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栄護士りぼん 異世界大豆生活  作者: 多胡真白
第13話 滋味深き街の食卓
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主食と副食と

フロレンス周辺で行われている畜産業は、主に牛乳や鶏卵を生産するための、つまり酪農です。食肉にされるのは乳の出なくなった老齢の牛と、卵を産まなくなった老齢のニワトリです(ひね鶏と言い、いいだしが取れます)。解体直後の新鮮な生肉は農家しか食べられませんし、農家によっては熟成肉を売りに出しますが、量はたかが知れてます。隣街では肉用牛の畜産が盛んらしいですが、生肉の運送は難しいらしく、仕入れられる肉は保存食のみです。いずれにせよ、肉を食べようと思ったら保存食以外の選択肢はありません。でもま、保存食は保存食で美味しいですし、様々な種類の保存食を知るのも楽しいです。


覚えておくべき風俗はもう一つあります。ここの人達は食材に関して主食と副食の概念を持ちません。毎日毎食必ずごはんやパンを食べるとか、特定の食材を欠かさず食べる習慣はありません。パンはよく食べられているものの、食卓になくてはならない存在ではありません。パンがなくたってため息はつきません。

別に主食と副食がなくたって何も困りはしないし、と楽観的に構えていたのですが、わたくし的には少々困ったことになりました。というのは、わたしらの献立の考え方は主食と副食をベースにしているからです。よく言われるのが一汁一菜です。一汁一菜はまずごはん、次に味噌汁で一汁、メインのおかずで一菜、これがテンプレートになります(一汁一菜であって一飯一汁一菜でないのは、ごはんが当然の存在だからでしょう)。

例を出すと、ごはんに味噌汁に焼き鮭または納豆といった伝統的な?朝食がまさに一汁一菜です。和食に限らず、中華や洋食でも考え方は同じです。ごはんやパン、うどんやパスタなどの穀物を中心に置き、ハンバーグや野菜炒めをおかずにして、スープや味噌汁をつければ一汁一菜のできあがりです。グラタンだけとかステーキだけの食事ではどこか物足りない、というお国柄のためのテンプレートです。

しかし、主食と副食の区別がなくてわたしが困るのは、献立のテンプレートがないだけではありません。

簡単なことです。同じ食材を出し続けたら飽きられてしまいます。わたしらは毎日美味しくお米をいただけますが、主食がない人にとっては逆です。食べてもらえなければ栄養管理も何もあったもんじゃありません。わたしがアンジェリカの命運を握っているように見えて、実際はアンジェリカに心臓をつかまれているのです。手を替え品を替えて大豆を食わせないと…。

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