【第5章-2】悲しい選択
翌日、リリィの様子は明らかにおかしかった。呼び掛けても「うん」と言うだけだし、何時もの明るさが無く暗い表情で、何か思い詰めた様子だった。
「リリィ、どうしたの?」
心配になったロナは声を掛けるが、リリィは目を合わせようとしない。
「うん・・・何でもない・・・」
それだけ言い、リリィはロナから離れていく。そんなリリィをロナは寂しそうに見る事しか出来なかった。
「リリィ、どうしちゃったのかしら?」
ロナはミリアムとティオにリリィの変化について話していた。
「あの子、何か・・・朝から元気ないのよね」
「体調が悪いのとは違うっぽい」
「そうね・・・何かあったのかしら?」
思い出すようにミリアムが「昨日の授業中はいつも通りだったわよ」と言う。魔法薬学の授業で爆発させていた事を思い出す。放課後までは普段通りだったと3人は言う。
「そういえば、昨日ジョシュア先生に呼ばれてたような・・・?」
ティオがぽつりと呟く、呼ばれた後リリィはそのまま自室に行ってしまったので3人はその時に何かあったのかと考える。
「先生に何か言われたのかしら・・・」
ミリアムの一言にロナは頷き力なく呟いた。
「話してくれても良いのに・・・」
友達なんだから頼って欲しい、そんなロナの想いが籠っていた。
――
そんな会話を廊下の陰でこっそりと聞いていたリリィは思わずその場に蹲った。
「・・・ごめんめ・・・みんな・・・」
嗚咽を堪えながらリリィは膝を抱えるようにして涙を流していた。
自分から突き放しておいて心配してくれる声を聞いて泣いている――そんな自分の身勝手さに、余計に胸が締め付けられる。
だが、それでも。友達を巻き込むわけにはいかない。その一心だけが、リリィの心を頑なにしていた。
――
昼食時、リリィは食堂の隅でポツンと1人座っていた。誰も巻き込まない為に、そんな選択をしてしまっていた。
「リリィ?良いかな?」
オリビエが笑顔で寄って来た。しかし、リリィの様子を見て何かあったのかと察する。
「どうしたの?元気ないね・・・」
優しく言うオリビエにリリィは首を横に振る。
「何でも・・・ない・・・今日は1人で食べるね・・・」
今にもかき消されそうな声で言うリリィをオリビエは心配したが、エリオットがオリビエの肩を叩き首を横に振る。今はそっとしておけ、口には出さないがエリオットの言いたい事は察したオリビエは「じゃあ、また」と言いロナ達の席に座る。
「リリィ・・・どうしたんだろう・・・?」
心配そうなオリビエにエリオットも腕を組み考える。あの底抜けに明るいリリィに一体何が?と疑問に思っていた。
「さあな、思い詰めてる様な感じだったし、誰かに何か言われたか・・・?」
エリオットの一言にロナが寂しそうに言う。
「多分・・・ジョシュア先生に昨日何か言われたからだと思います」
「何か・・・」
オリビエが小さく呟きリリィの方へ視線を送ると、既に食べ終わったのか立ち去った後だった。
――
その頃、学院の外壁近くに、一人の男の姿があった。
「何この結界魔法。何十もの層になってるんスね」
感心したように呟きながら、男――トヴァルは、目に見えない結界にそっと手を当てる。
「結界を破ったのをバレずに侵入するのは、至難の業っスね」
にやりと笑う。
「でも、これが出来なきゃ、”結界破り”のトヴァル・ファルマの名折れっスね」
そう言うと、トヴァルはゆっくりと結界へ魔力を送り込み始めた。誰にも気づかれることなく、静かに、しかし着実に。
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