私、持ってない・・・」


まるで初耳だと言わんばかりのリリィに、ロナは呆れたように額に手を当てた。


「リリィ・・・学院祭の説明の時に、ちゃんと言ってたわよ・・・」


とはいえ、いつものことだと諦めが早いのか、ロナはすぐにぱんと手を叩いた。


「そうだ、リリィ。私のドレス、貸してあげるわ」

「ほよ!いいの?ありがとう、ロナ!」


満面の笑みで喜ぶリリィ。だが――この時のリリィは、まだ気づいていなかった。


自分が、ダンスというものを、ただの一度も踊ったことがないという、致命的な事実に。


――


その後、リリィはティオと共に材料係に舞台衣装の材料を持って廊下を歩いていた。


「これ、渡したら終わりそうだね」


リリィは笑顔で言うが、その顔は少し疲れているようだった。授業を受けつつ学院祭の準備の連続で、くたくたになっていた。


「リリィ、大丈夫?」


心配するティオをよそにリリィは舞踏会がどの様にものなのか想いを馳せていた。綺麗なドレスに身を包み、殿方とダンスをする。そんな光景がリリィの脳内に広がる。


(オリビエ、一緒に踊ってくれるかな?)


友達として、リリィはオリビエと踊りたい。そんな淡い期待があるものの、オリビエは公爵子息――流石に平民である自分と踊ってはくれないだろう。


「舞踏会、楽しみだね」


笑顔で言いクルクルと回るリリィにティオは「リリィ、危ないよ」と忠告するが、廊下の角でケビンとぶつかってしまう。


「あいたたたた、クローデル。怪我は無い?」


尻もちをついてしまったリリィにケビンは手を伸ばす。「ほよ、ごめんなさい」と言いリリィはケビンの手を取る。


「危ないから、ちゃんと前を見て歩くんだよ」


そう言い残し、ケビンは足早に職員室へ向かって行った。


「もう、リリィ。廊下で回ると危ないよ」


控えめだが、ちゃんとリリィを叱るティオはどこか姉の様な風格があった。


「えへへ」


少し照れるリリィは廊下に何かが落ちているのを見つけた。手に取ると、それは何かの術式が刻まれた魔導具だった。


「ほよ?」


リリィが不思議そうに見ていると、ティオは若干興奮気味に魔導具を見つめる。


「これは、私も見たことの無い魔導具――」


最新型の魔導具なのだろうかとティオは眼を輝かせているが、リリィはこの魔導具に刻まれた術式に覚えがあった。


「これ――あの時の・・・」


以前、エリオットが何者かに操られた時の術式――精神支配に酷似していた。

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