【第3章-5】嫌な予感がする(フラグ)
課外授業が終わり、昼食を食べていたリリィは先ほど森に現れた毒尾蠍が帯びていた異質な魔力の話をしていた。
「森に出て来た毒尾蠍なんだけど、なんか変な魔力も感じたんだよね」
パンを頬張りながらリリィは話す。あれは通常の毒尾蠍は放たない魔力だ。まるで森に誘導された後の様な感じだったとリリィは言った。
「へぇ、そんな事があったんだね」
「うん、でもちゃんと倒したから大丈夫だよ」
「森は犠牲になったけどね」
「ほよ!ロナ~ひどいよ~」
「冗談よ、でも皆無事で良かったわ」
オリビエとエリオットも交えて昼食を取ることが増えたリリィは友達と楽しく過ごすこの時間が大好きだった。
「でも気になるね、毒尾蠍なんてこの辺に居ない魔物だし」
考え込むオリビエに一同は同意する。本来ならば現れる筈もない魔物が現れた。学院側は報告を受けた事で騎士団や魔法師団に報告をしたと言うが。
「毒尾蠍・・・またどうしてそんな魔物が・・・」
学院長室では今回の件で話し合っていた。ガルシアが白い髭を撫で眉間に皺を寄せる。ただでさえヘクターの件も落ち着いたと言うのに今度は課外授業中に毒尾蠍が現れた。偶然なら良いのだが、そうガルシアは願っていた。
「森に紛れたにしては奴が住み着く地域から離れすぎています、偶然にしては出来過ぎな気がします」
落ち着いた声でジョシュアが言う。まるで誰かが毒尾蠍を操ったとでも言う様に。
「じゃあ、どうやって森に毒尾蠍を誘導したのでしょうか?」
以外にも声を上げたのはケビンだった。彼は引率教員だった事もありリーシャと共に学院長室に呼ばれていた。
「ヘクター先生・・・いえ、ヘクターが使ったと言う違法魔導具の類と、ジョシュア先生はお考えで?」
リーシャがジョシュアの言いたい事を理解して発言する。ジョシュアも首を縦に振りガルシアは低い唸り声を上げていた。
「まさか、またクローデルが狙われたとでも言うのか?」
ガルシアは静かに呟く。部屋に居る全員がガルシアに注目した。その可能性は否定出来ない、しかし確たる証拠が無い。
「分かりませんが、可能性はゼロではありません」
「でも、クローデルが何でヘクター先生に襲われたんですか?」
ケビンが口を開く、ガルシアもジョシュアもあの時マリアンヌに聞こうとしたが何も告げる事無く姿を消した。
「ケビン先生、それは我々も分からないのだ。ただ、あの娘が何者かに狙われている、今分かっているのはそれだけじゃ」
ガルシアがため息交じりに言う。きっとリリィに聞いても分からないだろう、そう思うとガルシアはまたため息をつく。
「兎に角、今は学院の警備を強化するのじゃ」
そう告げてガルシアはゆっくりと部屋を出る。ジョシュアが短く返事をしガルシアに続いて部屋を出た。残されたリーシャとケビンはまた面倒な事になったと思う反面、また何かが起きるのではないかと嫌な予感が走った。
その日の夜、オリビエとエリオットは談話室でリリィから聞いた話しをしていた。
「リリィがヘクターに襲われた事と今日の毒尾蠍が現れた事、何か関係があるんじゃないかな?」
「考えすぎじゃないか?そもそも何でクローデルがヘクターに襲われたのか分からないんだ」
「そうだね、もしかしたら私と同じ様に保守派層がリリィを狙っているのかもしれない」
「保守派がクローデルを狙う理由は?」
エリオットとに言われオリビエは少し考え込む、保守派は貴族主義を掲げており、オリビエの実家アークレイン公爵を筆頭とした革新派とは対立している。そこにリリィを狙う理由があるのだろうか。
「反逆の魔女事件・・・リリィはあの事件の生き残りだ。もしかしたら事件には裏がありリリィが関与している・・・?」
「10年も前の話しだろ?そうしたらクローデルは5歳くらいだろ、そんな子供が関与してるとは思えない」
エリオットの言う事は最もだ、そんな小さな歳で事件に関与しているのだろうか。しかし、オリビエは思い出した様に呟く。
「ベアトリクス・アルジェント・・・彼女には数人の弟子が居たと聞いた事がある。その人達がマリアンヌ様の弟子であるリリィを狙ったとか・・・?」
「弟子はあの事件以降、行方知れずだったな・・・可能性は無くはないが、マリアンヌ様を倒せないから弟子のクローデルを襲ったって所か?」
「あぁ、その可能性があるね」
話し込んでいると、エリオットの使い魔が膝に現れ何かを伝えようとしている。その話を聞きエリオットは目を大きく見開きオリビエに告げた。
「不審な影が近くに居るみたいだ」
「まさか、リリィを狙って?」
オリビエは飛び出そうとするがエリオットが止める。公爵の子息が迂闊に動くなとエリオットが言い「俺が行く」と小さく呟き談話室を後にする。
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