【第2章-6】何だってこんな事に
騒ぎを聞きつけた教師陣が駆けつけ、キャロラインが震えながらも事の顛末を説明した。意識を失ったヘクターはその場で拘束され、リリィはすぐさま医務室へと運ばれていった。
「クローデルがヘクター先生に襲われたみたいだぞ」
エリオットが使役しているトカゲの使い魔からもたらされた情報はオリビエを動揺させるには充分過ぎた。
「何だって!?リリィがどうして!?」
何時もの冷静さを失い思わず叫んでしまう。リリィが何故ヘクターに襲われたのか理解出来なかった。
「いや、分からん。俺の使い魔は見た情報しか与えてくれないからな」
腕を組み考える様にエリオットは言う。オリビエが狙われるならまだしも、リリィが襲われた事に疑問を抱いていた。
「無事なのか?」
「あぁ、医務室に運ばれたみたいだ」
「怪我をしたのか?」
オリビエの質問攻めにどうしてこんなにリリィに拘るのかと言ってやりたかったが、あまりの必死さに辞めた。
「みたいだな、意識ないっぽいし」
「何だって!?」
「無事みたいだから落ち着けよ」
「あ、あぁ・・・そうだね・・・」
ようやく落ち着きを取り戻したオリビエはリリィが襲われた理由よりも、リリィが無事な事に安堵していた。
「てか、クローデルに肩入れし過ぎじゃね?」
オリビエにしては珍しいとエリオットは言う。事実、オリビエは特定の女性に肩入れする事は無い。公爵家の子息として女性には平等に扱う事を徹底している。
「そうかな?友人なら心配もするだろう?」
「友人ねぇ」
怪訝そうに言うエリオットにオリビエは「そうさ」と言いリリィが襲われた理由を考え始める。
「どうして、ヘクター先生がリリィを襲ったんだろうね」
(話し逸らしやがった)
目覚めたリリィの目には見知らぬ天井が広がっていた。医薬品の匂いがする事からここが医務室だと気付いた。
リリィはベッドからゆっくりと上半身を起こし辺りを見渡す。日が昇っている事から、昼頃なのだろうと思い、ヘクターに襲われた時の事を思い出す。
(私が、ヘクター先生の師匠を殺した・・・?どうして・・・?)
疑問は尽きない。まるで自分の知らないところで、何か大きな運命が動いているような、そんな感覚。
(師匠なら・・・何か知ってるのかな・・・)
そう考えていた時、ふいに医務室の扉が開いた。
「リリィ!!良かった、やっと目が覚めたのね!」
飛び込んできたのはロナだった。その後ろには、ミリアムとティオの姿も。3人とも、目に涙を浮かべている。
「ほよ?やっと?」
ヘクターに襲われたのは昨日の出来事では?と首を傾げるリリィにロナはクスリと笑いベッドの淵に座りリリィの頭を撫でる。
「リリィ、貴女・・・2日間、ずっと眠ってたのよ」
ミリアムの言葉に、リリィは目を丸くする。
「2日間!?」
矢によるダメージと、殆どの魔力を魔力暴走に使用した反動により魔力が枯渇してしまい、リリィは丸2日もの間、目を覚まさなかったのだと言う。
「ほよ・・・授業・・・」
「安心して、騒動が起きたから少し休校と言う事になったわ」
授業の心配するリリィにロナが優しく言う。
「ヘクター先生、捕まったよ」
ティオがヘクターのその後を話す。ヘクターは捕まり昨日、憲兵に連れられて行ったのだと言う。聞いた話ではヘクターは虚ろな目をして憲兵に引きずられて連行されていったのだと言う。
「それと、キャロラインの事なんだけど・・・」
「キャロラインさん大丈夫だったの!?」
ミリアムの一言にリリィが食いつく様に聞いてくる。無事なら良いのだけどと願いながら。
「えぇ、無事よ。ただ、騙されたとは言え、リリィをヘクター先生の元に案内したから一週間の謹慎と言う事になったわ」
ミリアムがそう言いリリィは胸をなでおろす。
「そっか、キャロラインさん怪我が無くて良かった」
「貴女、あの女にこんな目にあわされても許すの?」
ロナは不服そうだった、リリィに散々嫌がらせをし知らなかったとは言えヘクターの元へ誘導した事でロナはキャロラインを良く思っていなかった。
「許すもなにも、私には同じクラスメイトだから」
そう言うリリィにロナはため息をつき「分かったわ」と小さく言う。
「リリィ!目を覚ましたんだね」
病室の入口からオリビエの顔が覗き込んだ。どうやら入るタイミングを見計らってたらしい。
「あ、オリビエ」
「リリィ、大丈夫だった?」
相変わらず爽やかな笑顔のオリビエの後ろには腕を組み怪訝そうな顔のエリオットも居た。
「大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」
そう言って、リリィはいつもの屈託のない笑顔を見せる。その笑顔につられるようにオリビエだけでなくロナ達も笑っていた。
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