【第3章-8】仲良き事は美しきかな
翌日、オリビエはエリオットの居る医務室へ駆けつけた。眠っているエリオットは穏やかな顔をしており、オリビエは安堵する。
「オーリ・・・」
目を覚ましたエリオットはオリビエの方を見る。オリビエは無事なエリオットを見て笑みを零す。
「エリオット、良かった」
「ここは・・・?」
「医務室だよ、精神支配を受けたんだ」
「精神支配・・・」
「リリィが君に掛かった精神支配を解除してくれたんだよ」
オリビエがそう言うとエリオットは「そうか」と短く言いオリビエを見据える。
「オーリ、すまない。お前を守る護衛だってのに、お前を危険に晒してしまった」
「良いんだ、私はエリオットと幼馴染として一緒に居たいんだから」
「お前、よくもそんな恥ずかしい台詞言えるな」
エリオットはそっぽを向いてしまう。だが、満更でもない様子だった。
そこへ、医務室の扉が開く音がした。リリィが入って来たのだ。
「エリオット、無事で良かったよ~」
入って来るや否やリリィは笑顔でそう言う。エリオットはリリィを見据え頭を下げる。
「すまない、クローデル。迷惑かけてしまった」
「ううん、私は友達を助けたかったから助けただけだよ」
「友達・・・」
オリビエと同じ様にエリオットも友達と扱ってくれる事に少々驚いたが、こいつになら良いかと思い始める。
「俺は、お前がオリビエを狙った刺客じゃないかって疑ってた・・・」
エリオットは静かに話し始める。これまで、リリィを刺客じゃないかと今まで疑っていたのだ。しかし、今回の一件でエリオットはリリィが刺客では無いと確信した。
「それも含めて、すまない・・・」
「じゃあ、クローデルじゃなくてリリィって呼んでくれたら許してあげる!」
明るく、少しイタズラっぽい笑顔でリリィは言う。エリオットにクローデルと呼ばれるのは壁がある様に感じていた。
「お、おぅ・・・リ、リリィ・・・」
少し恥ずかしがりつつエリオットが言うとリリィは満足そうな笑顔で「うん!」と言う。そんな様子を見ていたオリビエの心に何かもやもやする物を感じていた。
「しかし、リリィは凄いね。精神支配を解除するなんて」
オリビエはリリィの頭を撫でる。少しぎこちないが、リリィはえへへと笑っている。
「解除するのはね、術式のほつれを見つけてそこから解けば解除出来るんだよ」
オリビエもエリオットも言っている意味があまり分からなかったが、リリィが自分達よりも高い水準の知識を持っている事は充分に分かった。
「まぁ、助けてくれてありがとな。リリィ」
「うん!」
高い魔法技術を持ちながら驕らず、他者を救い、自身のトラウマと向き合っているひた向きな少女だとオリビエはリリィに惹かれ始めていた。
――
豪華な屋敷の一室。青年は屋敷の主に事の顛末を話していた。
「役立たずめ!!貴様に禁術まで授けたのに失敗しおって!」
主は青年に罵声を浴びせ書類を投げつける。そんな事言われても相手が強すぎるんだと青年は言いそうになるが喉元で抑える。
「平民風情には荷が重かったか・・・」
落ち着きを取り戻した主は椅子へ座り静かに告げる。
「ヘクターを失ったのは大きいが、貴様にはその代わりとして動いて貰う」
そう言い主は不気味な笑みを零し青年に命令する。
「あの学院で行われる交流戦で―――」
その命令を聞いた青年は「かしこまりました」と小さく告げて部屋を後にする。今を生きるにはこうするしかない。だが、これで本当に良かったのだろうかと迷いながら。
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