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【第5章-5】助ける為の炎

オリビエは自室で椅子に座り腕を組みため息をついた。少し前、ジョシュアにリリィに何を言ったのか聞き出していた。


「まさかフェルナー先生がリリィにそんな事を言ったなんて・・・」


ジョシュアは学院の風紀や安全を第一に考えて言ったのだろう、しかしそれがリリィを追い詰めてしまう言葉になってしまった。


「あの先生、リリィの力が他の生徒に危険が及ばないか心配してたみたいだからな」


椅子に座っているエリオットが呟く。入学試験の結果を見てジョシュアがリリィの入学を否定的に見ていたと噂で聞いていた。


「それは分かるが、私はリリィがそこまで力を制御出来ない娘だと思っていないよ」


静かに、しかし穏やかにオリビエは言う。


「確かに魔法の威力は異常なくらいだ、でもその力を無暗に使って人を傷つけたりしない。寧ろ制御出来る様に努力する娘だ」


やたらとリリィを擁護するオリビエにエリオットは呆れ気味にため息をつく。オリビエがここまでリリィに肩入れするなんてな、そんな気分だった。


しかし、エリオットの使い魔が駆け付けて来た。


「何だって?サゴット嬢が男に囚われてる!?」


エリオットの言葉でオリビエは立ち上がり部屋を出る。後を追う様にエリオットも駆け出し使い魔の案内で向かう。


――


駆け付けたリリィは息を切らしながらトヴァルを睨みつけていた。


「貴方ですか?ロナにこんな酷い事するのは」


その声には隠しきれない怒りが滲んでいた。


「おぉ~怖い怖い――俺はただ、あんたと交渉したいから舞台を用意しただけっスよ」


トヴァルは茶化しながら両手を広げる。


「ブラックモア公爵側に付け。さもなくば、この娘の魔力を吸い尽くして――殺す」


先ほどの軽薄そうな態度から一変、低く冷たい声にリリィは背筋が凍りつくような感覚に襲われる。


「公爵様はあんたを懐柔したいんっスよ、その強過ぎる力をこちら側の利にしたいんだとさ」


再び軽薄そうな態度でヘラヘラと話すトヴァルを無視し、リリィは即座に風魔法でロナの周りにある結界を破壊しようとする。


しかし


何時もの暴風にも似た魔法は結界を破壊する事なく弾かれてしまう。


「無理っスよ」


トヴァルは、つまらなそうに肩をすくめる。


「あんたの情報は一通り掴んでる。基本属性である水、風、土、雷――その辺の魔法じゃ、この結界は壊せないっス」


それでもリリィは雷魔法や土魔法で破壊を試みるも、結界を破壊するに至らなかった。


「何度やっても無駄っスよ、この結界は俺が頑張って作ったんっスから」


腰に手を当て、自信満々に言うトヴァルにリリィはこの結界を破壊出来ない事に絶望してしまう。


「そ、そんな・・・」


水、風、土、雷の魔法で破壊出来ないとトヴァルは言った。リリィはこの言葉の意味を理解していた。


この結界を破壊出来る属性は炎であると。


リリィが炎魔法を使えない事を予め把握した上で敢えてこの様な結界を作ったのだ。


「リリィ・・・私の事は良いから・・・逃げなさい・・・」


魔力を吸われ、力なく目を伏せたまま、ロナが絞り出すように言う。


「い、嫌だよ・・・!」


涙を浮かべ、リリィは首を振った。


「私、ロナにちゃんと謝りたい・・・!」


その言葉に、ロナは薄く微笑んだ。


「貴女が・・・私たちを避けた理由くらい・・・分かるわよ・・・少しは・・・」


息も絶え絶えに、それでも言葉を紡ぐ。


「頼って・・・欲しかった、わ・・・」


「――ロナ?」


そのまま、ロナの意識はふつりと途切れた。


「やだ・・・だめ・・・ロナ・・・!」


涙をぼろぼろとこぼしながら、リリィはその場に崩れ落ちるように座り込んでしまう。


「友達ごっこはいい加減にしないと、お友達死んじゃうよ?」


苛立ちを滲ませながらトヴァルが問いかける。


「俺の提案に乗るの?乗らないの?」


(このままじゃ・・・ロナが・・・でも・・・炎は・・・)


脳裏に蘇るのは、あの日の炎の記憶。逃げ惑う人々、崩れる建物、動かなくなった両親の姿。


震える体。心の奥底に染みついた恐怖が、リリィの手足を鎖のように縛りつける。


――だけど。


魔法学院まで行くのに迷子になったリリィに手を差し伸べてくれたロナ、貴族なのに平民である自分を友達と言ってくれたロナ、キャロラインの嫌がらせに真っ向から庇ってくれたロナ


(ダメ・・・私にとって・・・大切な友達だから・・・!)


リリィは、涙を拭った。


ゆっくりと、震える足で立ち上がる。


「・・・私が・・・ロナを助ける」


「そんな震えてるのに助けるとか滑稽なんスけど」


鼻で笑うトヴァルの一言を無視しリリィはゆっくりと右手をかざす。


「だって・・・ロナは・・・」


本当は、まだ手が震えている。あの日の記憶は、今も消えることなく、心の奥深くに刻まれたままだ。


それでも――大切な友達を助ける為なら頑張れる。


「私の――大好きな友達だから――!!」


叫び声と共に、リリィの右手から、静寂を切り裂く様な紅蓮の炎が解き放たれた。

ここまでお読みいただきありがとうございます!

本作は「なろう異世界ファンタジーフェス!2026」にエントリーしています。少しでも多くの方にリリィたちの物語をお届けできたら嬉しいです!

「面白い!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、ぜひ下部の☆☆☆☆☆から【評価】や【ブックマーク登録】で応援をよろしくお願いいたします!

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