↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/79

【幕間3】願ったものは

風化しつつある瓦礫と、崩れかけたまま朽ちていく建物の残骸。かつて街だったその場所に、リリィはマリアンヌと共に立っていた。


マリアンヌに連れられ、初めて訪れる、ファラスの跡地。


「これ・・・本当に私がやったんだね・・・」


俯いたままリリィはぽつりと呟いた。


「えぇ」


マリアンヌは静かに、しかし優しく答える。


「でも、こうなったのは、貴女が自分を守ろうとした結果よ。貴女が悪いわけじゃないわ」


「ここに、お父さんとお母さん・・・友達も、街の人達も、眠ってるんだね・・・」


複雑な感情が、リリィの胸の中で渦を巻いていた。ベアトリクスが炎で街を焼き払ったのが始まりだったとはいえ、この光景をここまで凄惨なものにしてしまったのは、自分自身の魔力の暴走だ。逃げ惑っていた人々もまた、その奔流に飲まれ、消えてしまった。


その事実に、リリィの胸がぎゅっと締め付けられる。


「悪いのは、公爵よ」


マリアンヌが、静かに言葉を続けた。


「そして――不用意に、ベアトリクスを追い詰めてしまった、私」


自分自身を責めるように紡がれたその言葉に、リリィは顔を上げ、まっすぐにマリアンヌを見つめた。


「師匠は、悪くないよ」


「・・・リリィ?」


「私、あの話を聞いて思ったの」


リリィの瞳には、確かな決意が宿っていた。


「ベアトリクスさんは、公爵の被害者だと思う。ヘクター先生も、きっとそう。だから――私は、ベアトリクスさんの汚名を晴らしたい」


まっすぐな眼差しで告げられたその言葉に、マリアンヌは一瞬、目を見開いた。


「そうね」


やがて、小さく頷く。


「私も、ベアトリクスの汚名を晴らせるなら、そうしてあげたいわ。でも・・・まだ”契約書”が見つかっていないの。あれさえ手に入れば、汚名を晴らす一手になるのだけど」

「契約書・・・?」

「そう、ベアトリクスがファラスに向かう直前に公爵と交わした”契約書”を持ち出して何処かへ隠した・・・彼女がそう言っていたわ」


『”予言の少女”を殺したら、私は公爵を討つ・・・予言を現実にする為に・・・』


ベアトリクスはブラックモア公爵を倒す為の切り札として”契約書”を探し出し隠したのだ。


「それに関しては、私も調べているわ」


マリアンヌはそっとリリィの頭に手を乗せる。


「だから貴女は、このまま学院生活を送りなさい」


「ほよ、師匠も調べてくれてるなら安心だね」


リリィがはにかむと、マリアンヌはにっこりと笑った。


「ええ。私の可愛い弟子の為だもの。何だってするわ」


そう言った後、マリアンヌはふと悪戯っぽく付け加える。


「ただ――公爵の刺客は、貴女自身が何とかしなさい。私からの宿題みたいなものよ」


「うん、頑張る!」


「それにしても」


マリアンヌは、しみじみとした様子でリリィを見つめた。


「ベアトリクスの汚名を晴らしたいだなんて・・・リリィも、大きくなったわね」


その言葉に、リリィはきょとんと首を傾げる。


「ほよ?背は伸びてないよ?」


「・・・そういう意味じゃないのだけど」


苦笑しながら、マリアンヌは小さく肩をすくめた。


――


やがて、2人は静かにファラスの跡地を後にした。


マリアンヌが”契約書”を見つけ出すその日まで――リリィは今まで通り、学院生活を謳歌しながら過ごすことを心に決めていた。


そして、いつか来るその時には。


公爵と、真っ向から戦う。


穏やかな決意を胸に、リリィは師の背中を追って、静かに歩き出した。



ここまでお読みいただきありがとうございます!面白いと思っていただけたら、ぜひ『ブックマーク』や『評価(☆☆☆☆☆)』をよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。