アーサー国王陛下視点『友情は永遠卍不滅』
お茶会のアーサー国王視点です。
朗らかな日差しに照らされた一寸の狂いもなく綺麗に整えられた王宮の庭園のガゼボを手配し、ルイが好きなお菓子を私みずから選び、ルイの警戒心を緩めるためにルイが大好きな宰相のレオナルドを用意し、更には護衛から給仕まで周りの人間を薔薇園の同志で固めることにより、ルイの囲い込み…いやいや、ルイ達の保護は万全の体制ができ上がった。いや、でき上がっていた、というのに―。
「そんなに怒らないでくれ。ルイ」
何故、そんなにルイに警戒されてしまっているのだろうか。
「いえ、国王陛下をお待たせしてしまった自分自身を恥じているだけです。陛下」
「その割には、いつもの可愛い笑顔が見えないじゃないか」
「申し訳ごいません、陛下。生憎、生まれてからこの顔ですので。」
取り付く島もないじゃないか。
親猫が自分の子猫を守る様に、ルイの心の尻尾が先立ってるのが見えるよ。いつもなら、三児の父とは思えない程、昔から変わらない可愛い笑顔を見せてくれるというのに。
「流石に、驚かせてしまったと反省しているんだよ。」
一応、言い訳をするとしたら、1ヶ月ぶりに自宅に帰って家族とのんびり過ごすとニコニコしながら仕事を終わらせていたルイが、その数時間に『妻に暴力を振るった』『いや、罵詈雑言を浴びせながら暴れた』などの根の葉もない噂が私の所まで回ってきて、挙句には、『彼自身は愛人とホテルに泊まっているらしい』等という報告まできたのだ。しかも、肝心のルイとは連絡とれないし、それどころか、一緒にいるはずのジルでさえ返信がないときた。
「秘密の薔薇園」の会長として、いや、小さい時から可愛く穢れないようにルイの育成に携わっていた幼地味として、看過はできないだろう。
そのルイがやっと、彼の心残りと私の元に来たのだから、煩わしい貴族の作法をちょっと無視して先走ってでも、一目見て無事である事を確認するべきだろう。
それで、ルイを驚かせてしまったと言うなら、許して欲しい。反省はしている。
というか、レオナルド。
「どうしよう。レオ。ルイの機嫌が治らない」
助けてよ。何を、先程から無言でお菓子を食べているんだい?「カフェインが染みるぜ」じゃないんだよ。何の為に君をこの場に同席させたと思っているんだい?今こそ、対ルイ特攻である君の出番だよ。
「そもそも、陛下の自業自得だろうが」
ん?
「陛下が、我々の静止を振り切って、ルイ達を迎えに行き、あまつさえ、勝手にクルマのドアを開けやがったりして。ルイは俺達と違って、慣例が命な貴族のお坊っちゃんだというのに。悪いがこれに関しては弁護できねぇわ」
こらこら、レオったら、フォローする相手を間違えてるぞ☆
そんな事をしたら、ルイはますます、私を警戒するじゃないか。見なさい。君が発する言葉全てに、何かの玩具の様に首を上下にするルイを。
「レオナルド様、代弁して頂きありがとうございます。」
「別に構わない。で、ルイ」
「はい」
「俺は別に問題ないが、茶会の席で挨拶もなくずっと立っているのは、貴族とやらのあるまじき行為だと思ったが、違うか?」
⋯素晴らしい!前言撤回しよう!レオナルド、君やればできるじゃないか。見事なフォローと言っておこう。
「ルイよ。いい加減、私に君の可愛い子供達の名を教えて欲しい」
さて、ルイにしがみつく様にしてくっつくルイの最愛達はちゃんと良い子かな。一番上の子と同じ類だったら、ルイと一緒に保護することは難しいかな。
「ルーカス、ミッシェル。国王陛下にご挨拶を」
ルイに促され、まずは次男がルイの足元から出てきた。
「はじめまして、国王陛下。マルティネス家の次男のルーカスです。お会いできて光栄です。」
続けて、末っ子が。
「はぁじぇましてぇ。マルティネスけの、ミシェルゥです。おあーできぃ、こぉえでしゅ。」
成る程。ルイとはちゃんと血が繋がってそうだ。そして、その幼さ故か長男よりは聞き分けがよさそうだ。合格、にしておこうか。
「大儀である。フフッ。可愛いらしいご挨拶をどうもありがとう。さぁ、堅苦しいご挨拶はここまでだ。楽しいお茶会にしようじゃないか」
そうして、やっと始まった茶会だが。
これがまぁ、なんと愛らしく微笑ましい事か。
日頃何かとジルに世話されているルイが息子達のお菓子を取り分け、慣れないながらも甲斐甲斐しくお世話する所を見られるとは。
慣れない手つきで子供の面倒をみる所までもが、まるで新妻のように初々しい。
「あぁ、ミッシェル。ほっぺにクリームが。ほらお顔を見せて」
「やぁー」
「ルーカス。苺のタルトは気に入ったかい?」
「はい、お父様」
いや、新妻というよりも、これはアレかな。
「なるほど、ママだな」
そうそう、それそれ。ママだよね、レオ。そういえば、ルイは「ママになる」と言ったとかなんとかという噂も出でたね。
って、おや、これはどうした事か。またルイの警戒心がマックスになったね。
「ッたく。陛下のせいで、俺まで警戒されているじゃねぇか」
「ええ、私のせいかい?でも、ほら見てレオ。まるで親猫が子猫を守るように必死に威嚇しているようで、可愛いじゃないか。私は、今のルイも好きだよ」
「⋯」
ふむ。私の国王スマイルでも警戒心は解けないか。いつもなら、「もう、お戯れを」と照れるルイが見られるのに。
やっぱり、結果としてルイと子供達とを引き離そうと考えたことバレてしまっているかなぁ。ルイは昔からそう言う事に鋭いからねぇ。まぁ、そういう所も好きだけどね。
はぁ、仕方ない。一応息子達は合格だしね。
「まぁでも、可愛いルイを警戒させてしまうのは、確かに本意ではないな。ルイ」
「はい」
君の切り札を渡そう。
「安心しなさい。君と君の最愛の息子達を、無理矢理引き離すなど、誰だろうと許されない。もちろん私自身も、ね」
「陛下。格別のご配慮、ありがとうございます」
「ああ」
フフッ。良いんだよ、ルイ。私の言葉一つで、その警戒心を溶き、頬を赤らめてウルウルの目で見つめてくれるなら、安いものさ。
「陛下が、ずーとルーカスとミッシェルと一緒にいてもいいと仰ってくださったんだよ。これからずーと一緒だよ」
「え、え、本当ですか?僕、お父様と一緒にいられるんですか?」
「そうだよ。ずっと一緒だよ」
「嬉しい。お父様。僕、とっても嬉しいです!」
「んー?いーこぉと?」
「そうだよ!ミッシェル!とっても良いことだよ!!」
「にぃに、やたぁーね!」
「うん!」
うんうん、これこそ素晴らしい家族愛だね!
ルイの為にも引き離さないほうが良さそうだ!
「ルーカス、ミッシェル。陛下に御礼を」
「陛下、ありがとうございます!」
「ありぃあとーございましゅ!」
「どういたしまして。君達のお父様を大切にしなさい」
「はい!」
「はぁい!」
うん、元気な返事で大変結構。
是非とも、その心を忘れずに育ってくれたまえ。
「本当にありがとうございます。アーサー国王陛下」
その心を忘れない限り、君たちをルイの子供として一緒に保護してあげよう。
補足情報。
アーサー国王のキャラ設定は、元々、腹黒策略家等の賢いキャラにする予定でしたが、作者の頭がそもそもそんなに優秀ではないので、ボツになりました。
そのため、外見では策略家に見えて、実は、、、というキャラとして読んで頂ければ。