【第3章-6】誕生日どころではない
エリオットが寮を飛び出し不審な影が居た場所まで走る。使い魔に案内されたが、影も形も無かった。
(逃げた後か・・・)
小さく舌打ちをしてエリオットは周囲を警戒しつつ寮へ戻ろうとする。しかし、エリオットの後ろに何時の間にか影が現れ、エリオットは目の前が真っ暗になる。
――
(遅いなエリオット・・・)
談話室で座っているオリビエはエリオットが戻るのが遅い事が心配になっていた。公爵の子息としてではなくオリビエとして接してくれるエリオットを大切な幼馴染だと思っていた。そんな彼が戻って来ない事にヤキモキしていた。すると、談話室の扉がゆっくり開き、エリオットが戻って来た。
「あぁ、エリオット。どうだった?」
不審な影が見つかったか聞こうとしたオリビエだったが、エリオットの目を見て違和感を感じる。焦点の合わない目、ふらついている身体、そして呻き声にも似た声を上げてオリビエに近づく。
「どうしたんだ!?エリオット!?」
叫ぶオリビエだが、突如エリオットは右手をかざし雷魔法を放つ。あまりの出来事に反応が遅れたオリビエは左腕に雷を受けてしまい苦痛の表情を浮かべるが、防御魔法を展開する。
そのままオリビエは談話室を飛び出し寮へ出る。他の生徒に危害が及ばない様に外へ出たのだ。エリオットはゆっくりと不安定な足取りでオリビエを追いかけて外に出て来た。
(エリオット・・・どうしたんだ・・・?)
――
リリィ達は談話室で雑談をしていた。女子寮の談話室には紅茶の茶葉とポットが備わっており、リリィ達は紅茶を飲みながら楽しくお喋りをしていた。
「え!?リリィ貴女、誕生日過ぎてたの!?」
「ほよ?そうだよ?」
ロナとミリアム、ティオは驚きの声を上げるが、当のリリィはあっけらかんと言う。ヘクターの一件で医務室で眠っていた日、リリィは誕生日を迎えて16歳になっていたのだ。
「ごめんなさいリリィ、全然気付かなかったわ」
ロナが謝りながらリリィの頭を撫でる。リリィはロナに頭を撫でられるのが好きなのか目を細めご満悦だ。
「気にしないで、今こうしてロナ達と一緒に居るだけで私は嬉しいよ」
「でも、せめてプレゼントを用意させて頂戴」
「私も用意する」
「そうね、皆でリリィのプレゼントを用意するわ」
ミリアムの一言でロナもティオもプレゼントを用意する気満々になっていた。リリィは友達からプレゼントを貰える事に嬉しく思い満面の笑みで「ありがとう」と言う。
そんな他愛のない話をしていたら、外から爆音にも似た音が木霊した。4人は驚き、何かあったのかと窓から外を覗く。
「暗くてよく見えないけど、誰かが襲われてる・・・?」
「そうね、ゼシカさんに知らせて、先生にも知らせないと」
ロナとミリアムはそう言い談話室を出ようとするが、リリィが窓を開けて飛び降りようとする。そんなリリィを見て3人はリリィを止めようとする。
「ちょっとリリィ!危ないわよ!」
「でも!先生達呼んでたら間に合わないかも!」
そう言いリリィは窓から浮遊魔法で音のする方へ飛んで行ってしまった。
――
オリビエは突然襲い掛かったエリオットの攻撃を防御しながら開けた場所へ走っていた。
(ここなら安全か・・・)
「エリオット!一体どうしたんだ!?」
オリビエはエリオットに問いかけるが、エリオットは小さな呻き声を上げながらオリビエに雷魔法で襲う。
(聞こえていない・・・操られていると言う事か・・・?)
防御魔法を展開しながら考えるが、如何せんエリオットは攻撃の手を緩める事無く激しい雷魔法の連撃を防ぐのに必死で考える余裕が無くなっていく。
(エリオット・・・すまないが大人しくしてくれ)
オリビエは防御魔法を維持したまま短縮詠唱で氷魔法を発動させエリオットの足と口を塞ぐ事に成功した。口を塞がれたエリオットは詠唱が出来なくなり雷魔法が撃てなくなる。
(気絶させるか・・・?いや、拘束魔法で・・・)
足止めはしたが、エリオットを傷つけたくない一心で次の手を考えていなかった。手をこまねいている間にエリオットは氷を砕き、再び雷魔法を放ち始める。
(しまった・・・!?)
想定外の出来事にオリビエの反応が遅れ雷がオリビエの眼前に迫る。思わず目を閉じてしまったオリビエだったが、その雷はオリビエに届く事は無かった。
「オリビエ!大丈夫?」
寸前の所で、リリィが防御魔法を展開して2人の間に割って入って来たのだった。
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