【幕間】従うという事
ヘクターは自室で腕を組み考えていた。リリィがファラスの生き残りである事、あの事件はマリアンヌが反逆の魔女と戦い、その壮絶な戦いの末ファラスは滅んだ、”表向き”にはそうなっているのだが。
(リリィ・クローデルが俺達の師匠を殺したなら・・・俺は・・・)
あの日、ヘクターの師匠が死んだ日。自分の雇い主に言われた言葉。
『お前の師匠は”予言に出た少女”に殺されたのだ』
師匠を殺されて恨みもしたが、まだ5歳の少女と聞かされた時には、その恨みを幼い少女にぶつけれて良いものか分からなかった。
(あの日にその少女も消えたって聞いていたのにな)
”予言に出た少女”があの日に消えた事で死んだと思われていた。
しかし、”予言に出た少女”に特徴の似た少女がここマクスウェル魔法学院に入学して来たのだ。生きていれば年齢も同じ、髪色も亜麻色で翡翠色の瞳。そして高い魔力量がリリィこそが”予言に出た少女”であると結論付ける。
(だが、彼女を殺しても師匠は戻って来ない・・・)
死んだ人間は戻って来ない。それは世界共通の認識だ。いくら魔法が発達していたとして、その真理は普遍的だ。
(あの方は随分と師匠の予言が恐ろしいらしい、”予言に出た少女”に似ているからといって俺を学院に潜入させるなんてな)
雇い主はヘクターの報告を受け”予言に出た少女”であるリリィを殺す様に命令して来た。ヘクターの手には雇い主から支給された2つの魔導具が月の明かりで照らされる。
(やらなきゃ、俺があの方に殺される・・・やるしかない)
生き残る為にヘクターは雇い主の命令に従う決意をし、自室を出ようとする。
(そうだ、リリィ・クローデルを誘い込むのにあの生徒を利用しよう)
やるせなさを感じつつも、ヘクターは自室を出て闇に消えていった。
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